超心理的青春 その15 | 涼香の小説

超心理的青春 その15

超心理的青春 第三章 その1


【那実の角】



 僕は何かおかしな夢を見ているんだろうか。
 そうとしか考えられない。一般の高校生が、訳のわからない薬剤を投与され、そのお陰で超能力を身につけ国を守ってくれだとさ。僕らが戦隊ヒーローっていうのか? 本当に馬鹿げている。どういう社会の仕組みでそういう組織が生まれたのかイマイチわからないし、なぜ、僕らみたいな少年少女に、そのような危険な真似をさせるのかもわからない。別に自衛隊か何かそういう組織の大人達に任せればいいものなのに、全く答えが見えてこない。
 それは今、この状況にしてもだ。

 照りつける朝日の中、僕と那美はバス停の前にいた。
 こんな快晴は久しぶりだろう、完璧な行楽日和だ・・・そう、行楽。
 朝早く那美にたたき起こされ、寝ぼけた体に担がされたバトミントンセットとビニールシート2枚。 
 「沖田先生と話が出来るって言われたから来たのにこれはどういうことやねん」
  昨日の頭痛もまだ治っていないというのに、何故休日の朝7時に起きてピクニックに行かなきゃならないんだ。せっかくの休日くらい寝かせろって言うんだ、せめて10時までは。
 「いっつも授業中寝てるやないか、何を偉そうなこと言うてんねん」確かに那美の言うとおり、僕は授業の7割は寝て過ごしてる、けど、そんなことはどうでもいいんだよ。問題はそう・・・
 「ピクニックってなんやねん?てか僕とお前だけなんか?何が悲しくて兄弟でそんなことしなあかんねん」
 「ホンマに誰も来えへんなぁ。集合の8時までもう5分前やで」
 僕の話しを聞き流すように那美が言ってすぐ、東方からものすごい勢いで走ってくる人が見えた。朝日のせいで姿かたちをよく確認できないけれど、その横を走る小動物を見ればわかることだ。
 「やっと来たか、意外と時間にルーズなんやな」と那実がどうでもいいことを言う。
 「黒猫も一緒て、やっぱり変な女や」と僕もどうでもいいことを言う。
 それにしても、何故黒猫も一緒に来てるんだろう?
 天照は僕らの前まで来て急ブレーキをかけた。徐々にスピードを落とせばそんな忙しなく止まらなくて済むのに。
 彼女はあれだけのスピードで走ってきたのに息も切らしていないし、汗もかいていない。流石と言うべきだろう、黒猫ですら息が上がってるのに、恐るべし体力だなこいつは。
 「すまない、少し起きるのが遅れたから遅刻してしまった。いや、ギリギリセーフか?」
 「残念ながら、ギリアウトやで」と僕が言うと、天照は肩を落とし、もう1度僕らに謝罪をした。
 すると微笑みながら那実が天照に尋ねた。「なんで遅れたんや」
 「だから言ったじゃない。寝坊だって」そう言って那実を凄い剣幕で睨んだ。どうやら天照は『僕ら』に謝罪しているわけでなく、僕に謝罪していたようだ。
 「寝坊?」そう言うと那実は不適に笑う。天照も不安になったのか、少し恐れるような顔になる、けれどそれでも那実を睨み続ける。「何よその顔は」
 「天照沙希、その長い髪に付いた物はなんや?」今にも噴出しそう言った。
 それを聞いて僕も天照の髪を見ると、木の葉が付いている。さらに服を見てみると、木の枝が引っ付いていた。続けて那実が訊ねる。
 「その黒猫はどうしたんや、何でついてきとんねん」
 「たまたま公園を通りかかったら付いてきたのよ」
 そりゃそうだろ、わざわざ公園で飼っている猫をピクニックに連れて行くような女じゃないだろう、この女は。けど・・・。
 「それやったら何で木の葉や木の枝が天照沙希の体についてんねん、ゴミをひきつける能力でもあるんか? そうやったら人間掃除機とでも呼ばしてもらおか」
 「私をからかってるの? それ以上言うと痛い目合うわよ」冗談と思って、2人の会話を聞いていたが、天照の表情を見ると、その考えが甘かったと気付かされる。衝突間近だ。
 けど、想像してみると偉く滑稽だ。わざわざ公園に寄って、体に枝やなんやら付くほど、黒猫を探し、そのせいで遅刻するなんて。子供みたいにかわいい一面もあるんだな。本当にガキっぽい、けどそのガキっぽさには共感が持てる。
 天照の弱点を握って上機嫌にヘラヘラしている那実の電話が鳴った。
 「もしもし、伊佐やけど・・・あっそうなん? OKわかった、ほなまた」
 一体誰からだろう、というかこのピクニックに誰を誘ったのか気になる。
 「コノカは後から来るって、ほんで沖田先生も一緒にくるみたい」
 ってことはこの3人で、しばらく過ごさなくてはいけないのか?それは気まずいぞ、「何時くらいに先生らは来るん?」
 「現地に行っといて言われたからなぁ、でもあの2人弁当係りやから昼までには来るやろ」
 それじゃ、長くて4時間はこの3人でいなきゃならないのか。一気に時間の流れが、飴を溶とすように遅く感じる。
 「あれ? まだ来てないんじゃない」
 「せやで、先輩のクセに遅刻やて、情けない」慌てて僕は聞き返す。
 「まだ誰か来るの?」一体誰なんだろう?先輩?何の先輩なんだ?
 「俺ら1年の教育係みたいな人やな、あの人のことを知る為に呼んだんや」
 口を尖らせて、天照は「無理に決まってる」と断定の言葉を吐いた。
 「電話してみるわ、まだ寝てるかもしれんし」そう言って、那実は僕らより5歩くらい離れて
いった。 
 ふと、天照を見ると、スカスカのリュックを背負っていた。やっぱり那実の言うことは間違ってなかったんだな。そう思うと、あの天照の態度がやけに可笑しく見えて、笑いをこらえることが出来なかった。
 「電話中やぞだまっとけ」
 「私を見て笑ってるの? ちょっと失礼すぎるでしょ」そんなこと言われたって、つぼに入ったんだから仕方ないだろ、人の感性をくすぐるものがどこにあるのかわかったもんじゃないよ本当に、それより、「どこまでピクニック行くか聞いてる?」
 あきれた表情の天照が猫を抱き上げながら言う。
 「目的地も聞かされずによくピクニックに行こうと思ったわね」
 だから、僕はピクニックに行くことを知らなかったんだよ。
 「あなたはそこまでバカじゃないと思ってたけど・・・。行く場所はあなたがよくご存知の場所よ」
 って遠まわししないで言ってくれよ、いちいち回りくどいやつだな。
 「少しは考えるってことを知らないのかしら、行く場所は・・・」と唾を飲む天照。
 引っ張りすぎだろ?早く言えよ。
 「大仙公園よ」
 あぁ、あそこね・・・って遠すぎだろ!!てか地元じゃないか!一体、那実は何を考えてるんだ。
 あいつの思考を理解することは特殊相対性理論を理解するよりも難しいのかもしれない。