結論(先出し)

「契約不適合責任免責」という条件がついた中古住宅は、法律上、適法に取引されています。個人が売主の場合は民法上の任意規定として、双方の合意があれば全部免責も可能です。違法な条件ではありません。

一方で、この言葉の意味を十分理解しないまま契約に臨む買主が少なくないことは、不動産会社自身のコラムでも指摘されています。実際に「申し込み直後に『契約不適合責任は免責』と言われ、聞き慣れない言葉だったのでその場では質問できなかった」という購入希望者の相談事例も見つかります。合法であることと、買主が納得して契約できることは、別の問題です。

この記事では、「契約不適合責任免責」をうたう物件を検討する際に、買主として契約前に確認しておきたい事項を、法的な根拠とあわせてチェックリストの形で整理します。

まず知っておきたい仕組み

契約不適合責任とは、引き渡された不動産が契約内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任です。免責特約は、この責任を契約書の特約によって制限・免除するものですが、免責にできる範囲は、売主が個人か、宅建業者か、それ以外の法人かによって法律上の上限が異なります。

売主の属性

適用される主な法律

免責特約の可否

個人(一般の売主)

民法のみ

任意規定のため、双方合意があれば全部免責・期間短縮(引き渡し後3か月など)も可能

宅建業者(不動産会社が売主)

民法+宅地建物取引業法

宅建業法第40条により、引き渡し後2年を超える時期までは免責にできない

宅建業者以外の法人(買主が個人)

民法+消費者契約法

消費者契約法第8条により、責任の全部を免除する特約は無効。引き渡し直後からの免責や極端に短い通知期間も無効になりうる

新築住宅は住宅品質確保法により10年間の保証が義務付けられており、免責の話は主に中古住宅が対象です。まずは売主の属性を確認することが、最初のチェックポイントになります。

実際に見つかる買主の疑問・不安の声

免責特約について、買主側はどう感じているのでしょうか。中古住宅の実務に関わる不動産会社自身が、次のように指摘しています。

いわき市の不動産会社のコラムでは、「契約不適合責任や免責という言葉を目にしたことがある方は多いが、その意味や注意点をしっかり理解して購入に臨む方は決して多くない」と述べられています。

実際に、契約直前になって免責の事実を知り、不安を覚えたという相談事例もあります。

ある購入希望者は、物件の購入申し込みを行った直後に、担当者から「建物についての契約不適合責任は免責」と告げられました。聞き慣れない用語だったためその場では質問できず、帰宅後に自分で調べて、引き渡し後に問題が見つかっても責任を負ってもらえない内容だと知り、驚いたと述べています。この方は、契約を進めてよいものか不安になり、第三者機関に相談しています。

インターネットの質問サイトにも、免責特約そのものへの戸惑いを示す投稿が見られます。

ある質問への回答では、「9割方、免責されています。免責されているほうが一般的だとすら言えると思います」と、免責が例外的な取り扱いではないことが説明されています。

別の質問への回答では、「インスペクション(建物調査)を入れようとしただけで、もうそいつには売らないと言った人もいます」という、事前調査を申し出ただけで売主側の態度が硬化したという趣旨の体験が語られています。

これらの投稿は個人の体験談であり、統計調査ではありません。ただし、「免責の意味を知らないまま契約が進みかけた」「調べようとしただけで警戒された」という経験が実際に語られていることは、買主が契約前に何を確認すればよいか分からず不安を感じやすい、という実情を映していると考えられます。

なぜ「免責」はこれほど広く使われているのか

免責特約がここまで一般的になっている背景には、売主側の事情だけでなく、仲介業者側の実務上の事情も関係していると考えられます。買主として、この構造を知っておくことには意味があります。

個人が不動産を売却する場合、「契約不適合責任」という言葉を、媒介契約の相談の場で仲介業者から初めて聞く売主が大半です。売却を考え始めた時点で、この制度についてあらかじめ体系的な知識を持っている売主は多くありません。つまり、免責にするかどうかの判断は、実質的に仲介業者の説明の仕方に大きく左右されます。

仲介業者にとって、免責特約を勧めることには実務上のメリットがあります。「免責にすれば引き渡し後の心配がなくなります」という説明は、売主に安心感を与え、媒介契約を得やすくします。また、免責にしておけば、引き渡し後のクレーム対応や、調査不足を指摘されるリスクも減らせます。これは業界に広く存在するインセンティブ構造であり、特定の業者だけの問題ではありません。

一方で、免責には「成約までの時間がかかりやすい」「価格が下がりやすい」といった、売主にとって不利な面もあります。免責を勧める際に、こうした不利な面まで含めて対等に説明されているかどうかは、業者の姿勢によって差があります。有利な面だけを強調し、不利な面の説明が十分でないまま免責が選ばれているケースがあり得ることは、否定できません。

買主の立場からは、この点を知っておくことが役立ちます。「免責」という表示は、必ずしも「この物件に重大な問題がある」ことを意味するのではなく、「業界で一般的に勧められる進め方の結果」であることが多い、ということです。免責の有無だけで物件を判断するのではなく、④で紹介するチェックポイントを一つずつ確認することが重要になります。

契約前に確認する7つのチェックポイント

免責特約そのものは違法ではありません。だからこそ、買主の側で「何を、どこまで確認したか」が、後悔しない購入につながります。以下は、契約前に確認しておきたい代表的な項目です。

確認事項

具体的に見るポイント

免責の範囲

「一切の契約不適合責任を負わない」という全部免責なのか、「給排水管などの設備のみ免責」という一部免責なのかを、契約書の条文で確認する。

免責の期間

引き渡し後すぐに免責となるのか、一定期間(例:3か月・1年)は責任を負う内容なのかを確認する。

売主の属性

個人・宅建業者・宅建業者以外の法人のいずれかによって、免責にできる範囲が法律上変わる。重要事項説明で売主の属性を確認する。

物件状況報告書・付帯設備表

雨漏り・シロアリ・給排水管・給湯設備などの記載欄が空欄になっていないか、記載内容が具体的かを確認する。

価格と免責のバランス

周辺相場よりかなり安い物件で、免責の範囲が広い場合は、価格差の理由を仲介業者に確認する。

インスペクションの可否

売主・仲介業者にホームインスペクション(建物状況調査)の実施を依頼できるか確認する。費用を買主が負担する前提でもなお拒まれる場合は、その理由を確認する(詳しくは⑤)。

既存住宅売買瑕疵保険

保険への加入や、加入している検査済み物件かどうかを確認する。加入できれば、免責特約があっても保険で補修費用をカバーできる場合がある。

インスペクション費用を買主が負担するという選択肢

ホームインスペクション(建物状況調査)の費用相場は、木造の中古一戸建てで、目視による基本検査の場合、5万円〜10万円程度です。床下や屋根裏まで含めた詳細な調査を依頼する場合は、これに数万円が加算されるのが一般的です。延床面積や築年数によっても変動するため、依頼する会社に事前見積りを取ることをお勧めします。

費用を誰が負担するかについて、法律上の決まりはありません。依頼した側が負担するのが一般的とされていますが、売主・買主の合意によって決められるため、買主が全額を負担するケースもあります。免責特約がついた物件で、売主や仲介業者がインスペクションに消極的な場合、買主が費用を全額負担する条件で実施を打診するというのは、選択肢の一つとして妥当だと考えます。

この方法の意味は、コストという最も分かりやすい断る理由を、買主の側であらかじめ取り除いてしまう点にあります。費用を買主が全額負担すると申し出てもなお実施を拒まれた場合、それがスケジュール上の理由(引き渡し期限が迫っている、売主がまだ居住中で立ち会いの調整が難しい等)によるものなのか、それとも理由が明確に示されないものなのかを見極める必要があります。前者であれば、時期の調整で解決できることもありますが、後者であれば、慎重に検討すべき状況だと考えられます。

なぜ、費用を買主が負担してもなお拒まれることがあるのか。ここは率直にお伝えします。免責特約は「売主が知らなかった不具合」について責任を制限する仕組みです。しかし、インスペクションによって不具合が見つかれば、その時点で売主・仲介業者はその不具合の存在を「知った」ことになります。民法第572条は、知りながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れないと定めています。つまりインスペクションの実施は、結果として免責特約の実効性を弱める可能性があります。費用の負担を買主が引き受けると申し出てもなお強く拒まれる場合、この点が背景にある可能性は否定できません。

買主として妥当だと考える進め方は、費用を買主が負担する前提でインスペクションの実施を打診し、合理的な理由なく拒まれた場合は、それを購入を見送る材料の一つとして明確に位置づけておくことです。

免責特約があっても、売主の責任が残るケース

●        悪意の不告知(民法第572条):売主が不具合を知っていながら買主に告げなかった場合、免責特約があっても責任を免れることはできません。

●        消費者契約法第8条:売主が宅建業者以外の事業者(法人)で買主が個人の場合、契約不適合責任を全部免除する特約は無効です。

●        宅地建物取引業法第40条:売主が宅建業者の場合、引き渡し後2年を超える時期までは免責にできません。

●        説明義務違反:契約不適合責任そのものは免責されていても、物件状況報告書等に実態と異なる説明をしていた場合は、別途、説明義務違反(不法行為責任)を問われる可能性があります。

これらはあくまで「免責特約があっても効かない場合」の整理であり、実際に責任を追及できるかどうかは、証拠の有無を含めて個別の事情によります。

出典一覧

●        民法第572条(担保の責任を負わない旨の特約)

●        消費者契約法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)

●        宅地建物取引業法第40条(担保責任についての特約の制限)

●        イエステーションくらしあ「中古住宅売買時の『契約不適合責任』の免責とは?」PART1・PART2

●        以和貴総業株式会社「契約不適合責任の免責の場合は何に注意する?中古住宅購入前に知っておきたいポイント」

●        ネクスト・アイズ「中古の住宅購入で言われた契約不適合責任の免責に不安」

●        アートランド「中古住宅の契約不適合責任とは?買主が損しないためのポイントもご紹介します!」

●        そこに住むならbyスムナラ「契約不適合責任の免責とは?」

●        デイライト法律事務所「契約不適合責任の免責とは?免責物件のデメリットや注意点」

●        Yahoo!知恵袋「気になった物件に契約不適合責任免責とあり…」ほか関連質問

●        さくら事務所「ホームインスペクションの費用相場を公開!」

●        イシヤマ建築「ホームインスペクションの費用相場は?新築・中古・戸建て別の料金比較と注意点」

●        不動産売却査定のイエイ「売却前に必見!ホームインスペクションの費用相場と内訳を徹底解説」

最後に

「契約不適合責任免責」という言葉だけを見ると、不安に感じるのは自然なことです。実際、この言葉の意味を十分理解しないまま契約に臨んでしまう方が少なくないことは、複数の不動産会社自身が指摘している通りです。

免責特約は、中古住宅という性質上、経年劣化のリスクを売主・買主のどちらがどこまで負担するかを、価格に反映させながら調整するための、法律で認められた手段です。違法な仕組みではありませんが、買主が内容を理解し、納得したうえで契約することが前提になります。

私どもは、免責の有無にかかわらず、把握している物件の状態はできる限り具体的にお伝えし、インスペクションのご希望があれば前向きに調整することを心がけています。免責特約の意味や範囲について分からないことがあれば、契約前にどうぞ遠慮なくご質問ください。

なお、本記事は一般的な情報整理を目的としたものであり、個別の契約内容の有効性や法的な判断については、弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。