日本バレエ協会 関東支部神奈川ブロック『ドン・キホーテ』
樋口ゆりさんのキトリ、浅田良和さんのバジルの、元Kバレエコンビがみせる(魅せる)舞台は、とても素晴らしいものでした。観に行って本当に良かったです。今年のバレエ始めにはとても良い舞台を拝見できたと、大満足で家に帰りました。
(2013年1月13日(日)16時開演 @神奈川県民ホール)
ロビーでは、ヴィユウジャーニンさんや副智美さん、やはりお見かけしました。でも直接に感動を伝えることはできなかったです、迷ったのだけれどやはりそれはできず・・・ 第一にヴィユウジャーニンさん、ステージで観る印象よりもでかいし!
当方、風邪気味でもあり感動を胸に秘めて、大人しく帰りました。
<Contenst>
「何が良かったか?」
(1)第一 浅田さんのバジル
(2)第ニ 樋口さんのキトリ
(3)第三 指揮者とオーケストラ
(4)第四 ドン・キホーテにやさしい演出
(5)その他雑感も含めて
(1)良かったことの第一は、もちろん浅田さんのバジル。
そうでしたか、バジルの全幕主演は今回が初めてですか。ファンとしては嬉しいところに立ち会えました。浅田さんのリズム感の良さや美しい手・足に魅了されつつ、バジルが幕を追う毎に大人びてスケールが大きくなり、堂々としてくる変化に気づきました。ユニークなバジルだと思いました。バリシニコフ同様に酒場で杯の踊りも観せてくれたのは、嬉しいサプライズです。
終幕の堂々たるGPDの良さは言うに及ばず。感動をバレエ的な表現で伝える言葉をボクは持ち合わせていないもので上手く書けないのですが、浅田さんのオリジナルの振りもあったのではないでしょうか?最後の回転の時に手を上下させながら回ったところには、同じ人間が目の前でしていることにもかかわらず、幻惑され、魂をもっていかれそうな不思議な気分になりました。そうそう、回転技で魔法にかかったようになる感じは、半年前に同じ会場でKバレエの熊川さんのアリを観て以来。またもや浅田マジックにかかりましたが、同じ様な「被害者」「中毒患者」が新たに会場で発生したのではないでしょうか?是非ともバジルの再演を、お願い致します!
なお、バジルがキトリを中空高く支える場面では、バジルは片腕でなく両腕で支え挙げていました。また第一幕のバジルのバリエーションでは、キトリの友人二人がバジルの早間の動きにシンクロナイズして会場を湧かせるところなのですが、残念ながら友人たちが早い動きに付いてくることが出来ず、バジルも引き立ち損なったのは惜しかったです。
(2)良かったことの第二点は、樋口ゆりさんのキトリ。
樋口さんのこともKバレエにいらした時からファンでしたので、久しぶりに拝見して、以前と変わることなく、なんともゆったりとした樋口さんらしいキトリが観られて感激しました。一つひとつの振りに余裕すら感じられ、お顔の表情にスペインの町娘らしいおちゃめなところがありながらも、終幕のGPDが終わったら、満場のお客さんの拍手に感極まった表情をされていたのには、こちらの胸にもグッとくるものがありました。浅田さんとのパートナーシップも、大変に良いものとお見受けしました。
(3)良かったことの三点目は指揮者とオーケストラ。
俊友会管弦楽団は初めて聴きましたが、アマチュアでもしっかりとした演奏を聞かせてくれますね。アマチュアと侮って、誠に失礼をいたしました。特に弦楽器の、豊かでなめらかな音が良かったです。管楽器の音が飛び出したりくぐもったことなどは、御愛嬌の範囲です。
指揮者の富田実里さんは、今回がバレエ指揮におけるデビューとのことですが、的確に音楽をリードされていたと思います。オーケストラから良い音を引き出したのも、良い指揮者があってのことでしょう。客席から指揮する後ろ姿をみていて、誠実な指揮ぶりに井田勝大さんを連想しました。バレエ界に、また良い指揮者が加わりましたね。デビューに立ち会えたことが、先々、自慢の種になりそうです。
今回、カーテンコールでは浅田さんが指揮者をお迎えにいきましたが、
「そうか、指揮者が女性の時は男性ダンサーがお迎えにいくんだ!」
と、すぐに腑に落ちました。
(4)最後に書き留めておきたいことは、ドン・キホーテに対してとても思いやりがある演出であったこと。
原作の『ドン・キホーテ』を読むと、彼の年齢については、
「われらの郷士は、やがて50歳にならんとしていた」
と紹介されています。当時と今では年齢に対して抱くイメージは違うかとは思いますが、それにしても風車に無闇に突入させられたり、森の精たちのおもちゃになりっぱなしの徘徊老人みたいなドン・キホーテでは、かわいそうだと思うのです。彼の年齢はボクと大差ないので、なおのこと同情しますし身につまされます。
熊川さんの演出でもこの点は考慮されていて、ドン・キホーテに思いやりがあると思うのですが、今回のは特に念入りでした。
演出の方(横瀬三朗さん)がプログラムに、
「ドン・キホーテの人間像は、純粋に夢と希望を持ち、周囲の声に惑わされることなく勇気と尊厳を持って人生を貫く、それは現代社会にも求められている人間像ではないかと私は思っています」
と書かれていますが、これを読んでとても嬉しく感じました。そうです、流行等に惑わされずにあるべきものを求める「求道者」のようなドン・キホーテ像なのです。
加えて理想の女性像とするドルネシア姫を探す姿には、理想の踊りを求めて身を削ぐ様な思いをしながら技術を磨く、ダンサーの皆さん一人ひとりの姿もダブって見えると思いました。
ちなみに今回の場割は次の通りで、バジルとキトリは、早くも第二幕第一場で狂言自殺を経て、親から結婚の了解を取り付けてしまいます。
プロローグ ドン・キホーテの書斎
第一幕 バルセロナの町の広場
第二幕第一場 居酒屋
第二幕第二場 町外れの風車がゆっくり回っている小高い丘
第二幕第三場 ドン・キホーテが夢を見る森の中
第三幕第一場 貴族達が闊歩する田園
第三幕第二場 公爵の館
エピローグ 道行き
終幕幕切れには、紗幕の奥にバジルやキトリをはじめとする町の人々や貴族がいつもの陽気な音楽にのって踊っているところを見せ、その手前をドン・キホーテとサンチョ・パンサが下手から上手に向かって歩いていきます。つまり次の旅に出る姿を見せているのですが、「道行き」と題されているこの場面が美しく、かつ余韻も感じさせてくれて印象に残りました。なんだか温かい気持ちで家に帰ることができました。
(5)その他雑感も含めて
小林洋壱さん(エスパーだ)、マシモ・アクリさん(ガマーシュ)、今勇也さん(トレアドール、ホレロ)、富川祐樹さん(トレアドール)、春野雅彦さん(トレアドール)等のKバレエ以外の有名ダンサーの踊りを堪能できたのも、お正月らしい「眼福」でした。
第一幕でキトリとバジルが早間で踊りだす前に。バジルはギターを後ろのダンサーに手渡しで渡しましたが、キトリは扇を後ろに投げたところ、ぽとりと落ちました。落ちてからコールドが拾っていましたが、やはりここは落とさずに誰かがキャッチして欲しいところです。
また同じく第一幕で、どこかでチャラチャラとタンバリンの金属部分の音が聞こえているのが気になりました。コールドの男の子たちを見たところ、音が出ないようにタンバリンの金属部分を腕で抱えるように持っている子もいれば、そうでない子もいる。今まで気づいたこともありませんが、このあたりのたしなみの様なことも、日頃から同じ団で踊ったり舞台に立ったりしていると身につくものなのだろうなと思いました。
他にも、キューピットが1ダースも出てくるような、嬉しかったり素敵な場面は多かったです。例えば、森の場面は40人以上の森の精やキューピットたちが、乱れることなくドン・キホーテを惑わして圧巻でした。
ボクは、今日は本格的に風邪をひいてしまったのですが、浅田さんは、昨日の熱演をものともせずに、今日は始発で仙台に遠征の由。また彼の地でも浅田マジックにかかる人が出ることを祈るとともに、室内にいても寒さを感じるようなお天気ですから充分に御自愛頂きたいと思います。
というよりも、今日のこの雪で、東京には予定通りにお戻りになれるのでしょうか?
以 上