平原には、膝丈ほどの長い柔らかな草が茂っている。

月明かりの下で、風が吹き抜けると白い葉の裏をみせて翻り、つぎつぎと浜に打ち寄せる波のようだ。
乾いた波音があたりを包んでいる。

城から緩やかな上り坂になっているこの場所は、城の尖塔越しに町並みがみえる。
僅かな明かりが見える程度の、深夜の町は夜の闇の中に沈んでいる。

鳥の声も、虫の羽音も聞こえない。聞こえるのは、ただ風が草を靡かせる音だけだった。

「何もかも本当に眠りの中ね。昼間は音に溢れているのに。でも、私、この時間も好きだわ。但し、今日のような風のある夜だけ。」

そう言うと、ラティアが両手を広げた。
嵐の前の様な強い風が吹き付ける。

「ああ。このまま空を飛べたら!」

ラティアの衣が翻る。

「とても気持ちがいいのよ。鳥のように空を飛ぶことは。上手に飛ぶのは難しいけれど。」

「飛んだことがおありのようですが。」

ラティアが嬉しそうに笑う。

「飛んでいるのよ。いつも夢の中で、鳥になって。きっとアレスと空を飛んでからだわ。今もよく覚えているの。彼はいつ戻るの?」

「わかりません。しかし、近々戻るでしょう。」

「そう。それは楽しみね。」

ラティアはそこまで話すと、月を見上げて黙した。