「鎖?結構!人生は所詮、全てが鎖で繋がれている。そのもっとも堅固な鎖が権力だ。鎖に繋がれ、鎖によって生かされている。」

「力でねじ伏せ、苦痛と憎しみを積み上げた先に、望むものがあると?」

「そうだ、今、そこへ到達する。お前には、その最期の礎になってもらおう。」

フィスがゆっくりと剣を抜いた。ピリピリと全身から流れ出す魔力が、空間を弾いている。

サウザードの瞳にかかる黒髪が、不規則な風に揺れていた。

「歪んだ石を積み上げて、どれほどの高みにたどり着けると言うのか。僅かな力で崩され、滅びの時を迎えることになるだろう。」

「滅びはしない。力が全てだ。選ばれし者と選ばれざる者。それだけの事だ。」

サウザードも剣に手をかけた。

「苦悩と敗北。悲哀と喪失。自らの破滅の予感の中で、お前が世界へ放った呪いの声を、はっきりと奴は聞いていた。そして、お前は魔石に取り付かれた。選ばれたのではない、みずから選んだのだ。」

フィスの目が見開かれ、口元に笑みが浮かんだ。

「そうだ、力を望んだ。そして手に入れた。何もかも思い通りだ。」

「まだ間に合う。今なら…。分からないか?このままでは全てが終わってしまう。お前も、世界も。」

「俺は生き続ける、この力と共に…。」

フィスがルーンを呟くと、左手から放たれた火炎の竜が激しい勢いでサウザードに向かってきた。
サウザードは長剣を下向きに持ち刃先を左腕で支えると正面からその火炎を受け止めた。
勢いのままに、火炎の竜は二つに割れて消え去った。

「フィス!目を覚ませ。お前の心は、もう残っていないのか!私を救ったお前の心が、そうたやすく消え去るものか!」

サウザードの足下から、氷の魔法陣が広がっていく。
フィスの姿は消えていた、あたりを取り巻いていた過去の景色が消えた。

サウザードのルーンで一斉に無数の氷柱が夜空に突き立つ。
フィスの結界に触れ、砕け散る氷柱が見える。

赤い魔力がユラぐ。

冷たい怒りが肌の上を駆け上がってゆく。

「お前と戦おう。姿を現せ。いつまで見物しているつもりだ。」

前方から、ことごとく氷柱を粉砕しながら衝撃波が向かってくる。

激しい金属音を響かせて、サウザードとフィスの剣がぶつかり合った。