ペアローンという「二重の足かせ」――離婚で一番厄介な組み方

結論から

離婚の話し合いで、住宅ローンの組み方によって難易度は大きく変わります。中でもペアローンは、もっとも整理が難しい組み方です。

理由は一つです。ペアローンは、契約が二重になっています。夫婦それぞれが主債務者になり、同時にお互いの連帯保証人にもなっています。所有権も、借入額に応じた共有名義です。

離婚は、夫婦の関係を解消します。しかし、金融機関との契約は解消しません。婚姻関係が終わっても、契約上の義務は、そのまま残ります。

「自分の分だけ整理すればいい」は通用しません。ペアローンを組んだ家は、離婚の話し合いの一番初めに、契約内容を確認してください。これが、この記事の結論です。

なぜペアローンは「二重」なのか。組み方の全体マップ

夫婦で住宅ローンを組む方法は、大きく4つに分かれます。組み方によって、離婚時の整理の難易度が変わります。

組み方

契約の本数

所有権

連帯保証・連帯債務

住宅ローン控除

団信

単独ローン

1本

単独名義

なし

契約者のみ

契約者のみ

連帯保証型(収入合算)

1本

主債務者の単独名義

収入合算者が連帯保証人

主債務者のみ

主債務者のみ(連帯保証人は原則加入不可)

連帯債務型(収入合算)

1本

共有名義

双方が連帯債務者

双方が対象(要件あり)

主債務者のみが原則(商品により両方可)

ペアローン

2

借入額に応じた共有名義

双方が主債務者かつ、互いの連帯保証人

双方が対象(要件あり)

双方がそれぞれ加入

この中で、ペアローンだけが「契約が2本」という特徴を持ちます。夫が2,000万円、妻が1,500万円というように、それぞれが別のローン契約を結びます。そのうえで、お互いがもう一方の連帯保証人になります。

つまりペアローンは、「自分の借金」と「相手の借金の保証」という、二重の負担を背負う組み方です。相手が返済を止めても、あなたの契約は消えません。むしろ、相手の分まで請求される可能性があります。

これが、ペアローンが離婚時に「一番厄介」と言われる理由です。連帯債務型・連帯保証型も契約は残りますが、契約が1本である分、整理の選択肢はペアローンよりも見えやすくなります。

ケース別、整理の判定表

離婚時にペアローンをどう整理するかは、①家の資産状況(アンダーローンかオーバーローンか)と②今後の希望(売却か、どちらかが住み続けるか)の組み合わせで決まります。

資産状況

希望

対処法

アンダーローン

売却希望

家を売却し、売却代金で両方のローンを完済。残った利益を財産分与する。もっとも整理しやすい組み合わせ。

アンダーローン

一方が住み続ける

住み続ける側が住宅ローンを一本化(借り換え)。単独の収入での再審査が必要。出ていく側の持分を買い取る形になることが多い。

オーバーローン

売却希望

売却してもローンが残る。不足分を自己資金で補うか、金融機関と協議のうえ任意売却を検討する。

オーバーローン

一方が住み続ける

もっとも難易度が高い組み合わせ。一本化の審査が通りにくく、残った側の返済負担が重くなる。専門家への早期相談が必須。

現在の住宅の資産価値が住宅ローン残債を上回る状態を「アンダーローン」、下回る状態を「オーバーローン」といいます。

「一本化できない」ときの、例外的な選択肢

一本化(借り換えによる単独名義化)は、離婚時のペアローン整理でもっとも望ましい方法です。しかし、夫婦二人分の収入で組んだローンを一人分の収入で組み直すため、審査は簡単ではありません。特に、住み続ける側が専業主婦・主夫やパート勤務の場合、一本化が認められにくい傾向があります。

一本化が難しい場合の選択肢は、主に3つです。

・親族に連帯保証人になってもらう

・実家からの援助などで一部を繰り上げ返済し、借入額を圧縮する

・離婚前に正社員として就職し、一定期間の勤務実績を積んだうえで審査を受ける

いずれも時間がかかる方法です。だからこそ、「離婚の話し合いの一番初めに、契約内容を確認する」ことが重要になります。

もう一つ、見落とされやすい注意点があります。財産分与には期限があります。民法768条2項但書により、財産分与を請求できるのは、離婚が成立してから2年以内です。これは時効ではなく除斥期間のため、中断や延長ができません。2年を過ぎると、原則として請求権そのものが消滅します。ペアローンの整理を先延ばしにしているうちに、財産分与の期限が近づいている、という事態は避けてください。

家を賃貸に出して家賃収入で返済に充てる方法を検討される方もいますが、多くの住宅ローンは「契約者本人が居住すること」を融資の条件としています。金融機関に無断で賃貸に出すことは契約違反にあたり、一括返済を求められるリスクがあります。検討する場合は、事前に金融機関へ確認してください。

確認すべき資料と、相談する窓口

契約内容の棚卸しには、次の資料が必要です。

・金銭消費貸借契約書(誰が主債務者か、誰が連帯保証人かの確認)

・抵当権設定契約書、登記事項証明書(法務局で取得可能。共有持分の割合を確認)

・団体信用生命保険の加入状況

・住宅ローンの残高証明書

これらをそろえたうえで、次の窓口に相談することをおすすめします。

・契約先の金融機関(一本化・借り換えの可否、連帯保証人の変更可否の確認)

・弁護士(財産分与の進め方、公正証書の作成)

・当社のような不動産会社(売却・現況価格の把握、任意売却の相談)

契約内容は金融機関ごと、商品ごとに異なります。個別の金融機関対応は、契約先金融機関へのご確認をお願いします。当社は、契約内容の棚卸しから、売却・借り換えの検討まで、住宅流通の立場から対応いたします。

整理の流れ(一般化した例)

共働きの40代夫婦が、ペアローンで一戸建てを購入したとします。購入時は夫婦の年収がほぼ同水準でした。数年後、育休を経て妻が時短勤務に切り替わり、世帯の収入バランスは購入時と大きく変わっていました。

離婚を考え始めたとき、夫婦は「家に住み続けたい」という妻の希望と、「ローンを整理したい」という夫の希望が、かみ合わないまま話し合いを始めてしまいました。ローンが2本、連帯保証も二重という契約構造を、どちらも正確に把握していなかったためです。

契約書を取り寄せ、金融機関に一本化の可否を確認したところ、妻の現在の収入だけでは審査が通らないことが分かりました。そこで、繰り上げ返済によって借入額を圧縮する方法と、正社員への転換を目指しながら一定期間後に再審査を受ける方法を、金融機関とあわせて検討することになりました。

これは、実際の相談内容を一般化して構成した例です。個々の状況によって、選べる選択肢は変わります。共通しているのは、契約内容を早い段階で正確に把握していれば、選択肢はもっと早く見えていた、という点です。

会社の共同経営者が退任しても、会社の借入に対する連帯保証を自動的に外れられるわけではないのと、構造は似ています(比喩的な解釈であり、学術的な定説ではありません)。関係が終わっても、契約上の義務は、金融機関の同意なしには消えません。

契約は、関係より長く残る

離婚は、夫婦の関係を終わらせます。しかし、金融機関との契約は、当事者の合意だけでは終わりません。この事実を早く知っている人ほど、選べる選択肢は多く残ります。

ペアローンを組んだ家だからこそ、契約内容の確認を、話し合いの一番最初に置いてください。整理の道筋は、そこから見えてきます。

出典一覧

・一般社団法人 全国任意売却協会「ペアローンは離婚できないと言われる理由とは?」

・アトム法律事務所弁護士法人「ペアローンは離婚できない?不安な方へ解消方法や売却の手順を解説」

・一般社団法人 住宅ローン滞納問題相談室「ペアローンを組んだ自宅は離婚後どうなる?」

・弁護士法人HAL「離婚時のペアローン問題を解消する3つの方法」

・ルーセント法律事務所「ペアローンのメリットと離婚時の落とし穴」

・三井住友銀行「ペアローンとは?収入合算との違いやメリットデメリットを5分で解説」

・民法768条2項(財産分与の請求期間)

・各弁護士事務所コラムに基づく、財産分与の時効・除斥期間に関する一般的な整理

 

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