高く広く、木々は空へ向かって枝を伸ばす。
ただ、ひたすらに日の光を求めて。

わずかにこぼれ落ちる日の滴が、粉っぽく乾いた道の上に揺れている。
黒い毛並みのリスが木漏れ日の道を横切って行った。

その道を塞ぐように、黒いフードを被った女が一人立っている。

「鍵を握るもの。遠方より来たる。」

女はそう言うとフードを取り、顔を上げた。
思いのほかその女は若く、赤い唇で呪文のような言葉を紡ぐ。

「銀色の使者。時の知らせ。」

目を細めて意味ありげに微笑む女に、アレスは憮然と言い放った。

「予言の魔女とはお前か。未来の何を知っている。」

「お前の知らない事を。」

女が踵を返し歩き始めた。

「どこへ行く。」

「来るがいい。お前の主が残した物を渡さねばならぬ。」

先ほどのリスが女の衣を駆け上がり、肩の上に乗った。
しきりと女の首筋に甘えながら、視線だけは背後のアレスから外さない。