ゆるやかに雲が流れ、西へ傾きかけた月が姿を現した。
月明かりが降り注ぎ、赤い陽炎が消える。
フィスの長い金色の髪が風に波打ち、雷鳴と稲妻が次第に離れていく。

玉座にふれていたフィスの指がわずかに動いた。
俯いた頭が左右に振られ前屈みになると、フィスはゆっくりと立ち上がった。

闇色のうつろな瞳孔が知性を取り戻し、躰に意志が伝わってゆくのが見て取れる。
視線を上げ、サウザードの姿を認めると、かつてのフィスと変わらぬ笑顔がその面に浮かんだ。

「久しぶりだな。サウザード。」

光が溢れる。

目眩がする。

灼熱の太陽、深緑、木洩れ日、馬の嘶き。
フィスとサウザードを故郷の山河が包んだ。

「フィス、あれからもう15年が過ぎ去ったのだ。あの戦いの夜から。」

「そうだな。…早いものだ。だが、私は全てを手に入れた。一つの国が滅びたことは悲しむべき事かもしれないが、それは必然だったのだ。新たな崩れざる国を建てる為に。」

「新たな国を作るために、破壊と殺戮をする必要はない。お前が今作り上げようとしているのは、権力と支配の鎖で刻んだ国境なのだ。」