ベッドの中でうとうとしながら、友梨奈を待っていた。
時計の針が午前1時10分を指していたのを
ぼんやりと見た記憶はあるが、
その後はいつの間にか深い眠りに落ちていたらしい。
ふと目を覚ますと、窓の外が白み始めていた。
時計を見ると、朝の6時。
そして、隣には、いつ帰ってきたのか、
下着姿の友梨奈が静かな寝息を立てて眠っていた。
ほっとすると同時に、その無防備で、
少し疲れたような寝顔を見ていると
、たまらない愛おしさがこみ上げてくる。
(きっと、夜遅くまで大変だったんだろうな。
慣れない土地で、
人間関係を築くのも気を遣うだろうし…。)
私は起こさないように、
そっと友梨奈の額にキスをした。
そして、静かにベッドを抜け出し、
キッチンに立って朝食の準備を始めた。
冷蔵庫にあるもので、和食を作る。
だし巻き卵を焼き、お味噌汁を作り、鮭を焼いた。
友梨奈が、私の作る和食を
「実家の味みたいで落ち着く」と言って、
いつも喜んでくれるからだ。
朝の8時。ほかほかのご飯と味噌汁のいい香りが
部屋に満ちる頃、
私は眠っている友梨奈の肩を優しく揺すった。
「友梨奈〜、朝だよー。
朝ごはん、できたよ! 起きてー!」
「んん…あと5分…ねるぅ…。」
友梨奈は布団に顔をうずめて、まだ眠たそうだ。
「だーめ。せっかく焼いたお魚が冷めちゃうよ!
ほら、起きた起きた!」
「ん〜…わかったぁ…。」
友梨奈は大きなあくびを一つして、
眠い目をこすりながら、
ゆっくりと体を起こした。
「おはよう、友梨奈。よく眠れた?」
「ん…おはよう、ねる。ごめんね、
昨日、すごく遅くなっちゃって…
起こしちゃった?」
友梨奈はまだ少し寝ぼけ眼で、
申し訳なさそうに言った。
「ううん、全然。大丈夫だよ、気にしないで。
さあ、顔洗っておいで。ご飯食べよ!」
食卓につくと、友梨奈は
「わー!美味しそう!」と目を輝かせた。
「いただきます!」 勢いよく食べ始め、
熱々のお味噌汁を一口すすると、
「はぁ〜っ…美味しい! ねるの作るお味噌汁、
ほんと体に染みるよぉ…。」
と幸せそうな顔をした。
友梨奈は、私が作った朝食を、
あっという間に綺麗に平らげてしまった。
「ごちそうさま! めっちゃ美味しかった!」
こんなに嬉しそうに、美味しそうに食べてくれるなら、
早起きして作った甲斐があったな、と私の心も温かくなる。
その日の土曜日は、二人で話題の邦画を観に行った。
少し切ないラブストーリーで、観終わった後、
私たちはどちらからともなく手を繋いだ。
日曜日は、少し足を延ばして
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ。
童心に返ってアトラクションを楽しみ、
キャラクターと写真を撮り、
パレードを見て、思いっきりはしゃいだ。
友梨奈も心から楽しんでいるように見えた。
この二日間は、本当に楽しくて、幸せだった。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
日曜日の夜19時。私たちは、週末の別れの場所、
新大阪駅の新幹線のホームに立っていた。
「二日間、本当に楽しかったよ!
ありがとう、ねる。仕事、頑張ってね。
じゃあ、2週間後、東京にイクからね。」
友梨奈は少し寂しそうな笑顔で言った。
「うん、私もすっごく楽しかった!
友梨奈も無理しないでね。
2週間後、楽しみにしてる。」
「うん。気をつけて帰ってね。LINEする。」
「うん、着いたら連絡する。」
「バイバイ!友梨奈!」
「バイバイ、ねる!」
発車ベルが鳴り響く中、私たちはホームで手を振り合い、
私は発車間際の新幹線に乗り込んだ。
ドアが閉まり、ゆっくりと動き出す列車。
窓の外で、友梨奈の姿がどんどん小さくなっていく。
私は、この瞬間が一番嫌いだ。
たった一人、友梨奈のいない東京へ帰る、
この寂しくて、切ない時間が…。
そして2週間後、約束通り友梨奈が東京にやってきた。
私たちは、いつものようにカフェに行ったり、
家で映画を観たり、甘い時間を過ごした。
遠距離恋愛を続けて、友梨奈に会えば会うほど、
彼女への想いは深まっていく気がしていた。
またすぐに会える次の2週間後が、
今から待ち遠しくてたまらない。