shiro's nest -19ページ目

ハナビ

行かないでと

月を追った

玉乗りの得意な僕は

ころころと回る球の上で

じっと月を見ていた




手を伸ばせば届くような

瞬きさえ追い付かないような




大好きな人に 大好きなんだと言った

似たような暑い日のこと

覚えているかな?

見上げる星を花火が隠し

美し過ぎる光の花びらは

星を焦がして見えなくする

泣きたいって言葉は

きっとこんなやるせない空に合う




いなくなるのは嫌だと言った

だけどなんども繰り返して

やっぱり僕はいなくなる



星になれない僕は

星を焦がす花火になる

星を見つめる彼女が

もう一度空を見上げないように



覚えているかな?

見上げる星を花火が隠し

短命な光の花びらは

星を焦がして見えなくする






また、空に花火が浮かび

ぼんやりと闇に消える

もう一度手を伸ばし 軽くじゃれるように手を繋ぐ

帰るように促す僕を

どんな瞳が見つめるだろう






大きな花がスクリーンを照らす

だけどどれもすぐに消え

WAN‐CIGARET も待てないんだ









しろ

Drive-in

白濁した空気を抜けて

薄い緑のグラデーションライン

さようならを呼ぶ声はない



静かにクラッチを切り

指先の神経に命令する

緑の帯は静かなまま

痛みはカラカラと心のコップのなか



虹を想っていた

この霧の向こう側にはハッピーエンド

溌剌とした笑顔が並び

為政者は言った

『ハレルヤを歌いましょう』



雨が強くなる

ワイパーは忙しなく手を振って

僕らを先に進めようと



虹を想っていた

雨露の流れる理由をこじつけて

手の暖かさを想っていた

震える首筋を感じていた

シフトに手を伸ばしたのは

ただの間違いだけじゃない

繋いだ手を離したのは

前にもっと進もうと





雨が晴れ ドアを開く

静かな大地に虹が架かる

一人ぼっちの静かな虹が









しろ

ソウ レイト

地雷のように唐突に

聞こえが悪いリアルを踏んだ

跳び上がりも スプラッシュもしないそれ

秋口はまだ遠く



彼氏のいない彼女は言う

普通 当然 なんでも言い方はいい

すごく痛いんだ

ねー、元気?



ポチポチ 音もせず

押し付ける ボタン メール



彼女には届かない


元気だよ。


作りかけのメールを放って

ポケットに閉じ込めた



空に向けて

静かに言う

元気だって言えるかな



そらはじっと動かない

きっと僕とおんなじに




聞こえないくらいに

元気だよって



わかったよ

わかったよ



おすそ分けはまた今度

涙が零れない時間の後に






しろ