風に乗って鐘の音が聞こえてくる。
白い鳩の群が飛び立って行った。

「誰もがエルフやドラゴンを物語の中の事と思っているけれど、再びその存在を知ることになるでしょうね。」

「それは、いつだとお思いですか?」

「いつかしら?はっきりと予言は出来ないけれど、調べれば調べるほど、それは避けられないことだと分かってきたの。貴方のように姿を偽り、密かに側にいてくれる優しいエルフは少ない。歴史をみれば、ダークエルフが何度も病を流行らせたり、ゴブリンや魔物が災いを呼び起こしているのに、私たちは気づかずに生きてきた。」

一羽の鳩が舞い降りてきた。
鳩はラティアが差し出した右手に止まると、思いの外強い力でラティアの指をしっかりと握りその身を安定させようとした。

「歴史には嘘もあるし、真実もある。でも、少し嘘の方が多いかもしれないわ。」

ラティアは少し首を傾げて、右手を差し上げると、鳩を軽く放って空に返した。

「歴史家に信用できるものは少ない。それは、権力者の影響を多分に受けていて…。人々のありのままな記録の方が重大な事実を教えてくれるわ。」

ラティアはユリウスの方へ体を向けるとその瞳を静かに見上げた。

「ねぇ?ユリウス。どうして人は権力を手にすると狂ってしまうのかしら。」

長い睫毛が憂いを秘めた瞳に影を落としている。

「権力は怖いものね。それを手にして正気でいられる者は本当に少ない。」