剣が軋む。
不意に、フィスが力を抜き剣を離した。

「お前と剣を合わせるのは何年ぶりだろうな。」

フィスが軽く笑う。

「お前の好きにするがいい。
この肉体が滅びる事を望むなら、その剣でこの心臓を貫け。」

フィスは剣を投げ出した。
魔石の淡い光がフィスの胸元に揺らいでいる。

「サウザード、お前には、私は殺せぬ。生け贄となれ。」

フィスが右手を突き出してルーンを呟く。
風が渦巻く。

サウザードがフィスに近づいて行く。
研ぎ澄ました刃のような風が、サウザードの周りで次々と弾ける。

サウザードは無造作に歩を進める。


「何をする気だ。」

魔石が一瞬怯んだ。

「死ぬ気か?」


サウザードの頬に血が流れる。
腕に肩に、風に刻まれた傷が増えて行く。


「何の意味がある?
そこまでする意味がどこにある?」


「意味?それこそ私がお前に聞きたい事だ。
自分の目的の為に数多の苦しみを厭わない。
一体そこに何の意味があるんだ。
苦しむものを見下ろして、何故笑えるのだ。
自分を支える世界を破壊することは、
我が身を傷つけることに変わりないではないか。

この世界はすべてが支え合って存在している。
何一つ無駄なものなど無い。」


フィスの胸にサウザードの右手が当てられた。


「友の命を捨てるというのか。」

サウザードの口元に笑みが浮かんだ。

「いや。

友は守る。」

一閃。

激しい閃光に夜の闇が消えた。