数日後、玲奈は友梨奈を呼び出すことにした。
カフェで待ち合わせた二人。
友梨奈はクールな表情を崩さずに座っていた。
「玲奈さん、今日は何のご用ですか?」
友梨奈が言った。
「井上知子さんの件で、
どうしてあなたが現場にいたのか知りたくて.」
玲奈は率直に問いかけた。
「和さんにはお母様の知り合いってことで
会いに行きました。
それ以上のことは貴方には言えません。」
友梨奈は無感情に答えた。
「やっぱり、何か他の事件が関係しているのね。
お願い、知ってることを教えて。
殺人事件の犯人を特定するのに役立つはずよ。」
「殺人事件なんて私には関係ありません。
ですのでこれ以上玲奈さんとは
話すことはありません。」
玲奈は友梨奈の態度に苛立ちを感じつつも、
それが彼女の任務遂行のためだと
理解はしている。
しかし、玲奈は直感的に、
友梨奈の任務が
殺人事件と繋がりがあると感じたのだ
それから数日後
賑やかな通りから一本入った、静かな喫茶店。
井上和は、窓際の席で一人、
物思いにふけっていた。
母親の死から数日が経ち、
ようやく落ち着きを取り戻しつつあったが、
心の奥底にある孤独感は、
依然として彼女を苦しめていた。
「お父さん…お母さん…」
和は、小さく呟いた。
幼い頃に父を事故で亡くし、
母もまた、突然の事件で失った。
天涯孤独となった彼女にとって、
この喫茶店だけが、
わずかな安らぎを与えてくれる場所だった。
その時、店のドアが開き、
一人の女性が入ってきた。
黒いコートを身にまとい、
クールな雰囲気を漂わせるその女性は、
平手友梨奈だった。
友梨奈は、和の姿を認めると、
一瞬、不敵な笑みを零した。