力士数が599人で1979年春以来の500人台に突入した。2023年の新弟子自体過去最少の52人。これは体格基準を緩和して以降の数字であり、この数字自体水増しとも捉えかねない。2022年の新弟子は61人だったがかつての第一検査(173センチ、75キロ以上)基準を適用すると27人が体格を満たさず、34人となるという。それだけ小柄・軽量の力士が増えていることとなる。

 

入門者がこれだけ減るのは何故か。当然肥満、不健康というマイナスイメージもあるが、相撲部屋の集団生活や待遇面もネックではないか。ある意味幕下以下の力士養成員は協会職員を兼ねている面もあり協会の労働力搾取ともいえる。養成員は十両以上の力士の世話や相撲部屋でのちゃんこ番などに従事しているが公式には46万~99万円の収入。一方相撲部屋には相撲部屋維持費(力士1人あたり年6回11.5万円)、稽古場維持費(力士1人あたり年6回5.5万円)、力士養成費(幕下力士1人あたり毎月7万円)が支給される。合計すれば力士1人あたり年間186万円が部屋の収入である。力士が単なる職員となれば平均70万程では雇用は不可能である。

 

参考にサッカーJリーグのJ2、J3選手の年俸を調査するとJ2は平均400~500万という。J1から降格直後の場合J1基準の契約である場合もあるがプロリーグの割に低いと感じた。J3となると多くても200~300万でクラブによっては0円のケースもあるらしい。そもそもJ3の場合ほとんどがアマチュア契約でプロとは名ばかりのシステム。スクールのコーチなどアルバイトをする選手がほとんどである。今年大宮アルディージャのJ3陥落が決定したがかつてJ1定着していたクラブもアマチュア並みの扱いとなってしまう。かつてJ2からの降格制度もなかった時代もあり競争は熾烈となっている。

 

ここで選手数や規模も異なるがたんなる地位で相撲と比較するとJ2は十両、J3は幕下~三段目相当と思い浮かぶ。比べると十両は知名度の割に待遇の良さが目立つが、幕下が序二段と同格扱いなのはどうかと思う。大相撲の地位や昇降の粗笨さも感じる。

 

現状力士養成費は部屋の収入にかなり大きな割合を占める。それがベテラン力士が増える要因でもあり実質マネージャーの代わりとなっている場合も多い。マネージャーであれば給与を払う必要があるが、「力士」である限り協会から養成費が出る訳でこの違いは大きい。華吹も51歳まで力士であった。このことが力士に対し生活面や指導など甘くなることにもつながり、相撲界の緊張感が弱くなることにつながるのは否定できない。さらに暴行などの不祥事も指導不足が影響しているとみる。かつて幕下まで20場所(のち25場所)で昇進できない力士は養成費打ち切りという制度があったが、現代に適用すると幕下は半数以下まで減るだろう。相撲にもそれほどシビアな時代もあった。

 

ある意味運営の補助となっている以上、養成員が急減すると巡業や本場所にも支障が出る。協会はどれほど危機感を持ってるのか。