結論(先出し)
契約不適合責任免責は、それ自体が心配すべき材料ではありません。中古住宅の売買では広く使われている一般的な取り扱いであり、免責がついているからといって、その物件に重大な問題があるわけではありません。実際に、免責特約の普及とトラブルの増減を示す公的な統計を調べてみましたが、「免責が広がってトラブルが増えた」ことを裏付けるデータは見当たりませんでした。
ただし、これは「何も確認しなくていい」という意味ではありません。取引の過程で確認すべき点を一つずつ押さえていけば、過度に恐れる必要はなく、それでも気になる場合は、購入前のインスペクションや、購入後の修繕費を見込んだ資金計画を検討すれば十分です。
① 免責は「特別なこと」ではない
中古住宅の個人間売買を専門に扱う不動産会社のサイトでは、「中古住宅売買ではほとんど免責が現状」と述べられています。免責特約は民法上の任意規定として認められた、適法な仕組みです。免責という表示は、その物件に何か特別な欠陥があることのサインではなく、中古住宅という性質上、経年劣化のリスクをどちらがどこまで負担するかを、価格に反映させながら調整するための、ごく一般的な取引条件だと理解しておくとよいでしょう。
② トラブルが増えているというデータは見当たらない
免責特約が広がった前後で、実際にトラブルが増えているのかどうか、私どもは公的統計で確認を試みました。中古住宅の売買に関する相談を集計している「住まいるダイヤル」の年次統計では、既存住宅の相談件数は、民法改正前の2019年度が1,346件、改正直後の2020年度が1,258件で、大きな増加は見られませんでした。その後2021年度以降は増加基調にありますが、これはコロナ禍からの回復など、他の要因も影響していると考えられます。
この統計は相談件数であり、実際の紛争件数ではなく、契約不適合責任に起因するものだけを区別してもいません。断定的な結論を出せる精度のデータではありませんが、少なくとも「免責の広がりに比例してトラブルが急増している」ことを示す材料は見当たりませんでした。詳しくは「契約不適合責任のトラブルは増えているのか」の記事をご覧ください。
③ とはいえ、確認はゼロにしない
免責そのものは心配の材料ではありませんが、免責の意味を十分理解しないまま契約に臨んでしまう方が少なくないことは、不動産会社自身のコラムでも指摘されています。実際に「申し込み直後に免責を告げられ、聞き慣れない言葉だったのでその場では質問できなかった」という購入希望者の相談事例もあります。不安の正体は、免責という制度そのものよりも、「よく分からないまま契約が進むこと」にあるケースが多いようです。
契約前に、次の点を確認しておけば、過度に恐れる必要はありません。
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確認事項 |
見るポイント |
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免責の範囲・期間 |
全部免責か一部免責か、いつから免責になるかを契約書で確認 |
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売主の属性 |
個人・宅建業者・その他法人で、法律上の免責可能範囲が変わる |
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物件状況報告書 |
雨漏り・シロアリ・給排水管等の記載が空欄でないか確認 |
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価格とのバランス |
周辺相場よりかなり安い場合は、その理由を確認 |
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インスペクションの可否 |
買主負担の前提でも実施を拒まれる場合は理由を確認 |
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既存住宅売買瑕疵保険 |
加入の有無、加入できれば免責があっても一定の補償あり |
④ それでも気になるなら
● 購入前のインスペクション:木造中古一戸建ての基本検査で5万円〜10万円程度が相場です。売主・仲介業者が消極的な場合は、費用を買主が負担する前提で実施を打診するという方法もあります。
● 修繕費を見込んだ資金計画:中古住宅は、築年数に応じて屋根・外壁・給湯器・水回りなどの修繕費が発生します。免責の有無にかかわらず、購入後に必要となりうる費用の目安を事前に把握しておくと、判断がしやすくなります。目安は「一戸建て住宅の維持管理費」の記事にまとめています。
まとめ
契約不適合責任免責は、合法かつ一般的な取引条件であり、それ自体を過度に恐れる必要はありません。トラブルが特に増えているというデータもありません。大切なのは、免責という言葉だけで判断せず、契約前に確認すべき点を一つずつ押さえることです。それでも気になる場合は、インスペクションや資金計画といった、具体的な手段で不安を小さくすることができます。
私どもは、免責の有無にかかわらず、把握している物件の状態はできる限り具体的にお伝えしています。契約前に分からないことがあれば、どうぞ遠慮なくご質問ください。
出典一覧
● 民法第572条(担保の責任を負わない旨の特約)
● 宅地建物取引業法第40条、消費者契約法第8条
● おいかわ不動産「契約不適合責任」
● 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2025」
● 当社ブログ「契約不適合責任免責の中古住宅、買う前に確認しておきたいこと」
● 当社ブログ「契約不適合責任のトラブルは増えているのか-公的統計を調べてみた」
● 当社ブログ「一戸建て住宅の維持管理費、新築・築20年・築40年超(昭和)でここまで違う」