中庭に面した回廊が、稲妻の閃きで絵画のように時折浮かび上がる。

闇に響く靴音が、雷鳴に打ち消された。

『会いたかった…。』

重々しいフィスの声が再び脳内に響いて来た。

サウザードは立ち止まると前方の闇を見つめて答えた。

「それは違う。お前は私を此の世から消し去ることだけを考え続けていた。遙か彼方に離れていながら、私が存在するという事実さえ認めようとはしなかった。いや、出来なかった。私が存在した過去さえ消したいと思い続けてきたのだろう?」

暫しの沈黙の後、前方の闇の中からチラチラと赤い炎が見え始めた。

『それはお前の方だ…。お前が私を消そうとしているのだ…。』

サウザードの頬に冷たい微笑が浮かんだ。

乾いた笑いを響かせると、全ての感情がその面から消え去った。

「確かにその場所からは離れてもらうことになる…。フィスを返してもらおう。」

ぬめるように赤い炎が渦巻いた。

小刻みに振動が石畳を通して伝わってくる。

柱が倒れ、壁が崩れた。

『人間如きが、愚かな事を…。後悔することになるぞ…。』

激しい振動と共に城が崩れ始めた。

崩れた城の欠片は重力に逆らい、磁石に吸い寄せられるように動き出した。
天井は崩れ落ちてゆき、壁は壊れながらサウザードの周囲から離れてゆく。

やがて、城は石畳が広がる平面となり、その中央に玉座に座すフィスの姿が見えた。

いかづちが牢獄の鉄格子のように降り注ぐ。


赤い炎は陽炎のようにフィスを包んでいる。
左肩から、吹き出すような流れが見て取れ、その陽炎が床の上を蛇のように蠢いていた。