空が暗い間 第27話
携帯電話のアラームで始まるいつも通りの朝。
今日から三学期が始まる。
この学期が終わるともう最終学年になるのかと思うと、ずいぶん価値があるかもしれない、と考えたのは起きて二秒の寝ぼけた脳内。
やっぱり起きたばかりだとろくな事思いつかないね。学校に行く価値なんてあるわけない。
聞く耳持たずで、聞く振りをしてやり過ごす授業。
友達と雑談タイムの最中、嫌いな子が入って来て、愛想笑いでやり過ごす休み時間。
また一緒のおかずか……と、嘆きながらも美味しいと感じ、切なさでやり過ごす昼食。
目に付く所だけきれいにして、あとは知らない振りでやり過ごす掃除時間。
そんな普通な高校生活。
それを後、何度繰り返せばいいのだろうか。
別に学校が楽しくない事もない。でも面白いわけでもない。
それが普通。
それが自分の望んだ事。
またくだらない事考えてるよ、私。そんな事考えてる場合じゃないや。
携帯電話の時計を見ると、七時五分と表示されている。あと一時間もすればこの家を出なくちゃいけない。
あー、絶対嫌。いい具合に温かい布団にくるまってゴロゴロしていたいよ。
さすがに雪は降らないけど、なかなかの寒さだって天気予報で言ってたし……。あと一五分くらいゴロゴロしていても大丈夫だよね。
私は頭まで布団をかぶって、もう一眠りしようと携帯電話のアラームの時間を変更した。
って、ダメだよ私。今気付いたけど今日も合唱の朝練があるんだよね。先週は冬休みだから九時からだったけど、今日は授業があるから、HRの三〇分前から練習するとか言ってたような気がする。というか間違いなく言ってた。
だとすると、学校まで一五分で、HRの三〇分前と言えば八時。計算すると七時四五分までには家を出なくちゃ行けない。ということは学校の準備にかけれる時間は四〇分。
こんな悠長に時間の計算してる場合じゃない。早く準備しなきゃ。
そう思うと、さっきまで体全体を梅雨時の湿気のように被っていた眠気が一気に取れて、脳内に晴れ間が広がった。
そのおかげで、予定よりも早く学校の準備を終えれて、私は手早く朝食を済まそうと、冷蔵庫から牛乳を取り出し、皿に盛っているコーンフレークに勢いよくかけた。
テレビを付けて、今日の占いはどうだろうと思っていると、あくびをしながら、おはようと言って美那が現れた。
「今日は早いね。また何か用事?」
「大学も今日から始まるんだよ。本当面倒くさい。あっ、あたしにもコーンフレークくれよ」
私の断りを待たないで、美那は私の更に手をつけた。
「だめよ。私も時間に余裕があるわけじゃないんだから」
「んだよ、ケチー」
机の上にコーンフレークと牛乳が置いてあるんだから、あとは皿とスプーンを取れば済む話しじゃない。面倒がらずにやりなよ。……あっ、だからケチなのか。
「確か美那。月曜って授業昼までだよね。私も始業式だから昼で終わるから何か作ってあげようか? それとも美那が好きな牛丼がいい?」
たまには姉にも恩返ししないとね。いつも服やら何やら借りてるんだし。
「いや、あたしはいいよ。恵那が作る料理って見た目は普通だけど、微妙に不味くてムカつくんだよね。あと牛丼はあんたが食べたいだけでしょ、女一人で行きにくいからって口実つけようとしてんじゃないわよ。昼飯はいいわ。今日は寄る所があるから夕方まで返らないし」
食べれないとだけ言えばいいのに、どうしてこう人を落ち込ませる、余計な事言うのかな?
「どこ行くの?」
「友達の家よ」
絶対嘘だ。さっきまで目を合わせて話してたのに、答えたときだけ合わせなかったもん。まあいいか。それくらいの嘘なら。
「ふーん。じゃあ私そろそろ行くね」
「早くない? まだ四〇分だよ」
「合唱の練習。朝練だってさ」
私はシンクに皿を置きながら答えた。
洗うのは帰って来てからでいいや、お母さんは一五時まで帰ってこないし。
私は椅子にかけていたカバンを持って、年始のバーゲンで買った黒いロングマフラーを巻いて、リビングから離れた。
すると美那が、皿をスプーンで混ぜながら言った。
「合唱ね……。白井には気をつけなさいよ」
まさか美那の口から白井くんの名前が出てくるとは思ってなかったから、ちょっとビックリしたけど、わけなんて聞いている時間がない。
私は意味わかんない、とだけ言って寒く、凛とした空気が漂う冬の朝に向かって足を踏み出した。
学校の自転車置き場に着いたのは集合5分前で、私は少し慌てて教室に向かう。
教室に着くと、やけに今日は騒がしかった。
新学期になって久しぶりに会う人がいたからかな? と思ったけれど、先週の平日は合唱の練習をやっていたからそんな事はないはずだ。だって一度も来ていないのは白井くんだけだもん。
とりあえず自分の机にカバンをかけて、練習が始まるまでボーットしていようと思っていたら、クラスメイトが私の机を取り囲んだ。
もしかして騒ぎの原因は私?
勘づきながらも私は問いかけた。
「どうしたの、みんな?」
すると、みんな一斉に声を上げる。
「恵那、異星人と海洋館行ったの?」
「恵那とか優とか、下の名前で呼び合ってたそうじゃないか」
「歌の練習の後、旧図書室で何してるんだよ」
私は言葉を探したけど見つからなかった。
見つかるはずがなかった。
携帯電話のアラームで始まるいつも通りの朝。
今日から三学期が始まる。
この学期が終わるともう最終学年になるのかと思うと、ずいぶん価値があるかもしれない、と考えたのは起きて二秒の寝ぼけた脳内。
やっぱり起きたばかりだとろくな事思いつかないね。学校に行く価値なんてあるわけない。
聞く耳持たずで、聞く振りをしてやり過ごす授業。
友達と雑談タイムの最中、嫌いな子が入って来て、愛想笑いでやり過ごす休み時間。
また一緒のおかずか……と、嘆きながらも美味しいと感じ、切なさでやり過ごす昼食。
目に付く所だけきれいにして、あとは知らない振りでやり過ごす掃除時間。
そんな普通な高校生活。
それを後、何度繰り返せばいいのだろうか。
別に学校が楽しくない事もない。でも面白いわけでもない。
それが普通。
それが自分の望んだ事。
またくだらない事考えてるよ、私。そんな事考えてる場合じゃないや。
携帯電話の時計を見ると、七時五分と表示されている。あと一時間もすればこの家を出なくちゃいけない。
あー、絶対嫌。いい具合に温かい布団にくるまってゴロゴロしていたいよ。
さすがに雪は降らないけど、なかなかの寒さだって天気予報で言ってたし……。あと一五分くらいゴロゴロしていても大丈夫だよね。
私は頭まで布団をかぶって、もう一眠りしようと携帯電話のアラームの時間を変更した。
って、ダメだよ私。今気付いたけど今日も合唱の朝練があるんだよね。先週は冬休みだから九時からだったけど、今日は授業があるから、HRの三〇分前から練習するとか言ってたような気がする。というか間違いなく言ってた。
だとすると、学校まで一五分で、HRの三〇分前と言えば八時。計算すると七時四五分までには家を出なくちゃ行けない。ということは学校の準備にかけれる時間は四〇分。
こんな悠長に時間の計算してる場合じゃない。早く準備しなきゃ。
そう思うと、さっきまで体全体を梅雨時の湿気のように被っていた眠気が一気に取れて、脳内に晴れ間が広がった。
そのおかげで、予定よりも早く学校の準備を終えれて、私は手早く朝食を済まそうと、冷蔵庫から牛乳を取り出し、皿に盛っているコーンフレークに勢いよくかけた。
テレビを付けて、今日の占いはどうだろうと思っていると、あくびをしながら、おはようと言って美那が現れた。
「今日は早いね。また何か用事?」
「大学も今日から始まるんだよ。本当面倒くさい。あっ、あたしにもコーンフレークくれよ」
私の断りを待たないで、美那は私の更に手をつけた。
「だめよ。私も時間に余裕があるわけじゃないんだから」
「んだよ、ケチー」
机の上にコーンフレークと牛乳が置いてあるんだから、あとは皿とスプーンを取れば済む話しじゃない。面倒がらずにやりなよ。……あっ、だからケチなのか。
「確か美那。月曜って授業昼までだよね。私も始業式だから昼で終わるから何か作ってあげようか? それとも美那が好きな牛丼がいい?」
たまには姉にも恩返ししないとね。いつも服やら何やら借りてるんだし。
「いや、あたしはいいよ。恵那が作る料理って見た目は普通だけど、微妙に不味くてムカつくんだよね。あと牛丼はあんたが食べたいだけでしょ、女一人で行きにくいからって口実つけようとしてんじゃないわよ。昼飯はいいわ。今日は寄る所があるから夕方まで返らないし」
食べれないとだけ言えばいいのに、どうしてこう人を落ち込ませる、余計な事言うのかな?
「どこ行くの?」
「友達の家よ」
絶対嘘だ。さっきまで目を合わせて話してたのに、答えたときだけ合わせなかったもん。まあいいか。それくらいの嘘なら。
「ふーん。じゃあ私そろそろ行くね」
「早くない? まだ四〇分だよ」
「合唱の練習。朝練だってさ」
私はシンクに皿を置きながら答えた。
洗うのは帰って来てからでいいや、お母さんは一五時まで帰ってこないし。
私は椅子にかけていたカバンを持って、年始のバーゲンで買った黒いロングマフラーを巻いて、リビングから離れた。
すると美那が、皿をスプーンで混ぜながら言った。
「合唱ね……。白井には気をつけなさいよ」
まさか美那の口から白井くんの名前が出てくるとは思ってなかったから、ちょっとビックリしたけど、わけなんて聞いている時間がない。
私は意味わかんない、とだけ言って寒く、凛とした空気が漂う冬の朝に向かって足を踏み出した。
学校の自転車置き場に着いたのは集合5分前で、私は少し慌てて教室に向かう。
教室に着くと、やけに今日は騒がしかった。
新学期になって久しぶりに会う人がいたからかな? と思ったけれど、先週の平日は合唱の練習をやっていたからそんな事はないはずだ。だって一度も来ていないのは白井くんだけだもん。
とりあえず自分の机にカバンをかけて、練習が始まるまでボーットしていようと思っていたら、クラスメイトが私の机を取り囲んだ。
もしかして騒ぎの原因は私?
勘づきながらも私は問いかけた。
「どうしたの、みんな?」
すると、みんな一斉に声を上げる。
「恵那、異星人と海洋館行ったの?」
「恵那とか優とか、下の名前で呼び合ってたそうじゃないか」
「歌の練習の後、旧図書室で何してるんだよ」
私は言葉を探したけど見つからなかった。
見つかるはずがなかった。