結論

売却額より、ローン残高のほうが多い。

この状態を、オーバーローンといいます。

普通に売り出しても、抵当権が外せないため、売れません。

けれど、道はあります。任意売却です。

任意売却とは、銀行(債権者)の同意を得て、ローンが残ったままの家を、一般市場で売る方法です。

競売より高く売れ、残った借金も、無理のない形で返していけます。

ただし、これには期限があります。

競売の開札期日の前日を過ぎると、この道は閉じます。

だから、早く動くほど有利です。

この記事は、その全手順を、売主の動きと、私たち業者の動きを並べて書きます。

どの段階で、誰が、何をするのか。順番で示します。

大前提:任意売却は「滞納」が入口になる

まず、押さえておくべきことがあります。

任意売却は、住宅ローンを滞納していないと、始められません。

滞納していないうちは、銀行は保証会社から全額回収できるため、任意売却に応じる理由がないからです。

つまり、まだ普通に払えているなら、それは任意売却ではなく、通常の売却です。

「残債が払えそうもない」という相談は、多くの場合、すでに滞納が始まっているか、始まる寸前です。

その段階から、任意売却の時計が動き出します。

全体の時間軸──滞納から競売まで、約1年半

先に、全体の流れを時系列で示します。

期間は金融機関により差がありますが、標準的な目安です。

●     滞納1〜3ヶ月:督促状・催告書が届く

●     滞納3〜6ヶ月:期限の利益を喪失、代位弁済

●     滞納6〜8ヶ月:競売開始決定通知、差押え

●     滞納8〜10ヶ月:裁判所の現況調査(執行官が来る)

●     滞納10〜12ヶ月:期間入札通知(最終デッドライン)

●     開札期日:落札者決定。ここを過ぎたら、任意売却は終了

任意売却が可能なのは、この最後の「開札期日の前日」まで。

けれど、買主を見つけ、契約し、決済まで終える必要があるため、実際にはもっと手前が勝負です。

以下、段階ごとに、売主の動きと業者の動きを並べます。

第1段階:滞納〜督促(滞納1〜3ヶ月)

売主の動き

督促状や催告書が届き始めます。

この時点で、多くの人は「どうしよう」と固まります。

ここで動けるかどうかが、後の結果を大きく変えます。

業者(私)の動き

相談を受けたら、まず物件の査定です。

「いくらで売れそうか(市場価格)」を出し、ローン残高と突き合わせます。

この差が、残債の見込み額になります。

同時に、確認するのはローンの中身です。

主債務者は誰か。連帯債務者・連帯保証人は誰か。

これは登記簿では分かりません。金銭消費貸借契約書で確認します。

ここを最初に押さえないと、後で契約が白紙に戻ることがあります。

この段階での相談が、一番いい。

販売期間を長く取れるので、高く売れます。相手もまだ銀行で、話がシンプルです。

第2段階:期限の利益喪失・代位弁済(滞納3〜6ヶ月)

売主の動き

「期限の利益喪失通知」が届きます。

残り全額を一括で払え、という通知です(民法137条)。

払える人はいません。ここが、心理的に一番こたえる時期です。

続いて「代位弁済通知」が届きます。

保証会社が、あなたに代わって銀行に全額を払った、という知らせです。

これで、債権者が銀行から保証会社(のちにサービサー)へ移ります。

業者(私)の動き

ここが、任意売却の交渉が本格化する段階です。

債権者が誰になったかを、正確に把握します。

●     代位弁済の前なら、交渉相手は銀行。

●     代位弁済の後なら、保証会社、またはサービサー。

相手が変わると、交渉の性質も変わります。

銀行はまだ穏やか。サービサーは回収のプロで、より数字にシビアです。

だから、代位弁済の前に売却の道筋を作れると、売主に有利なのです。

私の仕事は、ここで債権者から「任意売却の同意」を取り付けること。

「競売より、任意売却のほうが回収額が多い」という理屈を、市場データと販売計画で示します。

感情ではなく、数字で説得する。ここが業者の腕の見せどころです。

第3段階:売却活動(代位弁済後〜競売開始前後)

売主の動き

媒介契約を結び、売り出しが始まります。

内覧への協力が要ります。

また、事情を近所に知られたくない場合は、その旨を伝えてください。詳細を伏せた売り方もできます。

業者(私)の動き

広告・ネット・レインズで、買主を探します。

普通の売却と同じように、写真を撮り、売り出します。

ここが競売と決定的に違う点で、だから競売より高く売れます。

価格設定が肝です。

高すぎれば売れず、時間切れで競売になる。

安すぎれば、残債が無駄に膨らむ。

市場価格の8〜9割を狙いつつ、期限から逆算して、売れる価格に置く。

このさじ加減が、経験の差が出るところです。

並行して、債権者との配分の調整をします。

売却代金を、どの債権者に、いくら配分するか。

抵当権者が複数いれば、全員の同意が要ります。一人でも欠ければ、売却は成立しません。

第4段階:契約・決済・競売取下げ(開札期日の前まで)

売主の動き

買主が決まれば、売買契約を結びます。

そして決済(代金の受け取りと引き渡し)。

このとき、引っ越し費用を売却代金から出してもらえる場合があります(10〜30万円が目安)。

競売にはない、任意売却の利点です。

業者(私)の動き

ここでタイムリミットを、正確に管理します。

任意売却の完了とは、契約でも、買主決定でもありません。

代金の受け取りと引き渡し、そして債権者の抹消書類が揃って、初めて完了です。

債権者の決済稟議に、1〜2週間かかります。

だから、開札期日ぎりぎりでは間に合わない。

プロは、カレンダー上の期限より1ヶ月早く成約させます。

すべてが整えば、債権者が競売を取り下げます。

これで、競売を回避できました。

第5段階:残った借金(残債)の返済

売主の動き

売却しても、ローンを返しきれなければ、差額が残債として残ります。

これは借金として残りますが、一括ではなく、分割で返せます。

生活状況表(収支の書類)を出し、無理のない額を決めます。

月5,000円から30,000円ほどが、一般的な水準です。

業者(私)の動き・専門家への橋渡し

残債の返済交渉、そして債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)は、弁護士・司法書士の領域です。

私の役割は、ここまでの売却を、残債処理まで見据えて設計しておくこと。

そして、適切なタイミングで、提携の専門家につなぐこと。

サービサーが相手なら、まとまった額の一括和解で、残債が大きく圧縮されることもあります。

この交渉は、専門家と連携して進めます。

業者選びで、結果が変わる

最後に、これは売主に知っておいてほしいことです。

任意売却は、通常の売却と、まったく別の仕事です。

●     債権者との交渉が要る。

●     期限との戦いがある。

●     複数の抵当権者、連帯保証人の同意が要る。

●     残債処理まで見据えた設計が要る。

普通の仲介しかやったことのない業者では、途中で止まります。

だから、任意売却の経験がある会社を選ぶことが、そのまま結果に直結します。

私は、競売を買う側で見てきた経験が10年ほどあります。

競売に流れたら家がどう買い叩かれるかを、買い手側から知っている。

だからこそ、そうならない売り方を、逆算で組めます。

まとめ

家より借金が多くても、売れます。

ただし、順番と、期限と、相手を、間違えないことです。

●     入口は「滞納」。相談は、早いほど有利。

●     相手は、代位弁済の前なら銀行、後ならサービサー。

●     期限は、競売の開札期日の前日。実際はその1ヶ月前が勝負。

●     残った借金は、分割で返せる。専門家と組んで、圧縮も狙える。

一番よくないのは、督促に固まって、時間を溶かすことです。

動ける時間が長いほど、選べる道は多い。

住宅流通合同会社は、西白井から、この全段階を設計します。

売却の入口から、残債処理の橋渡しまで。

返済・債務整理・法務は、提携の弁護士・司法書士の領域として、適切につなぎます。

まずは、督促が来たその時に、ご相談ください。

 

出典:民法137条(期限の利益の喪失)、民事執行法(不動産競売)。任意売却の期限・流れ・残債返済水準は、不動産各社および任意売却支援団体の公表データによる。返済交渉・債務整理・時効・連帯保証の各論は、弁護士・司法書士への確認を前提とした一般的解説です。

住宅流通合同会社

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