自宅を手放さずに、老後資金をつくる方法をご存知でしょうか。「リースバック」と「リバースモーゲージ」という2つの選択肢が、少しずつ身近になってきています。この記事では、それぞれの仕組みの違いをかみ砕いて説明したうえで、実際に検討を始めるとしたら、誰に・どんな順番で相談すればよいのかという具体的な進め方まで、できるだけ詳しくご案内します。制度の説明だけでなく、「実際に動くとしたらどうするか」がわかる内容を目指しました。

結論(先出し)

この記事の要点

① リースバックは自宅を売却し、その後は買主に家賃を払って住み続ける仕組み。まとまった資金が一括で入るが、所有権は買主に移る。

② リバースモーゲージは自宅を担保にお金を借りる仕組み。毎月は利息だけを払い、元金は亡くなった後に自宅を売却するなどして返済する。所有権は移らず、そのまま住み続けられる。

③ 住宅金融支援機構が扱う「リ・バース60」は、満60歳以上向けのリバースモーゲージ型住宅ローン。融資限度額は自宅の担保評価額の50〜60%程度で、資金の使いみちは住宅関連(リフォーム・住み替え・建て替え・住宅ローンの借り換え等)に限られ、生活費には使えない。

④ 千葉県は「リ・バース60」の利用地域として全国上位の常連で、直近の四半期(2025年10〜12月)では神奈川県・東京都に次ぐ全国3位(9.0%)。その前の四半期(2025年7〜9月)では神奈川県に次ぐ全国2位(7.0%)だった時期もある。

⑤ どちらも「住宅金融支援機構に直接申し込む」ことはできず、提携する民間の金融機関やリースバック取扱業者を通じて手続を進める。

⑥ どちらが向いているかは、住み続けたいか・まとまった資金が必要か・毎月の支払いに無理がないかによって変わる。制度の名前を覚えるより、自分の状況に合わせて「進め方」を知っておくことが大切。

以下、それぞれの制度の中身と、実際に検討を始める際の具体的な進め方をご紹介します。最終的な契約内容の判断は、必ず取扱金融機関・リースバック業者・税理士にご確認ください。

まず全体像 ―― 2つの方法の違い

「自宅を現金化する」といっても、仕組みはまったく異なります。大きな違いは、「所有権が誰のものになるか」と「住み続けられるかどうか」です。

 

リースバック

リバースモーゲージ(リ・バース60)

所有権

契約と同時に買主へ移る

移らない(自分の名義のまま)

資金の受け取り方

売却代金として一括で受け取る

融資として受け取る(借入)

住み続けられるか

住める(買主と賃貸借契約を結ぶ)

住める(担保に入れるだけ)

毎月の支払い

家賃

利息のみ(元金は亡くなった後)

資金の使いみち

原則自由

住宅関連の資金に限定(生活費不可)

対象となる人

年齢の制限は基本的にない

満60歳以上(金融機関により50歳以上も可)

リースバックは「売却+賃貸」、リバースモーゲージは「担保に入れた借入」です。名前は似た文脈で語られますが、法律上の扱いはまったく別物であることを、まず押さえておいてください。

千葉県での利用状況

住宅金融支援機構が四半期ごとに公表している「リ・バース60」の利用実績によると、千葉県は全国的に見て利用が多い地域の一つです。ただし、順位は四半期ごとに変動しています。

対象期間

1

2

3

2025年7〜9月

神奈川県(12.7%)

千葉県(7.0%)

愛知県(6.3%)

2025年10〜12月

神奈川県(15.4%)

東京都(11.0%)

千葉県(9.0%)

出典:住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等について」各四半期発表資料

「千葉県は全国2位」という数字は、2025年7〜9月期のものです。直近の2025年10〜12月期では3位でした。四半期によって順位は変わりますが、いずれの期間でも千葉県が全国トップクラスの利用地域であることに変わりはありません。利用理由としては「住宅が古い」が最も多く、次いで住宅ローンの借換え、シニア向け分譲マンションへの住み替えが続きます。

うちはどちらが向いている?

こんな方には

向いている可能性がある方法

理由

まとまった資金が今すぐ必要

リースバック

売却代金を一括で受け取れる。融資審査のような年収要件もない

月々の家賃負担はできれば避けたい

リバースモーゲージ

利息のみの支払いで済み、元金は亡くなった後に精算される

将来、子や孫にこの家を残したい

どちらも慎重に検討

リースバックは所有権が完全に移る。リバースモーゲージも自宅売却が前提になるため、いずれも「残す」ことは基本的に難しい

資金の使いみちが住宅関連(リフォーム・住み替え)

リ・バース60

住宅関連の資金使途に特化した制度で、比較的低い金利が期待できる

生活費や医療費に充てたい

リースバックまたは金融機関独自の一般型リバースモーゲージ

リ・バース60は生活資金への利用が認められていない点に注意

リ・バース60を検討する場合の進め方

「リバースモーゲージを使ってみたい」と思ったとき、住宅金融支援機構に直接申し込むことはできません。機構と提携している民間の金融機関(地方銀行・信用金庫・信用組合・モーゲージバンクなど)を通じて手続を進めます。実際の流れは、次のようなステップになります。

STEP 1 取扱金融機関を調べる

住宅金融支援機構の公式サイトに「取扱金融機関一覧」のページがあり、都道府県ごとに絞り込んで検索できます。地元の地方銀行や信用金庫が扱っていることが多いので、まずは普段お使いの金融機関が対象になっているかを確認するとよいでしょう。金利タイプ(変動金利・固定金利期間選択・全期間固定金利)や取扱条件は金融機関ごとに異なります。

STEP 2 事前相談・カウンセリングを受ける

多くの金融機関では、申込みの前に窓口での相談やカウンセリングを行います。このとき、資金の使いみち(リフォームか、住み替えか、借り換えか)や、希望する借入額のおおまかな考えを整理しておくと、話がスムーズに進みます。

STEP 3 自宅の担保評価を受ける

融資限度額は、自宅(建物と土地)の担保評価額の50〜60%程度(長期優良住宅の場合は55〜65%程度)が上限です。この担保評価は、金融機関や住宅金融支援機構所定の方法で行われ、私たちがお出しする実勢価格の査定とは算出方法が異なります。とはいえ、査定でおおまかな相場観をつかんでおくと、金融機関との相談の際に話が早くなります。

STEP 4 正式に申込み、審査を受ける

事前相談の内容をもとに、正式な申込みを行います。住宅金融支援機構の住宅融資保険の審査もあわせて行われるため、通常の住宅ローンと同様に一定の期間がかかります。

STEP 5 契約・抵当権設定登記を行う

審査が通ったら、金融機関との金銭消費貸借契約を締結し、自宅に抵当権を設定する登記を行います。この登記手続は司法書士が担当します。

STEP 6 資金を受け取り、利用を開始する

契約内容に沿って資金が実行されます。以後は毎月利息のみを支払い、元金は契約者が亡くなったときに、相続人による一括返済か、担保物件の売却によって精算されます。「ノンリコース型」を選んでいれば、売却代金で元金を返済しきれなかった場合でも、相続人が不足分を負担する必要はありません。

2025年1月からは全期間固定金利タイプも導入されています。全期間固定金利タイプは、金利変動のリスクを避けたい方に向いていますが、その場合はノンリコース型のみの取扱いとなる点も確認しておくとよいでしょう。

リースバックを検討する場合の進め方

リースバックは、リ・バース60のような公的な制度ではなく、不動産会社やリースバック専門業者との個別の取引です。そのため、「どの業者に相談するか」「条件をどう比較するか」が、結果を大きく左右します。

STEP 1 複数の業者に概算査定を依頼する

リースバックは事業者ごとに買取価格や家賃の設定基準が異なります。1社だけで即決せず、複数の業者に概算査定を依頼して比較することをお勧めします。地元の不動産事情に詳しい会社と、リースバック専門の全国業者とでは、査定の視点が異なる場合もあります。

STEP 2 売買条件を細かく確認する

査定額だけでなく、次のような条件を必ず確認してください。

●  買戻し特約の有無:将来、資金に余裕ができたときに自宅を買い戻せる条件が付いているか。

●  賃貸借契約の種類:普通借家契約か、期間の定めがある定期借家契約か。定期借家契約の場合、契約期間が終わると住み続けられない可能性がある。

●  家賃の改定条件:将来、家賃が値上がりする可能性があるか、その条件はどうなっているか。

●  売却価格の妥当性:一般的な売却相場と比べて、提示された査定額が著しく低くないか。

STEP 3 重要事項説明を受け、売買契約を締結する

宅地建物取引士による重要事項説明を受けたうえで、売買契約を締結します。この段階で、所有権が買主に移ることが正式に決まります。

STEP 4 賃貸借契約を締結する

売買契約とあわせて、買主との間で賃貸借契約を結びます。家賃の金額、契約期間、更新の可否など、今後の生活に直結する内容なので、契約書の内容を細部まで確認することが欠かせません。

STEP 5 引き渡し・住み続ける

売却代金を受け取り、以後は賃借人として同じ家に住み続けます。所有者としての固定資産税等の負担はなくなりますが、家賃の支払いが続きます。

リースバックは公的な統一基準がない分、業者による条件の差が大きい取引です。「早く現金化したい」という焦りから1社だけで即決するのではなく、複数社の条件を並べて比較することが、後悔しないための一番のポイントです。

見落としやすい注意点

●  リ・バース60は、生活費や医療費・介護費用には使えません。老後の生活資金そのものが目的の場合は、金融機関独自の一般型リバースモーゲージなど、別の商品を検討する必要があります。

●  リ・バース60は、契約者が亡くなった後の自宅の扱いについて、事前に配偶者や相続人と話し合っておくことが大切です。契約形態によっては、配偶者がそのまま住み続けられるかどうかが変わります。

●  リースバックで自宅を売却すると、譲渡所得税がかかる場合があります。マイホームを売ったときの3,000万円特別控除が使えるかどうかも含め、事前に税理士へ確認しておくと安心です。

●  リ・バース60は変動金利タイプが多く、将来の金利上昇によって毎月の利息負担が増える可能性があります。長期間の利用を考えている場合は、固定金利タイプも含めて比較することをお勧めします。

実家の相談をするとき、知っておくとスムーズなこと

ここからは、私たちが実際にこうしたご相談を受ける中で確認していることをお伝えします。リースバックやリバースモーゲージを検討している方は、事前にこの視点を持っておくと、金融機関や業者との相談がぐっとスムーズになります。

●  リースバックを検討する際、まず一般的な売却相場(実勢価格)を把握しておくと、リースバック業者から提示された査定額が妥当かどうかを判断しやすくなります。当社では、リースバックを前提にしない通常売却の査定額もあわせてお出しし、比較の材料にしていただいています。

●  リ・バース60の担保評価を受ける前に、自宅のおおまかな実勢価格を知っておくと、融資限度額の見当がつきやすくなります。金融機関の担保評価とは算出方法が異なりますが、目安として役立ちます。

●  「リースバックとリバースモーゲージ、どちらが自分に合うか迷っている」という段階でも、遠慮なくご相談ください。私たちは特定の金融機関やリースバック業者に所属していないからこそ、中立的な立場で複数の選択肢を比較するお手伝いができます。

融資の審査そのものや、契約条件の最終判断は、取扱金融機関・リースバック業者・税理士の領域です。当社は、自宅の実勢価格の把握と、複数の選択肢を比較検討するための情報整理という形でサポートしています。

相談先の目安

相談したいこと

相談先の例

リ・バース60の取扱状況・金利・融資条件

住宅金融支援機構の公式サイト「取扱金融機関一覧」/地元の地方銀行・信用金庫

リースバックの査定・売買条件の比較

複数のリースバック取扱業者、地元の不動産会社

譲渡所得税・3,000万円特別控除の適用可否

税理士

抵当権設定登記・売買契約に伴う登記

司法書士

自宅の実勢価格の把握・選択肢の比較相談

住宅流通合同会社(当社)

実例(架空のケーススタディ)

以下は、これまでのご相談で見られる典型的なパターンをもとに再構成した架空の事例です。特定の個人・案件を示すものではありません。

ケース:白井市内にお住まいの70代ご夫婦

築30年を超える戸建てにお住まいの70代のご夫婦から、「古い家の水回りをリフォームしたいが、まとまった資金がない」というご相談をいただきました。当初は自宅を売却してマンションに住み替えることも考えていましたが、「長年住んだ土地を離れたくない」というお気持ちが強く、リ・バース60によるリフォーム資金の調達を検討することになりました。まず当社で自宅の実勢価格の目安をお出しし、それをもとに地元の金融機関へ事前相談。担保評価を受けた結果、希望するリフォーム資金をまかなえる見込みが立ち、正式に申込みを進めることになりました。あわせて、契約者であるご主人が万一のことがあった場合、奥様がそのまま住み続けられる契約形態になっているかを、金融機関の担当者に確認することも忘れずに行いました。

このケースは複数の相談パターンを組み合わせた一般化された例です。実際にどの選択が適切かは、財産の内容や家族構成、資金計画によって異なるため、必ず専門家へご相談ください。

まとめ

●  リースバックは自宅を売却して家賃を払いながら住み続ける方法、リバースモーゲージは自宅を担保に借り入れる方法で、所有権の扱いが根本的に異なる。

●  リ・バース60は住宅関連の資金使途に限定されるが、千葉県は全国トップクラスの利用地域。

●  リ・バース60は提携金融機関を通じて、リースバックは複数業者への相談・比較を通じて進めるのが基本の流れ。

●  どちらも「早く決めること」より「複数の選択肢を比較すること」が、後悔しないための一番の近道。

急がない・急かさない、市場の全体像をご覧いただき、価格の根拠や価格設定の疑問に正直にお答えし納得できるお取引を目指す不動産会社は当社です。売上高にこだわらず、笑顔の取引が第一の不動産会社は当社です。

出典一覧

・住宅金融支援機構「【リ・バース60】」制度案内ページ

・住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等について」(2025年7〜9月分、2025年10〜12月分)

・住宅金融支援機構「【リ・バース60】取扱金融機関一覧」

・住宅金融支援機構「【リ・バース60】ご利用条件」

本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の金融・法律・税務上の助言ではありません。融資条件・売買条件の詳細、税務上の取扱いは、必ず取扱金融機関・リースバック業者・税理士へ個別にご確認ください。