結論

離婚で家を出ることになっても、住宅ローンの支払いを、自分の判断で止めてはいけません。

止めた先に待っているのは、競売です。

競売の落札額は、市場価格の5割から7割。

数百万円、時に一千万円を超える損が出ます。

払えないなら、止める前に、銀行に相談する。

それだけで、任意売却という別の道が開きます。

この記事は、その「止めた先で何が起きるか」を、順を追って書きます。

私は競売で物件を仕入れてきた側の経験が、10年ほどあります。

買う側から見てきたからこそ、売る側が何を失うかを、具体的に書けます。

まず、どこに連絡するか

支払いが厳しいと分かった時点で、連絡する先は、借入をしている金融機関です。

窓口は、支店の融資係、またはローンセンターです。

「返済相談」と伝えれば、担当につながります。

ネット銀行なら、専用の返済相談窓口が用意されています。

大事なのは、滞納する前に連絡することです。

一度でも延滞すると、話の入口が「相談」から「督促」に変わります。

まだ払えているうちに動くほうが、条件の交渉余地が残ります。

ローンを止めると、何が起きるか──時系列

支払いを止めてから競売までは、おおむね次の順で進みます。

期間は金融機関により差がありますが、目安として書きます。

滞納1〜2ヶ月:督促

電話とハガキで、督促が来ます。

この段階なら、まだ引き返せます。

滞納3〜6ヶ月:期限の利益の喪失

ここが、最初の分かれ目です。

3ヶ月から6ヶ月ほど滞納すると、「期限の利益」を失います。

期限の利益とは、借金を分割で払える権利のことです。

これを失うと、残りの全額を、一括で払えと請求されます(民法137条)。

自宅に「期限の利益喪失通知書」が届きます。

数千万円を、一度に払えと書かれた紙です。

払える人は、まずいません。

喪失後:保証会社が代わりに払う(代位弁済)

一括で払えないと、保証会社が、あなたに代わって銀行に全額を払います。

これを代位弁済といいます。

このとき、債権者が銀行から保証会社に移ります。

以後、請求してくるのは保証会社です。

そして保証会社は、回収のために競売を申し立てます。

申立て後:競売開始決定

裁判所から「競売開始決定」の通知が届きます。

これで、あなたの家は、裁判所の手続きに乗りました。

裁判所の執行官と不動産鑑定士が、家に調査に来ます。

室内を見て、写真を撮り、評価書を作ります。

近隣にも、競売にかかったことが伝わり始めます。

開始決定後、おおむね半年〜1年:入札・落札・退去

評価をもとに、裁判所が「売却基準価額」を決めます。

入札期間(1ヶ月程度)を経て、一番高い額を入れた人が落札します。

落札されると、家はその人のものです。

あなたは、退去しなければなりません。

応じなければ、裁判所が強制執行で、荷物を運び出します。

競売の価格は、なぜ安いのか

ここが、この記事の核心です。

競売の「売却基準価額」は、市場価格の7割程度に設定されます。

さらに、その8割の額から入札できる仕組みです。

つまり最低ラインは、市場価格の5割から6割まで下がります。

実際の落札額も、市場価格の5割から7割に収まることが多い。

これは、私が買う側で見てきた実感とも一致します。

なぜここまで安いか。買う側の理由は、はっきりしています。

●        落札まで、室内を内覧できない。書類と写真だけで判断する。

●        雨漏りやシロアリが後で見つかっても、保証がない。全部、落札者の負担。

●        前の住人が居座れば、明け渡しの手間と費用がかかる。

●        残された家財(残置物)の処理も、落札者がやる。

このリスクを全部引き受ける代わりに、買う側は安く入れます。

その「安さ」は、そっくりそのまま、売る側の損になります。

任意売却なら、どう違うか

競売を避ける道が、任意売却です。

任意売却とは、ローンが残ったままの家を、金融機関の同意を得て、一般の市場で売る方法です。

滞納していることが前提になりますが、競売の前なら間に合います。

普通の売却と同じように、写真を撮り、広告を出し、内覧してもらって売ります。

だから、競売より高く売れます。

売却額は、市場価格の8割から9割が目安です。

具体例で、損の大きさを見る

市場価格3,000万円の家で、比べます。

●        任意売却:3,000万円 × 8〜9割 = 2,400万〜2,700万円

●        競売  :3,000万円 × 5〜7割 = 1,500万〜2,100万円

差は、300万円から1,200万円

この差額は、そのまま、あなたに残る借金の差になります。

家を手放しても、ローンは残ります。

どちらで売ったかで、売った後に背負う額が、これだけ変わります。

任意売却には、ほかにも実務上の利点があります。

●        引っ越し費用(10〜30万円が目安)を、売却代金から出してもらえる場合がある。

●        売却の時期を、ある程度こちらの都合で調整できる。

●        競売のように、ネットや新聞に「競売物件」として公開されない。

離婚では、特に危ない

離婚では、この滞納が起きやすい形が、いくつもあります。

●        家を出た側が、「もう住んでいないから」と払わなくなる。

●        住み続ける側が、一人では払いきれなくなる。

●        どちらが払うかを決めないまま、宙に浮く。

そして、忘れてはいけないのが、連帯債務者・連帯保証人です。

主債務者が払わなければ、請求は、この人たちに及びます。

離婚して家を出ても、保証人からは自動では外れません。

元配偶者の滞納が、自分の信用を傷つけることになります。

競売になれば、信用情報にも記録が残ります。

その後、数年は、新たなローンを組みにくくなります。

まとめ

離婚で頭がいっぱいのとき、ローンの支払いは、後回しにされがちです。

けれど、勝手に止めるのは、いちばん急ぐ判断を誤ることです。

止めれば、競売。市場価格の5割から7割。

相談すれば、任意売却。市場価格の8割から9割。

この差が、あなたの、これからの生活を左右します。

払えない見込みが立ったら、まず銀行に相談する。

そして、競売を避ける段取りを、早く始める。

早ければ早いほど、選べる道は多く残ります。

住宅流通合同会社は、西白井から、金融機関との段取りも含めて、順番を整理します。

競売を買う側で見てきた経験から、売る側が損をしない順序を、お伝えできます。

返済・債務の判断は金融機関と、法務は提携の弁護士・司法書士にご確認ください。

まずは、止める前に、ご相談ください。

 

出典:民法137条(期限の利益の喪失)、民事執行法(不動産競売)。競売落札額・任意売却相場は不動産各社の公表データによる。

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