もう50年あまりも前のことになるが、学生だったころ未発見の鍾乳洞を探して、鹿児島のトカラ列島に浮かぶ7つの有人島のひとつ、宝島へ行った。
修学旅行を除いては、初めての遠出だった。
当時はまだトカラ列島十島村の各島々に、船が接岸できる港はなかった。
本船を海上に停泊させてから、物資も人も艀で運んでいた。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230516/11/ryu260701/d1/dc/j/o1978253115285082414.jpg?caw=800)
中之島の艀作業 1972年撮影
上陸するにも時間と労力のかかるし、天候によっては、乗下船するのに危険が伴い、観光で行く人はほとんどおらず、秘境といってもいいような地への旅だった。
鹿児島まで船と電車を乗り継ぎして行き、500㌧たらずの第三 十島丸という船に乗って鹿児島港を夜遅く出た。
夜中ごろから海が荒れはじめ、船は上下左右にと大きく揺れはじめて目が覚めた。
寝ていると、船底をたたく波の音が畳の下から聞こて来る。
湖のように穏やかな瀬戸内海の船旅しか今まで経験したことなかったので、荒れ狂う春の東シナ海に驚いた。
一行5名中4人が嘔吐するという大時化で、船は航行の途中で中之島の島影に避難した。
避難すると船の揺れはだいぶ治まった。
避難してから、どのくらい時間が経ったかは覚えてないが、船員からの指示があり、艀に乗り移り上陸することになった。
桟橋もない海岸の浅瀬まで艀で行った。
膝くらいまで海水につかり艀を降り、中之島に上陸した。
荒波が治まり出航できるまでの2日間、その島で過ごした。
中之島で写した数枚のモノクロ写真が日程表とともに、アルバムに残っている。
そこで2日間も何をして過ごしたか、多くが忘却の彼方に行ってしまったが、アルバムを見るたびに記憶が、少しずつよみがえっていった。
一緒に行った友人がいうには、島の子供たちと校庭でソフトの試合をしたという。
船旅で苦い思い出が残るトカラ列島だが、いつの日かもう一度行ってみたい、とアルバムに貼った写真を見るたびに思っていた。
その願いをやっと実行に移せることになった。
トカラ列島十島村行きの船の出航時間は夜の11時だが、鹿児島市に着いたら市内も散策したいと思い、日の出前に家を出て、朝一番の電車に乗った。
鹿児島に行くまでに途中で乗り換えは1回だけで、5時間余り電車に揺られ昼前に到着。
まずは港まで行き乗船手続きをして切符を買った。
港のロッカーに荷物を預け、十島村庁舎があるところまで歩いた。
街の繁華街からは少しはずれたところのようで、寂寥の感が少し漂う町並みの一角に四階建ての庁舎が建っていた。
トカラ列島 十島村の庁舎は、以前は人口が最も多かった中之島にあったが、十島村と鹿児島港を月に数往復ほどの海上交通しかなく、とても不便だった。十島村役場は県や国との調整や利便性を考慮して、今は行政区域外だが十島村行き船舶が発着する鹿児島港近くにあるという。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/2c/c9/j/o0709047315275747608.jpg?caw=800)
昼がきたら飯でも食べようと、地図で繁華街がある方向を確かめて行った。
昼飯にありつくと、その後はまたぶらぶらと市内散策。
レトロで重厚感漂う大きな建物が目に入った。
建物の一番上に建つ時計台に岩の文字が見えて、何だろうと思った。
よく見ているとデパートで、昔沖縄にもあった山形屋だった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/15/66/j/o0709047315275747605.jpg?caw=800)
港に行くと、すでに荷物などの積み込み作業は行われていて、出港の準備をしていた。
出港は夜の11時だが乗船は9時からOKのようだ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/23/e0/j/o0709047315275747609.jpg?caw=800)
旅の船、部屋は2等室。
今回乗ったフェリーとしま2(1953㌧)は大型で横揺れ防止装置を搭載した大型船で、半世紀前乗った第三 十島丸(497㌧)と比べれば夢のような船だ。
二等室はいくつかの部屋に分かれていて、私が寝る部屋は、他に2人客がいた。
この日の乗船客は全部で70人ほど。
朝が早かったので横になるとすぐに寝入った。
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1972年にトカラ列島行ったときは、第三 十島丸500㌧ほどの貨物船のような船だった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230516/11/ryu260701/66/09/j/o2444164215285082395.jpg?caw=800)
「まもなく口之島に到着」の船内アナウンスで目が覚めた。
朝の5時だ。
すぐ起きて二階に駆け上がり、デッキに出た。
暗くてまだ港しか見えない。
トカラ列島の十島村の有人島7つの島に順番に寄港しながら行き、最後に奄美大島に着く。
1番目に到着した島は口之島。
まだ暗くて島は見えないが、「トカラに来たぞ」という満足感があった。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/e0/41/j/o0709047315275747615.jpg?caw=800)
客の下船や荷の積み降ろしで10分あまりの停泊だった。
その間、ちょっとだけだったが船から桟橋に降ろさせてくれた。
桟橋に降りるだけで口之島に上陸したような気分。
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島に到着したコンテナに入った荷物はすぐ島の人たちに振り分けられて、それぞれの車に積み運ばれていった。
口之島を出航するころ夜明けが始まりだした。
島の輪郭がうっすらと見えるまでになっていた。
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夜が明けていくスピードは早い。
中之島が見え始め、船はだんだんと近づき始めた。
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今日から世話になる大喜(おおき)旅館
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トカラ列島の島々には郵便局がある。
中之島にATMはなかったが、ゆうちょカードがあれば、現金は引き出せる。
荷物も送れるが、通常は週2回の船便しかないので送ってから到着までには時間はかかるようだ。
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男女一人ずつ2人の局員さんがいた。
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朱塗りの鳥居が目立つ。
島内でいくつか見た。
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鳥居手前に丸い石が二つある。
上に竹の葉?を置き、その上に白い石が三つずつ置いてある。
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パパイヤの実。
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虫に噛まれかゆくなった時、宿の主人に虫のことを聞いた。
中之島には標高979㍍の御岳(みたけ)いう高い山があるので水の流れる川がある。
川があるためかブトという虫がいる、ということだった。
島に上陸するなりブトに噛まれてかゆくなった。
かゆいところをかきはじめるとだんだんと腫れていった。
そんな虫が島にいるとは知らず、虫刺されの対策は何もして来なかった。
かゆくてたまらないのでかくが、腫れていくばかり。
どうにかならないか、と思っていると、コロナ対策用に使うアルコール消毒液が部屋にあった。
かゆいところに塗ってみた。
不思議にかゆくてたまらなかったのが、ちょっと治まった。
腫れも治まっていき、ちょっと安心した。
ブトは噛まれると蚊よりも厄介な虫だ。
この川には大うなぎも生息しているという。
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お店は島の集落の東地区と西地区にそれぞれ一軒ずつある。
東地区にある土岐商店の外観や店構えは普通の民家とほぼ同じ。
入り口に木製の看板が掛かっているだけだった。
戸を開けて入ると、履き物をぬいで上がり、商品を買うようになっていた。
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食料品やビール、生活用品などが棚や冷蔵庫に並んでいた。
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こちらは、西地区の永田商店。
お店の営業時間は東西、どちらの店も長くない。
開店時間は普段は数時間だけみたいだ。
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島で唯一の?自動販売機 中之島で見たのはここだけ。
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車に乗せてもらいトカラ馬がいる放牧場に行った。
トカラ馬は小型で、明治時代に喜界島から宝島に移入され農耕用に飼われた日本の在来馬だという。
農耕馬としての役目を終えた馬は、だんだんと飼育頭数が減っていった。
減っていく中、残った馬を宝島から中之島に移し、種の保存のために今は飼育しているという。
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広大な牧場に、茶色で盛りあがった細長く帯状に続くものがある。
馬の糞だという。
帯状に線を引くようにトカラ馬は糞をするようだ。
このまま放置しておくようだが、時間が経てばキノコや牧草が勢いよく生えるという。
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馬糞にキノコが。
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十島村には野生の山羊がたくさん住んでいる。
歩いていると数匹から10匹足らずの群をよく見かけた。
近づいていくと、ゆっくいと逃げていく。
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海岸から島を見ると、手前の海岸は流れ着いた漁具やペットボトルなどのゴミに占領されている。
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外観の文字など見ると韓国、中国、台湾など、海外製が多くを占めていた。
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中之島内には大きく分けて3つの地域に集落はあるが、ここはその集落のひとつ、日の出集落。
ここに子供通った小学校跡が残る。
廃校になり久しく門柱だけが名残を惜しむかのようにたっている。
今は、この集落に村が新しく建てた家が何棟かあり、アイターン者たちが住んでいるという。
その集落を訪れてみようと、海に近い西集落から歩いて坂道を上がって行ったが
途中から雨混じりの強風が吹きはじめ、雨具を持ってきてなかったので諦めた。
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令和5年度は小学生10名、中学生が4名 計14名の中之島小、中学校
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トカラ馬の放牧場に上がっていく途中、中之島小中学校がある地域を俯瞰。
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1972年撮影3月 中之島に避難したとき撮影
中之島小中学校で野球をする子供たち。
友達がいうには、人数は足らなかったが、島の子供たちと試合をしたという。
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1972年
西地区集落
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お家の庭に咲いたアマリリスの花が見ごろでした。
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バナナの木が島のあちこちに生えていて、小型のあおいバナナがたわわに実っていた。
十島村の島バナナとして季節限定で販売もしているようだ。
食べたことはないが、小型のバナナだけど糖度は高いらしい。
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早苗が育つ水田のような場所で、田芋が育っいるのが目に入り、珍しいなと思いながら見入った。
当地では、田芋は水を張らず畝を作った畑で育てるのがあたりまえで、こんな育て方は初めて見た。
宿に帰り主人に尋ねたら「水芋」だという。
粘り気がちょっと強い品種で台風に強く、沖縄や南西諸島などでは水を貼って作るのが普通という。
水芋の話をすると、宿の奥さんが明日の夕食に水芋料理をしてあげましょう、と言ってくれたが、水芋が手に入らず叶わなかった。残念。
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中之島で見たかたつむり
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/56/30/j/o0709047315275748390.jpg?caw=800)
トカラカラスアゲハ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/53/7c/j/o0709047315275748402.jpg?caw=800)
有人島7島からなる十島村の駐在所は中之島だけにあり、駐在員さんが1人いる。
駐在さんは家族で来て住んでいるという。
他の島へは、定期の船便で往来しながら任務を果たしているようだ。
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駐在所は昔小学校だった跡地にあり、隣に先生の寄宿舎も数棟ある。
小学校だったときの門柱が残っている。
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島内で見た消防車
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/04/93/j/o0709047315275748415.jpg?caw=800)
島の備蓄倉庫
トカラ列島は天候の影響を受けやすい。
台風が接近してくると、食料などの物資を積みやって来る船の欠航が長く続くことがある。
現在は主食の多くを島外に頼っているため、いざという時のために備蓄は必須のようだ。
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西地区集落から港方面を臨む。
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台風の爪痕
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フェリーとしま2が中之島へ入港は
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乗船用タラップの入り口に立ち、乗下船客の安全管理などを行う民宿の主人と警察官。
タラップの後片付けなどは警察官はじめ島の住人たちが担う。
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中之島はゴミなどの焼却設備があり、そこで処理できる物はするが
ジュースや酒類などの空き缶は再利用のため鹿児島まで船便で送る。
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中之島の港
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1972年撮影 港
この時代の港湾設備は今と比べると,比べものにならないくらい貧弱だった。
当時の船は500㌧ほどの船で、今よりはかなり小型だが接岸は不可能で、海上に停泊し、そこから艀で人や物資を少しずつ運んだ。
高齢者や子供たちが船から艀に移るときや艀から上陸するときは危険を伴った。
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乗船切符は十島村役場中之島出張所で販売している。
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東地区にある温泉付近から海岸線を望むと、右下に見える曲線になった堤防が、海から吹いてくる暴風や海水から温泉を守るように囲んでいる。
温泉を堤防で守るため隠すように囲っているが、それでも台風がまともに来ると守り切れず被害は大きいようだ。
数年前も、温泉設備が吹き飛ばされるほどの被害があり、そのときの数枚の被害写真が温泉入り口に張ってあったが、傷まし姿だった。
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西地区集落を眺める
1972年撮影 中之島小中学校方面からのぞむ西地区集落と海岸風景。
海側の堤防脇に東地区の共同の温泉が見える。
屋根は茅葺きで覆われている
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1972年
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/b6/f0/j/o0709047315275748737.jpg?caw=800)
温泉建屋の白い屋根部分が見える。
元々温泉は海岸から湧き出ていたので、屋根は低い。
道路から階段を下り降りていき、戸を開け温泉に入るようになっている。
台風などのときなど、荒波や暴風から守るため周りを高い堤防で囲っている。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230426/15/ryu260701/e8/8a/j/o0709047315275748739.jpg?caw=800)
温泉
東地区の 温泉
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西地区集落のある海岸から、山に隠れて見えないが中之島小中学校方面を眺める。
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1972年撮影
西地区にある温泉。
男湯と女湯は東地区と同じく別々にある。
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温泉の清掃は毎日午後7時から村の住人が交代でしている。
清掃後は、お湯が貯まるとまたいつでも入れるという。
清掃当番表があるが、校長先生の名もある。
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島民は入浴料無料。
島外の一般客に対しても入浴料の金額表示はないが、寄付のお願い文が貼ってある。
名前を記した封筒にお金を入れて、木箱の上に開いたすき間から封筒を投入するようになっている。
台風到来で、温泉施設の被害は度々あると聞いた。
修繕や再建に多額の費用が掛かり、寄付金はその足しにするという。
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高額寄付者の名前が掲示板にずら~っと並ぶ。
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海岸通りは子供たちの通学路。
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手すりが付いた民家の入り口。
最近空き家になったようなお家。
島内集落内を散策していると、空き家となったお家がいくつも。
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東地区にある民宿
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東地区の集落
トカラ列島十島村は平家の落人伝説が伝わる村だが、もっと以前から、人が住んだ遺跡が発見されたという。
中之島の西地区は古くから人が住んでいたが、明治時代になって奄美地方から開拓民としてやって来た人たちが、集落を形成し新たに生活しはじめた。
その地域を東地区という、と東地区の人から聞いた。
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新しく出来た防波堤の高さは手前のよりも高くなっている。
少しづつ堤防の高さを上げているという。
温暖化による海面上昇や台風の大型化が原因なのだろうか。
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昔からあった西地区集落と明治時代に奄美地方から移民としてやって来た人たちが築いた東地区集落の間には、川が流れていて、船寄橋という橋が架かっている。
昔はこの橋を境に、西と東で争いがよくあった、と東地区の人が話してくれた。
今は人口が減り、互いに協力し合わないと島の運営が成りたたないので、昔のことは忘れ、今は仲良く協力し合っているという。
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この島は大陸から遠く離れた大海にあり海上交通の便は悪く
食料をはじめとする物資の十分な調達はままならなかった。
島内で食糧生産確保のために畑作や漁業に精を出す自給自足生活は長い間続いた。
集落から少し外れた山の斜面に入っていくと、かつて耕作地だった場所がいたるところに残っている。
耕作放棄地はやがて草木が繁茂し、木々は大きくなり、また竹林に覆われ自然に帰っていくのだろうか。
米をはじめとする食料は、作らなくても船で運ばれてくるようになり、しかも比較的安価で手に入るようになった。
現金収入を求めて働きだし、農業で生計を立てる人は高齢化で減っている。
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道だとわかる小径が残っている。
のぞき込むと奥に畑だった場所があった。
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雨が降りだし怪しい天候になってきたので、部屋で休んでいた。
ツバメが群を成し、鳴き声をあげながら飛んできたと思うや、電線に停まり羽を休めているのが部屋から見えた。
ツバメが中之島で巣作りするのは見たことない、と宿の主人はいう。
本土に行く途中なのだろう。
悪天候でツバメも一休みのようだ。
しかし、ツバメの数は多かった。
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室外機をワイヤで固定している。
台風などの強風での転倒防止のためだろう。
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山を見ると、木が立ち枯れしているところをよく見る。
島の人は松食い虫の影響だというが、木を取り囲みながら生息範囲を広げていっている竹林の影響もあるのではないかと思っている。
竹林の繁殖力はすごい。
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防波堤
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表面が剥がれた防波堤の表面が剥がれた部位に貝殻が見える。
海砂を使っているのだろう。
除塩不足の海砂使用による鋼材腐食による早期劣化が昔問題となった。
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西地区にある温泉橫で、堤防のかさ上げ工事中。
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キュウリの種をポットに入れ苗を育てる準備をしていた。
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昔は畑が一面に広がっていたところ
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中之島へき地診療所
若い看護師さん2人を見た。
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奥の方に野生の山羊がいる。
島内のあちこちで草木をほおばっているのを見かけた。
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滞在を終え船上に。
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中之島に別れをつげ、次は悪石島へ。
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