淡い夜に満たされた世界が、次第に色を取り戻して行く。

夜明け前の静寂にドラゴンの呻き声が聞こえる。

「陛下。我が主よ。」

フィスを支えていたサウザードの足が乱れた。
伏したアレスの脇腹に二人は倒れた。

苦しげにサウザードが笑う。

「賢きドラゴンよ。真の救世主は正にお前だアレス」

そう言うと血濡れた魔石を差し上げ、サウザードが微かにルーンを呟いた。

魔石は光を失い、やがて血色の石になると、サウザード指の間から滑り落ちた。

「この石にも意味がある。」

その石を虚ろな瞳で眺めやりながら、サウザードは暫く、微かな風を受けながら黙していた。

「フィスが目覚めたら彼と共にこの石を海へ沈めよ。場所はフィスが知っている。」

アレスが苦しげに喉を鳴らした。

「陛下。すぐに城へ戻り傷の手当てを。」

「いや。その必要はない。私のなすべき事は終わったのだ。人はなすべき事を終えれば、静かに眠ることができるのだからな。」

その時、まばゆい旭日が山々の縁から姿を現した

「夜明けだ。アレス。見えるか?私にはこうしていても見えるのだ」

サウザードが光の中で瞳を閉じた。

「なすべき事をなせ。世界は美しく、輝きに満ちている…。」

吹き渡る風が朝を告げ、燦たる陽光は全ての闇を打ち払い世界を照らす。
躍動する無数の生命が再び生誕の時を迎え、時の歯車は新たな運命を刻み始めた。