Harmony Blossoms 19(終) | じゅりれなよ永遠に

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じゅりれな・坂道小説書いてます。

次に和が目を覚ました時、

目に映ったのは見慣れない白い天井だった。

 

消毒液の匂いが微かに鼻をつく。

 

保健室のベッドの上だと気づくのに、

時間はかからなかった。

 

「……ん…」

 

 身じろぎすると、すぐに心配そうな顔が覗き込んできた。

 

「和! よかった…気がついたのね…!」

 

それは、いつもの優しい、

和がよく知っている咲月の顔だった。

その瞳には、心からの安堵の色が浮かんでいる。

 

「私…わかる? 咲月だよ、和!」

 

「…さっ…ちゃん…」

 

掠れた声で名前を呼ぶと、

咲月は「よかった…!」と涙ぐみながら、

和の手をぎゅっと握りしめた。

 

「心配かけて、ごめんね…」

 

 「ううん…。私の方こそ、ごめん…」

 

咲月の温かい手のひらと、

心から心配してくれている表情に、

和はさっきまでの恐怖が少しだけ和らぐのを感じた。

 

あの歪んだ笑顔は、気のせいだったのかもしれない。

 

そう思いたかった。

 

和はしばらく保健室で休み、回復してから授業に戻った。

 

放課後は、何事もなかったかのように、

咲月の部活の練習をグラウンドの隅で見守り、

そして、いつものように二人で並んで下校した。

夕日が二人をオレンジ色に染めている。

 

けれど、和の心の中は、晴れない霧がかかったままだった。

 

(聞かなきゃ…でも、聞けない…)

 

咲月に、あの日のこと、野村先輩のことを聞きたい。

 

でも、もし聞いてしまって、あの時の、

自分の知らない怖い咲月の顔を再び見ることになったら?

 

 真実を知るのが、怖かった。

 

「…咲っちゃん」

 

「なあに、和?」

 

 隣を歩く咲月が、優しい笑顔で振り返る。

 

「…ううん。なんでもない。ただ…こうして、ずっと

…ずっと一緒に帰れるといいなって、思っただけ」

 

それは、今の和にできる、精一杯の言葉だった。

 

未来への不安と、変わらないでほしいという

切実な願いが込められていた。

 

「もう、和ったら。なにを今更、

当たり前のこと言ってるの? 今日の和、なんだか変だよ?」

 

咲月は、和の言葉の裏にある

本当の意味には気づいていない様子で、屈託なく笑った。

 

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(井上和視点)

 

そう、私にとって咲月は、ただの妹じゃない。

 

 血の繋がりはないけれど、

誰よりも大切な家族であり、かけがえのない親友であり、

そして…いつからか、私の心を焦がす

ただ一人の愛しい人になっていた。

 

だから、分かっている。

 

たとえ、あの日の咲月の行動が、

野村先輩の失踪に繋がっていたとしても。

 

たとえ、彼女が私の知らない

恐ろしい一面を持っていたとしても。

 

 それでも、咲月は咲月だ。

 

私の、たった一人の、愛しい人。

 

私は、この先どんなことがあっても、

咲月と共に生きていく。そう、決めたのだ。

 

やがて、野村先輩の失踪は、

私達──【Harmony Blossoms】、

に関わったからではないか、

と噂されるようになった。

 

美しい薔薇には、鋭い棘がある。

 

彼は、その棘に深く刺されてしまったのだ、と。

 

もし、その棘を彼に刺したのが、

本当に咲月だったとしても。

 

それはきっと、私を守るため。

 

私への純粋な愛が、彼女をそうさせたのだとしたら…。

 

それは、私も同罪なのだ。

 

だって、私の中にも、咲月のためならどんなことでも、

という想いが確かに存在しているのだから。

 

私は今日も、咲月の愛に守られながら、その隣を歩く。

 

この危うい日常が、いつまで続くのかは分からない。

 

けれど、今はただ願う。

 

愛しい咲月のいる傍で、

いつまでも、いつまでも一緒に笑顔でいたい、と。

 

―FIN―