shiro's nest -65ページ目

補完

痛んだ身体で歩けない
進むことは
いつも簡単じゃなかったのに

どうしても歩きたかったから
なんでも叶うなんて思わない
望まないのに

マリオネットの足を憎悪して
糸を二本引きちぎる

痛いなんて言わなかった彼は
表情を変えずに幸せそうな顔だけをする

少しだけ渡した自由が憎くなって
僕は彼を放り投げた

見えなくなった人形は
静かに歩いて消えたのだろう

もう足は自由なのだから





しろ

置き忘れたサマーキャンディー

となりに聞こえる子守歌

蝉のバトンをいつしか継いで 秋の色の静かさを埋める


子供らの明るい声も 家族の談笑も

青い果実が色を食み 次の息吹を待つに連れて薄くなる


とうに役は果たしたろうに

この柔らかい子守歌のメロディーは
鳴り止むことなく鳴り続ける




しろ

無題(1)

手を握って 足元に気を払って

なんどもなんども茶化し合い

道端のフリップボードに落書きをする


はにかむ笑顔がとにかく綺麗で

なぞる視線を巻き戻し過ぎて

僕は少し視力が落ちた


『霞むことはわけないさ。録画なんて必要ないんだ』


種を蒔くように 膝を折って屈み込む

もう会うこともないかのような
いつものサヨナラ

彼女は『今は見ちゃだめ』って言って

フリップボードに書き置きをした


『一人じゃ寒くて凍えそう』
なんて言う君の顔は

欲求不満のアザラシみたいにコミカルだったけど

寄り添う体温と裏腹に
君の瞳は少しも笑わなかった

掛ける言葉は持ってなかったから

心を伝えるマジナイを 心のなかで何度でも叫ぶ




『大好きなんだ…』






しろ