そして、絢音との待ち合わせ当日。
駅前に9時に集合であったが
友梨奈は20分前にすでに来ていたのだ
(まあ、なるようになるか、
絢音が楽しんでくれればそれでいいよ)
友梨奈は辺りを見まわしながら
絢音を待った。
だが、9時になっても絢音は現われない。
(あれ?待ち合わせ場所間違ったかな?)
友梨奈は絢音に電話するが
“この電話は
電波が届かない場所にあるか・・・”
のメッセージが流れてつながらない。
(おかしいなあ…
都合が悪くなったら連絡してくるはずだけど。
ひょっとして、得体のしれない私のことを
怪しんですっぽかしたのかな?)
友梨奈はそれから1時間待ったが
ついに諦めて帰るのであった。
(きっと、完治したから
私のことは気の迷いだと悟ったんだろうな。
絢音、幸せな人生を歩んでね)
友梨奈は絢音が来なかった理由を
決めつけてそのまま帰宅した
翌日
友梨奈が自宅アパートで
TVを見ていると
コメンテータに“前田敦子”の名を目にした。
(絢音を執刀した女医って
確か前田敦子って言ってたよな)
少し気になった友梨奈は前田敦子が勤める
病院に出向いたのだ。
受付で呼び出したところで
患者でもないのに
会ってくれないのは明白であった
なので友梨奈は
前田がいるであろう心臓外科に出向いた。
すると偶然、
休憩室の自動販売機でコーヒーを買う
前田敦子を発見した。
「前田敦子先生ですね?」
友梨奈はコーヒー缶を取り出し口から
取ろうとした前田に声をかけた。
「はい、そうですが貴方は?」
「私は鈴木絢音の友人です。」
「あら、絢音さんの。
で?私に何か御用?」
「昨日から絢音と連絡がつかなくて
先生ならなにか知っているかと
思いまして。」
「昨日、問診をしましたが
その後のことはしりませんよ。」
「そうですか…すいません変なこと言って。」
友梨奈は軽くお辞儀をしてその場を去った。
前田敦子は友梨奈の後姿をみて呟いた。
「綺麗な顔立ち…」
うっすら妖しげな笑みを浮かべる
前田であった。