激しく自己嫌悪に陥ってしまった私は
気分を紛らわそうと、
昔よく、元カレの北川君といった
カフェバーに立ち寄り
入口近くのカウンター席で
お酒を飲んでいた。
こんな、偶然があるものなのか・・
なんと北川君が
女性と一緒にはいってきたのだ。
そして、すぐに目が合ってしまった。
「久しぶり・・・」
北川君が
バツの悪そうな顔で話しかけてきた。
「元気そうね・・・」
すると、そばにいた華奢な女性が
「こちらどなたなの?」
「え・・・」
北川君が言葉に困ったので
すかさず、私が発言する
「大学時代の友人の松井です。」
「西野七瀬といいます。
北川さんとお付き合いさせて
いただいております。」
そう言って、西野さんは、
北川君の腕に手をまわした。
「じゃあ、また・・」
北川君達は
私の視界にはいるテーブル席に通された。
なんどか、西野さんと目があったが、
彼女は私の北川君の関係を
見抜いたのだろう。
軽く勝ち誇ったように何度か微笑んだ。
私は、恋に敗れて、仕事でも敗れて
挙句の果てに友梨奈を傷つけた。
もう消えてしまいたいぐらい
自分のことがイヤになり、
お店をでた。
私は泣きながら、歩いていた
自分は誰からも必要とされてない、
自分はこの世にいてはいけない、
そんなことを考えながら
私のお気に入りの場所である、
高い木が見える公園に足がむかっていた。
私は公園に着くと
イスに座り、また涙をながした。
まだ、北川君に未練があった
自分が情けなく
心が張り裂けそうなくらい辛くなる。
そんな時だった・・
聞きなれた音色が聞こえてきた。
そうだ、友梨奈のサックスじゃないの・・・
私は振り返った。
すると、友梨奈が
何時もの優しい笑顔で発言する
「玲奈さんもここにいたんですね」
「なんで友梨奈がここに?」
「前に玲奈さんを看病した時に、
この公園写真が飾ってあったので
もしかしたら玲奈さんに会えるかなぁ~て、
私もたまにここで練習するのですよ。」
そう言って、友梨奈は演奏を続けてくれた。
まるで今の私の気持ちを
分かってくれているようで、
私の心は癒されていった。
演奏が終わると友梨奈が謝罪する。
「不愉快なこと言ってすいませんでした。
だから、そんな悲しい顔をしないでください。」
どんなに悲しい時でも、
どんなにピンチな時でも
友梨奈は必ず現れてくれる。
私は友梨奈に抱きついた。
「なんでよ、あんなに酷いこと言ったのに、
なんでそんなに優しくしてくれるの・・・
なんでよ・・・うう」
友梨奈は困った顔をして私を抱きしめてくれた。
「きっと、私は玲奈さんが大好きなんです。
玲奈さんの悲しい顔はみたくないんです。」
私は、さらに友梨奈の腕の中で号泣した。
木枯らしが吹き、
落ち葉が飛ばされ
ガサガサする音が妙に心地よく聴こえる。
冬の夜の出来事だった。