ガラスを割れ ―クリスマスイブ―
12月23日の出来事である
友梨奈は普段はパートで
薬工場で働いている。
仕事を終えた友梨奈は
行きつけのクラブに顔を出し
アルコールを飲んでいた。
「あの・・・」
21時頃一人の女性が声をかけてきた。
「ん??なに?」
友梨奈はスタンディングテーブルに
前かがみになりながら顔をあげた。
「あの・・・・もしよかったら明日
私とデートしてもらえませんか?」
女性の声は少し震えており
緊張しているようだ。
「明日??なぜ明日なの。」
「明日はクリスマスイブなんで
だから、あなたと過ごしたいんです。
ごめんなさい、
突然初対面でこんなこと言われて
気持ち悪いですよね。」
女性は頭を下げて立ち去ろうとした
「あ!待って、別にいいよ」
「え??本当ですか・・・」
「君の名前は?」
「鈴木絢音です。」
「私は平手友梨奈、よろしくね。」
「でも、なんで初対面で
私を受け入れてくれたんですか?」
「あ、勘違いしないでね。
遊びならいつでもOKってことなの。
真剣につき合うとかは
できないけどそれでもいい?」
「あ・・・それでもいいです。」
絢音は笑みを浮かべた。
「なにか飲む?」
「いえ、もう帰りますから、
明日の待ち合わせの場所と
時間を決めていただけませんか?」
「え??帰るの?」
友梨奈は少し戸惑った。
「はい!明日のイブが本番ですから。」
「お互い、その前にもう少しわかりあおうと
思わない?」
友梨奈は絢音の手を握った。
友梨奈は誘っているのだ。
だが、絢音はそれには真面目に
気づかずにいた。
「明日じゃだめですか?
イブに分かり合いたいです。」
「わかったよ。じゃあ、明日
この時間にこの場所で会おう。」
「はい。」
絢音は去っていった。
友梨奈はからかわれたのかと思った。