気配を感じなかった。
人間のようだが、こんなに悪意を感じない者には会ったことがない…。

自分の問いに答えようとしないエルフに、
青年は微笑して答えを促すようにちょっと首を傾げた。

ユリウスは、そのいかにも暢気な、
屈託のない様子に、なかば呆れながら答えた。

「何もしてはいない。見たとおりだ。
時が過ぎて行くのを眺めていた。」

なるほど、といった様子を見せ青年はそこに、
背負っていた薪の束を下ろし、
自らも腰を下ろした。

「では、私も眺めるとしましょう。
どうぞ、お続け下さい。」

青年はあたりの森に芽生えた、
新緑のような淡い翡翠色の瞳で、
ユリウスをみている。

少し肌寒い風が、艶やかな黒髪を揺らしていた。

「此処まで、薪を取りに来る人間はいない。なぜ、これほど遠くまで来た?」

立ったままのユリウスから、
視線を滝の方へ移すと、
青年は少し上体を後ろへ倒し、
両腕で支えるようにして、足を投げ出した。

「エルフはこんなに人里近くに来ない。どうして、来たのです?」

そこまで言うと、再びユリウスの目を見た。

澄んだ瞳が輝いて見える。

しばしの沈黙のあと、二人は笑い合い、向かい合って座った。



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