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Apollo-12

広告とか、コミュニケーションとか。
社会貢献とか、社会起業とか。
まちづくりとか、コミュニティデザインとか。
そうしたものたちの、少し先とか横の話。

随分と間を空けてしまいましたが、
続きを書きたいと思います。


これまで「利他的な行動を促進する(人が人に優しくなる)」をテーマに、

第1章では、(たとえ利他行動がなくとも)幸せを感じやすい心のつくりかたを。
第2章では、理性的および感情的に利他行動を起こしやすい心の動かし方を。

それぞれ考察してきました。

そして今回の第3章では、
"利他行動が生まれやすい環境づくり"をトピックに、
考えていることを書いていきたいと思います。



心を変えずとも、行動は変えられる。
環境をデザインすることの威力とは?



環境を変えることで、心を変えずとも、行動は変えられる。

「利他行動」という縛りを抜きにして身近な例をあげるとすれば、
ATMがこれにあたるかもしれません。

$Hello, my dear.

昔、ATMではある問題がありました。
それは引き出しの際、「カードをとって現金を取り忘れるお客様が多い」というもの。

この話そんなのありえないでしょ、と思いつつも、
誰もがコンビニ等で一度は「お釣りをもらい忘れる」「商品を忘れる」
なんてことをしたことがあるのではないでしょうか。

ではなんで今、コンビニでの過ちを、人はATMでおかさなくなったのでしょうか。
実はATMに、画期的な変更がなされたからです。

それは、
「現金を取ってもらった後にカードを返す」というもの。

え、全然普通のことじゃん...と思うかもしれませんが、

昔のATMは、引き出しの際、
現金とカードをいっぺんに吐き出して受け取ってもらうシステムになっていました。
(今でも一部のATMはそうなっていると思いますが。)

この仕組みだと、カードか現金をお財布にしまい込むとそれで安心してしまい、
もう片方の存在をすっかり忘れてしまうという人間の習性があったようです。

それに気づいたATMの開発者が、
「現金を受け取った後に、カードが返却されるという"順番"をつければいい」
という、とてもローコストで効果抜群のアイデアを思いつき、現在の仕様となりました。
その結果、現金やカードの取り忘れというトラブルは劇的に減ったそうです。


この事例において着目してほしいのは、
課題の特定から解決にいたるまでの手法の鮮やかさもそうですが、それ以上に
「人の心を無理に変えなくとも、環境を再設計することで行動は変えられる」
という点です。


他にも例を挙げればキリはないのですが、
例えばダイエット。

Hello, my dear.

これだけ毎年話題になっては失敗を繰り返す人間の営みではありますが、
厳しい運動や食事の制限を課しては、失敗するのは「心が弱い」せいにする風潮があります。

しかし、本当の問題は心にではなく、
環境にこそあるのではないでしょうか。

つまり、
「いつも食事をよそる器を小さくする」ことで、量をセーブし、おかわりのハードルを上げる。
「枕元に明日の朝つかうランニングセット一式を並べる」ことで、ランニングをするハードルを下げる。

こうした努力によって、
実際にダイエットが成功した例も少なくないようです。


他にも、身近な経験で考えてみれば、
・自分の周りのクラスメイトが受験勉強を頑張っていたから、自分もつられて頑張れた
・同級生たちがよく◯◯公園で遊んでいたから、小さい頃はしょっちゅう公園へ遊びにいった
・仲のいい友達がよくたばこを吸うので、自分も吸い出した

など、自分の行動の多くは心が先に変わったというよりも、
「そういう環境にいたので、自然とそれに見合った行動が生まれ、心が行動についていった」
というパターンが、実は多いことに気がつくのではないでしょうか。

また、第2章の前編でも紹介しましたが、
学校のいじめをなくすのに効果的な方法は、
「当事者たちの心を変える」ことではなく、「傍観者の比率を下げる」ことだとわかっています。


人間の心は、弱い。

その前提に立つと、「ベターな行動習慣が生まれる環境をデザインする」
というアイデアの方向性は、たとえ地味であっても、とても強力で魅力的なように感じます。



環境から、行動と心を変えていく。
利他的になれる環境づくりは可能か?


Hello, my dear.

僕がここまで利他行動にこだわっているのは、
もし世界が教室なのだとしたら、

何も悪くないのにみんなから無視されてしまっている子、
心も居場所も教室の端っこに追いやられてしまっている子、
そもそも教室にすら行けずに家の布団の中でうずくまってしまっている子、

そうした人たちの力に少しでもなりたいと思っているからです。
そうした人たちのために人生を使いたいと思っているからです。


これまで、
レジリエンスを通して心を強くする方法を模索したり、
理性や感情といった心の変化を通して行動を変える方法を模索したりしてきましたが、

世界の隅っこの真ん中にいるような、
世界の底辺のテッペンにいるような、
そんな気持ちで暮らしている人には、これまでの方法ではきっと届かないこともある。

そうした人たちが今の自分から抜け出すためには、
自分一人の力ではどうあがいたって何も変えられない環境も存在するのではないでしょうか。
どうしたって自分以外の、外部からの助けが必要なのだと思います。

だとしたら。
彼ら/彼女らに気づき、微笑み、手を差し伸べ、背中をそっと抱きしめてあげられるのは、
やっぱり物理的にも距離の近い人たちだと思うんです。
(いわゆるネット住民と呼ばれるような方々においては、この限りではないかもしれませんが。)


もっと、生身の人間同士が触れ合って、ぬくぬくできるような。
誰かの場所ではなく、あなたの居場所をつくれるような。
そんな何かがまだこの世界に足りないのだとしたら、それをつくってみたい。


それは、例えば、


①公私のつながりをなだらかにする

今の住環境では、隣に誰が住んでいて何をしているのかもわからない。
だから、近くにいる誰かに気を配ろうと思っても、そもそも変化に気がつくことも難しい。

だとしたら、住環境における「公」と「私」のつながりをなだらかにすることで、
外から内を気遣えて、内は外とつながることで開放感や連帯感を手に入れられるような、
そんな方法はないでしょうか。


②公共物(ハード)を介してシビックプライドを醸成する

「私は◯◯に住んでいる」ということに関係があるのは、アクセスの良さや地価の高さばかり。
街との関係の稀薄さがそこに住む人との関係の希薄さを生み、孤立する人が増えています。

だとしたら、街のシンボルとなる公共物を行政のものではなく市民のものと捉え直すことで、
市民が自分たちで街を創る、という行為を通して市民同士が街に連帯感と誇りを持ち、
自らの居場所を獲得していくというような方法はないでしょうか。


③システム(ソフト)を通じてコミュニティを構築する

建築物といったハードをいじるにはコストがかさむし、
かといって、街のシンボルとなるような有形物の資産も見当たらない。

そんな場合でも、人と人とのつながりを再構築するコアアイデアと、
そのアイデアを実行して育てるコミュニティを整備することで、
住民たちが自分たちの生き甲斐と居場所を獲得していけるような方法はないでしょうか。



ざっくりですが、こうした3つの解決の方向性で、
自分は世界の隅っこや底辺にいると感じてしまう人にも、

他の人は、気づき、微笑み、手を差し伸べ、
背中をそっと抱きしめてあげられるのではないでしょうか。

当事者は、そんな風に感じてしまう前に、自分の居場所を見つけ、誇りを持ち、
生きているのも悪くないなと思えるような世界にしていけるのではないでしょうか。



次回、第3章の後編では、
上記3つの切り口からそれぞれ該当するような事例を紹介しつつ、
結論のようなものにつなげていけたら、と思います。

事例自体は既に目星はつけてあるため、
執筆にどれくらいの時間とやる気を要するかで更新のタイミングは前後しますが...
なるべく今週中、でなければ今月中には後編をアップしたいと思います。

また、続けてきたこの執筆連載も、
次回で一旦最後、というかたちをとりたいと思っています。


説明口調でブログに残すことで自分の考えを整理できたら、
と思って始めたこの企画ですが、
もし継続して読んで下さっている方が万が一いらっしゃいましたら。

最後までどうぞ宜しくお願い致します。


Thank you ^^.
後編。気持ちをくすぐって、「その気」にさせるデザイン。
$Hello, my dear.

さて、前編から中編にかけては、
わりとロジカルに「人はヒトに優しくなれるのか?」というテーマを扱ってきました。

では、もっとエモーショナルに、アイデアちっくに。
気持ちをくすぐって「その気」にさせるような、

「アイデンティティの問題にすり替えていく」
「行為者にも利益となるようにひと工夫する」


といった方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
(これは中編の「アイデンティティモデル」「結果モデル」に依拠)

あくまでテーマを「他人に優しくすることで利己的にもなれる環境づくり」とした上で、
以下では、方法別にざっくりとまとめてみたいと思います。



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利他的な行動を促すために、
相手を「その気」にさせる10の方法
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<アイデンティティの問題にすり替えていく>
① 背後に潜む物語を具体的にみせていく

もともと利他的な行動=利己的になるというアイデンティティを持ち合わせていない場合でも、
きちんとストーリーを語ることで好きになる可能性があります。

簡単にいくつか事例を紹介すると、まずは


MOTHERHOUSE
$Hello, my dear.
http://www.mother-house.jp/

もう何度かこのブログでも紹介させていただいてるので詳細な説明は省きますが、
このプロダクトの特徴はなんといっても、

「途上国から先進国に通用するバッグをつくる」
というミッションであり、その想いや生産者の顔も、購買者はみな知っています。
(これは普通の製品からしたら、驚くべきことです。)

ひとりの女性として、起業家として、社会起業家として。
その挑戦の物語を前面に押し出すことで様々な共感を集め、幅広い支持を集めています。



Smalla. D.A.(2007)らの研究①
$Hello, my dear.

このポイントに関しては、もう少し学術的にもみていきましょう。
カーネギーメロン大学のSmalla. D.A.らは、以下のような実験を行っています。

彼らはある部屋に被験者を集めて適当にアンケートに答えてもらい、
その謝礼として5ドルを手渡しました。

そしてそれと一緒に、2種類のメッセージから片方のみを渡すことで2グループつくり、
その反応の違いを測定します。(メッセージは以下)

1. 統計的に貧困を訴える
→「マラウィの食糧難は300万人の子どもに影響を与え、アンゴラでは国民の1/3にあたる400万人が難民や国内避難民となっています」など
2.具体的にひとりの少女の貧困を訴える
→「寄付金はすべてロキアという少女に贈られます。ロキアはアフリカのマリに住む7歳の少女であり、極貧生活のため深刻な飢えに脅かされています。皆様の寄付があれば、ロキアはもっと良い暮らしを送ることができます。」など

どちらか片方を読んで、受け取った5ドルのうち何ドルを寄付するか?という実験です。

結果は、
1の「抽象的で統計的な大義名分のための寄付」を読んだ人の寄付額は、平均1.17ドル
2の「具体的で個人的な支援のための寄付」を読んだ人の寄付額は、2倍以上の平均2.83ドル

でした。

個人的な物語を語った方が、
大きな問題を漠然と語るよりも人のココロを強く打つ、という実験結果です。


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これら2つの事例から、
背後に潜む物語を具体的にみせていくことで、
人の「私が支えたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<アイデンティティの問題にすり替えていく>
② 「なんか、そういう気分」を仕込む

次にご紹介する方法は、
「人に優しくしたい気分」を仕込んでおくという方法です。


赤ちゃんがうたた寝する動画


動画をご覧になっていかがでしたか?
僕は子どもが好きすぎるので、これをみたら悶えます(笑)

そしてこのあとにボランティアや寄付について考えるとしたら、
きっと動画を観る前より観た後の方が積極的でしょう。

24時間テレビなどで多くの寄付が集まる理由の一つは、これに起因していると思います。
(もちろん①の具体的背景をみせる方法も併用しているので、相乗効果。)

感動する話や、気持ちが豊かになる動画を見聞きしたとき、
人は自分が思った以上に優しくなれます


あらゆる政治家や軍部やエコノミストが毎朝こうした動画を観たら、
それだけで世界中はもっとよくなるのに。


Smalla. D.A.(2007)らの研究②
$Hello, my dear.

さて、またこの研究者たちです。
先程ご紹介した実験に引き続き、以下のような実験も行っています。

やり方はさっきと全く一緒で2グループに分けますが、
今回はメッセージを「統計的・抽象的」に統一します。

ですが、片方のグループには
「『赤ちゃん』という言葉を聞いて思い浮かべることは何ですか?」
という質問に答えてもらってから、寄付額を決めてもらいました。

そしてその結果、
やはり赤ちゃんについて考えたグループの方が、寄付額が多かったそうです。


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これらのことから、
「なんか、そういう気分」を仕込むことができる優しい何かをみせることで、
人の「ヒトに優しくしたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<アイデンティティの問題にすり替えていく>
③ 大きな物語の登場人物に仕立て上げる

社会の問題に立ち向かう、ということは、
多くの人に取っては非日常的な行為かもしれません。
そして時に、それは大きなドラマ性をもって演出されることがあります。


ホワイトバンド


以前このブログでも紹介したホワイトバンドでは、
「3秒に1人、世界のどこかで子どもが死んでいる」をテーマに
とてもセンセーショナルなプロモーションが行われました。

その詳しい考察は以前の記事(http://ameblo.jp/ryrientar/entry-10751319608.html)に譲るとして、
ここでは"大きな物語を演出する"という方法論に焦点を当てます。

問題とは、つまり物語でいうところの「悪役」です。
いまとなっては問題(コーズ)が溢れすぎてなかなか成立しにくいやり方かもしれませんが、
「長年倒せなかった悪役を倒せるかもしれない物語」は人を惹き付けるチカラがあります。

そしてそれを、ひとりではなく「みんなでなら倒せる」感を醸成する。
その証明として、わかりやすい"ホワイトバンド"が連帯感を強めていく

いくつかポイントはあるかと思いますが、
方法のひとつとして参考になるかと思います。


SNOWMEN AGAINST GLOBAL WARMING
$Hello, my dear.

これは2010年度のカンヌPR部門で金賞をとったキャンペーンですが、
温暖化反対を訴える象徴として、街中に雪だるまを作成。
その手には、「HELP US」のプラカード。
しかし気候は暑く、雪だるまは溶けていく...というキャンペーンでした。

温暖化という特性、雪だるまに人格を持たせるといった巧妙な設定が功を奏し、
3日間でなんと2万人の人が雪だるま作成に協力したそうです。

雪だるまというわかりやすさや、
雪だるまづくりという楽しく簡単な参加方法、そして
みんなで悪者に立ち向かうという物語の醸成がうまい方法でした。


World AIDS Day
$Hello, my dear.

簡単な例ですが、もういっこ。

このキャンペーンでは、
「foursquare」から、「#turnRED」というハッシュタグをつけてチェックインすると、
Google Mapにユーザ位置が赤く表示される仕組みを整えました。
これと「エイズ啓発のカラーとしての赤」という特性を併せて、
地図上をチェックインの真っ赤にすることでエイズを啓発していこうという取り組みでした。

普段通りのチェックインという行為が社会性を帯び
またみんなと協力して大きな問題へ立ち向かう感も醸成されるので、
効果的なキャンペーンだったのではないかと思います。


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これらのことから、
大きな物語への簡易的な参加を通して登場人物に仕立て上げることで、
人の「劇的な物語の主人公として生きてみたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<アイデンティティの問題にすり替えていく>
④ 問題の当事者に仕立て上げる

「その気」にさせる方法として、
中にはちょっと強引な方法もあります。
それは、半強制的に参加させることで、問題を目の前につきつけるという方法です。


注目を集めるOOH、アンビエント広告
$Hello, my dear.

$Hello, my dear.

一枚目は、本当に見たまんま。
温暖化で水中に埋もれてしまった人が、プラカードで問題を訴える広告。

二枚目は、強制的に問題に参加させる広告。
足の裏についたシールをみると、地雷が。

こうして強制的に目撃/参加させてしまうことが良いか悪いか、という視点はありますが、
関心を呼び惹き付ける、という方法としては確かに有効だと感じます。


Burma Political Prisoners Art and Photo Installation


ビルマでは、不当に逮捕されている有識者が大勢います。
その方々を解放するために行われたのが、こちらのキャンペーン。

「署名」というなかなか注目を集めにくいテーマですが、
"牢獄の柵を署名のペン"に置き換えることで、
署名する=ペンをとる=牢獄から有識者を解放することを伝える、
素晴らしいクリエイティブのキャンペーンでした。

思わずペンをとりたくなるし、
ペンをとった以上は当事者として見過ごせない
そんな意識が芽生えるのではないでしょうか。


WHAT A PERSON CAN MISS A MACHINE WILL FIND


こちらはポーランドの乳がん啓発キャンペーン。
アパレルショップのH&Mと提携して行ったのは、
「ブラジャーを買ったお客さんの買物袋に"防犯ブザー"を仕込む」というもの。

買物を終えたお客さんはそんなことも知らずお店を出るわけですから、
当然お店の入り口で引っかかってしまう。
そこで、「機械は見逃すことがないんです。乳がんもいっしょ。マンモグラフィー検査を受けてください」と、乳がん検診の大切さを教えるわけです。

強制的に参加させて当事者意識を持たせる取り組みとしては、うまいと思います。
また、この取り組み自体を体験するお客さんの数は限られますが、
取り組み自体が一種のCMとなってSNSで広まる効果もあると思います。


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これまでご紹介した事例から、
強制的にでも問題の当事者に仕立て上げることで、
人の「目撃/参加してしまったからには、見過ごせない!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<アイデンティティの問題にすり替えていく>
⑤ 意外なところに関連性を見出す

初めて会う人と共通点をみつけるとぐっと親近感が湧くように、
自分と遠い問題だと思ってたものと意外な共通点を発見することで、
無関心だった人の関与もぐっと高めることができるかもしれません。


Charity Pinky Ring
$Hello, my dear.
http://charitypinky.com/jp/know.html

この活動は、国境を越えて「共感する女の子の共通点」を、小指の指輪で結ぶというもの。

目を背けたくなるような事実を並べるのではなく、
女の子だったら国境関係なく誰でも悩むことを、「共感できる共通点」とする。
複数の女の子の悩みや想いを紹介して、それとリンクしたカラーの指輪をつくり、
購買=国境を越えたペアルックとして応援する。

共通点の発見を共感のトリガーとした、うまい関係性のつくり方だと思います。


Concert Milk
$Hello, my dear.



この事例は利他的行動が云々ではないですが、
とても大好き且つ重要な示唆を含むものなので、まずはぜひ動画をご覧下さい。

まんねりになっていまい、集客に悩むオーケストラ。
とった戦略は、なんと「牛に音楽を聴かせる」というもの。

オーケストラには興味なくても、牛乳は大好きな人々。
そこに、「良い音楽を聴いた牛の牛乳は、美味しいのでは?」という気づき。
そして実際に店頭で販売するという実行力。

素晴らしいキャンペーンだと思いますが、なかでも
自分のプロダクトには無関心でも、人々の大好きなものと関係性をつくることで関心事へ変える
という方法は非常に参考になると思います。


The Lottery of Life
$Hello, my dear.
http://thelotteryoflife.co.uk/

比較、という方法も思わぬところで関係性を発見させてくれます。

Save the Childrenのキャンペーンでは、
「どこに生まれるかはルーレットのように運次第」というタグラインのもと、
例えば「釣り竿を持つ少年は、生まれる場所が違えば銃を持っていたかもしれない」と訴えます。

全く関係のないと思っていたところに、
比較という方法を用いて関係性をもたせることができそうです。


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これらのことから、
意外なところに関連性を見出すことで、
人の「自分との関連性を発見すると、親近感が湧く!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<行為者にも利益となるようにひと工夫する>
⑥ 選択する新しい理由をつくってあげる

例えばミネラルウォーターをコンビ二の棚から選ぶとき、
そこに明確な基準は存在するでしょうか?
現在、消費財の多くに機能的な差はなく、ほとんどが同じものです。

だとしたらそこに「社会にイイコト」を付加することで、選んでもらう理由になるかもしれません。


1ℓfor10ℓ
$Hello, my dear.

言わずと知れた、ボルヴィックの1ℓfor10ℓ。
いわゆるコーズ・リレーテッド・マーケティングですが、
「社会にイイコト」を付加することで新たな選択基準をつくりました。


アサヒスーパードライ「うまい!を明日へ!」
$Hello, my dear.

スーパードライが現在実施しているのは、
売上げ本数に応じて自然環境や文化財を保護するというもの。

この手の例はあげたらキリがありませんが、
基本的な仕組みは1ℓfor10ℓと変わらないかと思います。


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これらのことから、
"ついでにできる社会にイイコト"という新しい選択理由をつくることで、
人の「どうせだったら社会にイイコトしたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<行為者にも利益となるようにひと工夫する>
⑦ 技術革新で、いいものをつくる

社会にイイ、だとかそうした要因は差し置いたとして、
純粋にひとつのプロダクトとしてよりよいものをつくるという視点もあります。

SOccket


SOccketは、ハーバード大の学生が発明した
「発電できるサッカーボール」です。

キックされたり、転がったりして生まれる衝撃をエネルギーに変換し、
15分間のサッカーで、小型LEDランプ3時間分の電力が充電されるのだとか。

普通のサッカーボールで遊ぶより、
SOccketで遊んだ方が絶対お得、ですよね?


Powernap
$Hello, my dear.
(動画)http://vimeo.com/23386015

WWFが提供するPowernapは、
個人用PCとモバイル端末とが連動する節電アプリです。

特にオフィスにおいて、PCの付けっぱなしという電力無駄遣いの課題があります。
これを無理なく削減できれば、個人としても自然環境としても、ハッピーですよね。

Powernapは、自分が離席したら自動的にPCがスリープ状態になり、
そしてさらに時間が経つと電源がオフになる、という仕組みを提供しています。
(もちろんBluetooth接続により、PCに近づけば電源はONに。)


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これらのことから、
技術革新によってきちんといいものをつくることで、
人の「やっぱりよりよいものを使いたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<行為者にも利益となるようにひと工夫する>
⑧ 行為自体を楽しくする

何か人に優しくしたり手を差し伸べたりする時、
どうしても「偽善」という言葉がつきまとったり、何か重い行動のように思えたりします。

そうではなくて、
楽しいんだからやっちゃえばいいじゃん」という発想と、それを実現させるデザイン。
それらをご紹介いたします。


面白い募金箱いろいろ


$Hello, my dear.

それぞれ詳しい説明はいらないくらいわかりやすいですが、

ひとつ目は、お金を入れると様々なギミックと共にお金の使われ方を教えてくれるデザイン。
ふたつ目は、コインを入れると水槽の水が溢れ、右脇の子どもの口に水が注がれるデザイン。

どちらも「募金をする」という行為自体が楽しく、
思わずやってみたくなる仕掛け
があります。


The Fun Theory

自動車メーカーであるVolkswargenは「The Fun Theory」と題して、
楽しければ人はイイコトをする」プロモーションを展開しています。


階段をピアノにすれば、エスカレーターはいらない。


ゴミ箱がめちゃくちゃ深ければ、面白がって人はゴミを捨てたがる。


ドアをくぐるたびにスーパーマリオのコインの音がすれば、積極的にドアを持つようになる。


とてもシンプルで、強力な方程式だと思います。
「楽しい」という誰もが求める快楽を付加する
という発想は、ひとつ参考になるのではないでしょうか。


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これらのことから、
利他的な行為そのものを楽しくすることで、
人の「楽しそうなものは体験したい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<行為者にも利益となるようにひと工夫する>
⑨ 自尊心をくすぐる

他人に対してイイコトをする、ということは、
ときに行為者の誇りを刺激して、自尊心をくすぐることにもなります。


Levi'sWater
$Hello, my dear.

節水の促進という課題を抱えたLevi'sが実施したのは、
アプリを使って節水をゲーミフィケーションするキャンペーン。

「ウォータータンクゲーム」ではユーザーは14のミッションを与えられ、それに挑戦。
一つ一つをクリアすることによって、Levi'sの供給する水=寄付金額が増加します。

はじめのミッションは「Facebookでいいねを押す」など簡単なものですが、
次第に「現金を寄付」「友人を招待」など、難易度が高くなっていきます。

"ゲームをクリアしてレベルアップする"という仕組みは、
人の自尊心をくすぐるのではないでしょうか。


寄付からはじまるオーケストラの大演奏


街頭で演奏する、たったひとりのチェリスト。
ひとりの少女が募金をいれると、ひとり、またひとりと演奏者が加わり、
最終的には大演奏会となります。

とても素敵なサプライズだと思いますが、
自分の小さな募金が大きな幸福を呼び込む、という期待をはるかに超える演出は、
「特別な行為をしたあなたのおかげ」を強調
して寄付側の自尊心をくすぐります。


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これらのことから、
自尊心をくすぐることで、
人の「褒められたり認められたりしたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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<行為者にも利益となるようにひと工夫する>
⑩ 社会にイイコト=自分にイイコトを発見する

最後は、利他=利己を発見するその最たる例として、
「ペイフォワード」を例に挙げたいと思います。


ペイフォワード
$Hello, my dear.

映画「ペイフォワード」をご覧の方はご存知かと思いますが、
ペイフォワードとは、「恩を返すのではなく、次へ渡す」という行為です。
日本語でいうと「恩送り」であり、前編の冒頭で取り上げた事例がまさにそうです。

受け取った恩をもらった人に返しているだけでは、
人とのつながりの輪は閉じてしまい、それ以上広がることはありません。

だから、そうではなくて、受けた恩を他の人に返していく。
そうすることで、結局はまた自分に、誰かの恩が贈られる。
また、自分の行為が他人に広がることは、ちょっとした自尊心をくすぐる効果もあります。

こうやって、ひょっとしたら素敵な正の循環が起こるかもしれません。


日本だと、あまり有名ではない(?)ですが、
「サンタのよめ」という取り組みは素敵です。
$Hello, my dear.
(紹介記事→ http://greenz.jp/2012/03/14/santanoyome/

画像は、「図書館の本に、素敵な言葉のメモを挟んで残す」という取り組み。

正直質はまちまちだと思いましたが、
「サンタのよめ」というコンセプトとか、楽しんでやっている活動風景とか、
なんかいいなーと思っちゃいました。

こういうの、もっと増えれば良いのに。


先輩が後輩へおごる文化
$Hello, my dear.

もしペイフォワードを特別で珍しい取り組み、と思ったのであれば、
それはきっと気づいていないだけ。

誰しも一度は、「先輩のおごり」を体験したことがあるのではないでしょうか。

これ、やられるとむちゃくちゃかっこよくて。
でもお返しは、「自分の後輩にも同じことをやってあげる」ことだったりして。

とても素敵で、素晴らしい文化だと思います。


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これらのことから、
社会にイイコト=自分にイイコトを発見してもらうことで、
人の「自分にも他人にもイイコトはぜひやりたい!」煩悩を刺激して利他的な行動を促すことができるのかもしれません。

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さて、随分と長くなってしまいましたが、
僕が考える『利他的な行動を促すために、相手を「その気」にさせる10の方法』
をご紹介させていただきました。

根拠のない帰納法的な方法論の構築ですので、
もっと色んな角度から方法論を考えてご紹介することも可能ですが...
ちょっとキリがないので、この先はご覧の皆様にお譲りいたします。


なかでも僕は、最後のペイフォワードがとても素晴らしいアイデアだと思っています。

僕らは派手な物語や極端に大きい問題を求め、
近くの日本の問題を差し置いてでも、海外の貧困といった問題へ関心を持ちます。

もちろん悪いことではないですし、
ココロが動いているのだから否定しようもありませんが...

自分という点と、遠い海外の誰かの点を結ぶ。
しかしこれには必ずモレが存在し、結べない点が孤立していくと思います。

そうではなくて、近くの点同士を確実に結んでいく。
それを拡大していき、そのネットワークを張り巡らす。
そしてその方法論を、別の国や地域に輸出していく。

この方法の方が、本当に問題を解決したいのであれば確実な気がします。


このブログでも再三強調している通り、
困難な状況に置かれている人がその状況から脱出するには、
外部からの刺激・支援がないと厳しいと思います。

確実に結んでいくデザインが必要で、
それはたとえば進んで他人に関わり優しくしようとする、
ペイフォワードのようなアイデアが必要なのではないでしょうか。


その実現方法は、
「ペイフォワード×②背後に潜む物語を具体的にみせていく=映画コンテンツ」
かもしれませんし、
「ペイフォワード×⑨自尊心をくすぐる="良い行動をリツイート"できるアプリ」
かもしれません。

良い言葉がリツイートされるなら、良い行動だってリツイートされていいはずです。

具体的な仕組みまで落とすアイデアを未だ見つけられていませんが、
これってうまく実現できないでしょうか??

この実現は、小さくて、ちょっと大きな僕の目標の一つです。



終わりに。実は存在する、3つめのデザイン。
$Hello, my dear.

これまで、人を動かすそもそもの方法論として

① お願いして、「その気」にさせる
② 気持ちをくすぐって、「その気」にさせる


をご紹介してきました。
ですが、実はもうひとつあると思っていて。

それは、③「生活環境をデザインする」という視点。

僕らの行動は、無意識に生活環境に大きな影響を受けています。
道路の端を歩くのは、真ん中に車道があるから。
隣の人の様子を気に掛けないのは、家同士が壁で隔てられているから。

でも、
車道が端なら歩道は真ん中に敷かれ、道のど真ん中を歩くことが普通になります。
家同士がスダレのようなもので仕切られていたら、隣の家の人の様子を気に掛けます。

無意識的に、僕らの行動は生活環境に影響を受けているのです。


だとしたら、
人に優しくしたくなるような生活環境はないのだろうか?

たとえば隣の家の人が困って悩んでいても、
スダレのようなもので仕切られていたら気にかけるかもしれない。

たとえば子どもの目線でドアスコープが設置されていれば、
子どもは親の代わりに率先してドアでお客さんの応対をするかもしれない。

たとえば家の近くに公園があるだけで子ども同士が集まって遊び、
友達が多くて運動が得意な、協調性のある子どもが増えるかもしれない。


あまりにも強力な、
しかしあまり注目の浴びていない観点・分野なのではないでしょうか。

「その気」にさせるデザインのほか、
僕がチャレンジしたい、もうひとつのビックテーマです。

次回、最終回になるかどうかは書いてみないとわかりませんが、
「生活環境をデザインする」という観点から利他行動を促進できるか、
考察を試みたいと思います。


thank you^^.
さて、中編です。


前編では、
「なぜ?」という観点から利他的行動を生む要因を考察していきました。

しかし、原因と解決策は異なります。
原因だけを追い求めて必要以上に深堀りすることは、必ずしも解決策に結びつきません。
深堀りを進めると問題が大きくなりすぎて、それだけ大きな解決策が必要になってしまいます。


そうではなくて、
きちんと「なぜ?」から「では、どうやって?」に切り返す。

ですので今回は、
「他人に優しくすることで利己的にもなれる環境づくり」を実現するアイデアについて、
考察していきたいと思います。



人は、どうやったら動くのか?
$Hello, my dear.

僕らが誰かに動いてほしい、と思った時、
ざっくりいって

① 強制する、洗脳する
② お願いして、「その気」にさせる
③ 気持ちをくすぐって、「その気」にさせる


のいずれかだと思います。

しかし、
あくまでもテーマは「他人に優しくすることで利己的にもなれる環境づくり」ですし、
ちょっと①について考察しても仕方がないですよね。

ですので、あらためて。
この記事では大きく分けて、

① お願いして、「その気」にさせる
② 気持ちをくすぐって、「その気」にさせる


の2つの方法論について、
いかに利他=利己を成立させるかという観点を交えながら考えていきたいと思います。


ですので、特に

①では「中編」として、論理的考察を
②では「後編」として、アイデア的考察を

展開していきたいと思っています。

(そのため、「小難しいことはいいから具体的なアイデアみてーよ」という方は、
 後編の記事をご覧いただくことを推奨いたします。。)


なお、ちなみにですが、
人の選択・意思決定には大きく2つの基本モデルが存在するといわれています。

それは「結果モデル」「アイデンティティモデル」です。

「結果モデル」とは、
選択肢の費用と便益を評価して、満足度が最大になる選択行動を行う」というもので、
つまり合理的に"得か損か"を比べて得だと判断した場合に行動に移します。

一方、「アイデンティティモデル」とは、
その選択・行動が"自分に相応しい"と判断した場合に行動に移す」というもので、
決定を下す際に、以下の3つの疑問を(無意識的に)投げかけて判断しています。

・自分はどんな人か?
・自分はどのような状況におかれているか?
・自分と同じ状況におかれている人ならどう行動するか?

そして、気持ち的に"動いた方が自分らしい!(動きたい!)"と感じれば、行動に移します。


人に動いてもらう側にとっては、
お願いしたり、気持ちをくすぐったりして「その気」にさせますが、

それは結局、動く側にとっては、
合理的に得か、気持ち的に得か。
つまり、利己的になりうるかどうか。

ということになります。
この点を留意しながら、以下をご覧いただければと思います。



中編。お願いして、「その気」にさせるデザイン。
$Hello, my dear.

ではまず、純粋に「お願いする」という方法から考察していきます。

行動経済学の知見から考えると、おそらく
「市場規範」「社会規範」という概念が参考になるかと思います。

「市場規範」とは、
ペイとリターンの観点からいうと、自分の得する行動ができているか
を判断軸にするということです。

一方、「社会規範」とは、
恩や情、交流関係といった観点からいうと、自分は行動したほうがいいか
を判断軸にするということです。


ん、これどっかでみたぞ...というかたは、ご明察。
先程述べた「結果モデル」と「アイデンティティモデル」にそっくりですね。

この「規範」という概念を用いた場合、
「お願いする」という行動にどのような示唆が得られるのかをみていきたいと思います。


市場規範 vs. 社会規範
$Hello, my dear.

ある大学で、以下のような実験が行われました。
ぜひ、「自分だったらどうだろう?」という視点でご覧下さい。

ある学生グループが友達に対して、
"デスクトップ上に散らばった図形を、制限時間以内に何個ゴミ箱に入れられるか"という、
生産性も何もない作業をお願いしました。

その際、参加してもらう条件として、

① 5セントを渡してやってもらった
② 50セントを渡してやってもらった
③ 何も渡さずお願いしてやってもらった

の3つに場合分けをします。

さて、その結果、
どの条件が一番友達を働かせることになったでしょう?


正解は、

① 5セントを渡してやってもらった    → 159こ
② 50セントを渡してやってもらった   → 101こ
③ 何も渡さずお願いしてやってもらった  → 168こ

でした。

つまり、
"人はお金より信条や恩情のためのほうが熱心に働く"ということです。

なぜこういった結果になったのでしょうか。
理由はシンプルで、

無料でお願いされると「こいつのためなら」と社会規範が適用されますが、
お金が発生した途端、「俺の労働の対価はこんなもんか」と市場規範が適用されてしまいます

つまり、ちょっとのお金やそこらなんかと比べるよりも、
「あなた」という存在のほうがよっぽど価値があり、動こうと人は思うということです。


よく僕の周りにも、
「1000円のギフト券をあげるから、このモニターやってください><」とか、
「ジュース一本あげるから、あれとこれやって」とか、
そういうお願いの仕方をしてしまう友達がいますが、

よく考えれば、それはとてももったいないことです。

何もくれなくてもあなたのお願いならやろうかなと思うのに、
確かにお金を引き合いに出された途端、
「お金に釣られてるって思われたくないなー」とか、
「こんだけやって、俺の労働の対価はこんなもんか」とか、
そういった別の不利な思考が働いてしまいます。

あなたや、あなたの周りを振り返ってみて、
同じようなもったいないことをしてしまっている人はいるのではないでしょうか。


そうではなくて、純粋にひとりの友達としてお願いしてみて、
やってくれた人にはサプライズで何かあげるとか、
そっちのほうが断然人は動いてくれるし、また喜ばれると思います(ジュース一本でも嬉しい)。

参考にしてみてはいかがでしょうか。

===
【応用編】"無料"は利他的思考をも促進する

さらに、以下のような実験も行われています。

とある大学内で、キャラメルを配りました。
例によって条件を分けていて、
今度は結果も同時に記載してしまいます。

① 1個1セントで配る → 1時間に58人が立ち寄った
② 無料で配る    → 1時間に207人が立ち寄った

しかし、これはある意味当然ですよね。
無料の方が欲しい。

ただし、ここで注意していただきたいのが、
一人当たりの持っていく個数が有料の方が多いということです。

① 1個1セントで配る →1時間に58人が立ち寄った → 平均3.5個
② 無料で配る    →1時間に207人が立ち寄った → 平均1.1個

この結果からいえるのは、
社会規範が働く環境下で無料を実施すると、自己利益より他者の利益を気にし始める
ということではないでしょうか。

翻せば、お金を払うと
「払ったんだからいいじゃない」という利己的な思考が働くということです。

一方で、無料のシェアの場合は社会規範、
つまり他の人への思いやりが適用されることになります。

公の共有物にしてしまうことで、社会規範を適用させる、
という方法もあるのかもしれません。
===


社会規範の上手じゃない使い方
$Hello, my dear.

また、その一方で。
よく駅前で寄付を呼びかける人たちが訴えるのは、この社会規範ですね。

「◯◯な子たちが困っています。寄付をよろしくお願いいたします。」

大前提として、
こうした取り組みが行われるのは仕方のないことだと思います。

富や環境、社会的資源の分配が平等ではなく、
結果街頭でもこうした呼びかけをしなければ、失われてしまうものがある。
これは事実です。

ただし、こうした呼びかけに対して、
共感し、行動に移せる人は限られていることも事実です。
つまり、そうした社会規範、アイデンティティを持つ人は多くない

そうした中で、それでも社会規範に訴えかけるのは、
呼びかけられる人には罪悪感を芽生えさせたり、苛立ちを覚えさせたり、
呼びかける人には失望感や絶望感を味あわせたり、
負の側面があることもまた事実です。


もともとないアイデンティティを執拗に訴えるのではなくて、

「アイデンティティの問題にすり替えていく」
「行為者にも利益となるようにひと工夫する」


といったやり方はできないでしょうか?

それがまさに、後編で述べていく
気持ちをくすぐって、「その気」にさせる方法だと思います。



後編では、具体的なアイデアをベースに、
"利他的な行動を促すために、相手を「その気」にさせるデザイン"をご紹介したいと思います。

興味がおありでしたら、ぜひご覧下さい。


thank you^^.