shiro's nest -71ページ目

埋められない白い空

小さな家があって、
小さな部屋がある。
小さく飾った観音扉を開けて、
更に小さい子窓を開く。


『僕はこうして生きてきた』
そんな確信なんてなくて、
美しいものをキレイと言い、
汚いものを無視したり、
小さく否定してきただけだ。

僕を非難した人、
殴った人、
蔑んだ人、
無視した人。

そんなの、すごくいっぱいいたわけじゃないけれど、
ノーガードで通すのは、なんか僕がオカシイ人に思えて、
叩かれた範囲内で相手に返してきた。
殴ったこともある。まぁ、当然のようにもっと強く殴り返されたこともある。

そういう意味では、僕は公平だったのかもしれない。

自分から打って出るわけじゃない代わりに、
出てくる人には敬意が必要だから。
そんな生温い平等感を、
プラスチックのコントローラでクリックしていたのかも。



子窓にまで手を伸ばしたのは初めてだった。
小さな家なんだし、
知らないわけもなく、
子窓がそこにあるのは知っていた。
だけど、僕以外の誰も触れられないようにしていた代わりに、
僕自身も触れることを許せなかった。


見たものをあれこれ言うのは好きじゃない。

ただ、それは涙を流していた。
血生臭い赤い涙を。

僕は知った。


『なにも失っていないのと、なにかが損なわれるのは違うんだ』


ひざまづいて、流す涙がてのひらをつたい、
膝に落ちて染みになり、
やがてはちっぽけな水溜まりになった。

『これは涙』


だけど…、


これが僕のこころなら、
いったい何色の空を写せるというのだろう。


今はもう、子窓の部屋に入ろうとも思わない。

もし、

小部屋に入り、
小さな子窓を開けたとしても、
たいしたことにはならないはずだから。

そう、あの時、何かが死んでしまった。

それは、紛れも無いリアルな無を僕に与えたのだから。


生きることは楽になった。
それで僕は満足してる。


ペンでは人を殺められない。
それでは不十分なのだから。
それでは生きられないのだから。








しろ

訳もなくはしり、訳もなく涙が乾く

かび臭いブルーシートを広げ 去年の思い出を砂に預ける

見たこともないブルースカイ

孤独な青目も 小さな令嬢も頬に紅

太陽に照らされたハートを燃やし

過密の絨毯で夏をうたう


シロップに騙されて見る 夏の蜃気楼

砂上の楼閣に浮かべる 幼稚な恋は

夏の匂いに溶けて フレーバーで焼き付いた



グツグツした空気の余韻 サンダルの足の痛み



身体の痛み

心の痛み



夏の温度で埋め合わせて 夏の匂いに置き忘れる

あやまちを許す夏の匂い


そろそろ 大事なものをしまいだす


そんな方には 実りの影

走り出すあの人には 小さくていいエールを送る



橙色の夏模様

色だけ残して絵書きに贈る

しろ

とっておきのプレゼント

時は満ち 無風のゆるさが溢れた

二頭立てのカボチャの馬車で カニ歩きのミニトラベル



夜の世界は短くできない

蝙蝠の引くカーテンが空を黒く塗り潰すから

蝙蝠の羽音が時を小さく刻むから

人がそれを夜と呼ぶから


カボチャの馬車でナイトクルージング

漆黒の闇の上を 綺麗なオレンジで塗ってゆく

『今日は僕の当番なんだ』

カニ歩きがぐるっと回った その場所が

今日の世界が始まる場所

最高の日輪が揚げられる



届いてますか?




努力の賜物は、なんて否定しづらいんだろ

しろ