#40『この世界の片隅に』/人は"他人事"があるから生きられる。 | なんだかんだ。

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残していきます。
いまんとこ大学生。

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度目の干渉でやっと腑に落ちて、思うところがあったのでブログに。

 

『この世界の片隅に』

 

正直最初に見た感想は「???」といった感じ。

広島の方言がすごいし、過去の日本の世界観に、とんとん進む話し運び。

とにかく情報量がすごいし、ふっとするとおいて行かれるレベル。

なので、今から見ようと思う人は目がパッチリ、集中力が一番な時間帯をお勧めします。

 

そんで最初に見て「???」と感じた中にも、何か思うところは少しあった。

それは、

 

「この世の全てには意味がない。」
 
ということ。
この映画を見た感想としてよく見るのが「生きる。」ということに絡めて語られること。例えば、「今を生きること」や「戦争の一方で、健気に暮らす人々。」とかとかとか。
それは確かにわかる。
というか、描かれているのは確かにそういう人たちであることは間違いない。
ただ個人的にはそれは腑に落ちないというか、自分が見た時はそのように感じなかったし、どうも核心をついていない気がしてならなかった。
 
 
でも、我ながら、なぜ自分が上記のように感じたのかしっかり説明できなかった。
強いて言うなら、ラスト。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 




突然ですが、ここからはスーパーネタバレがありますので気にする方は映画を観てからお戻りください。ちなみに原作のネタバレも気にせず行います(´_ゝ`)ゞビシ
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
続き、、、
 
 
 
どうしてそう感じたのか。
強いて言うならラスト、大切な命と共に失われた右手。そしてすず自身の居場所を奪うきっかけになった右手。それがラストは誰かを救うきっかけになったこと。
他には、日本が負けを認めたことが悔しくて叫んだすずのセリフ(詳細に覚えていないので割愛。「この体は海外の豆でできているのか。」的なやつ)。
他にもあった気がするけど忘れた。
 
これらの理由からぼんやり「人はどんなものにも意味をつけたがるけれど、意味は無いんじゃないか。」とか考えてたわけですね。
 
 
ここまででわかるよう
支離滅裂で、意味が全く分からんね、、、うん(´_ゝ`)
 
 
 
ただ原作を読んで、そして二度目の鑑賞ですごい腑に落ちったって話。
※個人的な偏見・思考に基づいた考察なので優しい気持ちでお読みください。
 
まず原作、のあとがきを一部引用。
 
 
 わたしは死んだ事がないので、死が最悪の不幸であるかどうかわかりません。他者になったこともないから、すべての命の尊さだの素晴らしさだのも、厳密には分からないままかも知れません。
 そのせいか、時に「誰もかれも」の「死」の数で悲劇の重さを量らねばならぬ「戦災もの」を、どうもうまく理解出来ていない気がします。
 そこで、この作品では、戦時の生活がだらだら続く様子を描く事にしました。そしてまず、そこにだって幾つも転がっていた筈の「誰か」の「生」の悲しみやきらめきを知ろうとしました。
 
 
これを読んだ時に、少し腑に落ちた。というかめちゃくちゃ共感した。
そしてこれ(というか原作を)をふまえた上で二度目の鑑賞に臨む。
 
そうすると、、、
 
めちゃくちゃ腑に落ちた。腑に落ちたおした(´_ゝ`)
 
 
二度目の鑑賞でどう解釈したかというと
 
「当事者では無い人(すず)の話。他人事の話。
 
こうなりました。
 
何故こう感じたかというと、、、
 
一番は、すずがアメリカ空軍を迎え撃つ高射砲の煙がカラフルなのを見て「紙とペンがあったら描けるのに。」と言いいながら(心の中で)、目に映る風景を絵にするシーン。
あのシーンは映画オリジナルなシーンなんだけど、とても他人事なシーン。
実際、あの戦闘で人が死んでいることは言うまでもない。ただ、すずにはそんな事はどうでもよくて、「綺麗、、、」これが勝つ。
これがすずにとってのリアル。絵にしてはいるが、絵空事ではない、リアル。
 
そしてそんなすずが当事者になるシーンが、何を隠そう右手を失うシーン。
そこではすずのこんなセリフがある。
 
義母「良かった。熱が下がって。」
義父「ともかく不発弾で良かった。」
医者「しかし治りが案外早うて良かった。」
周作さん「あんたが生きとって良かった。」
 
 
どこがどう良かったんか
うちにはさっぱり判らん
 

 
このセリフは当事者になったすずだからこそのセリフであるし、当事者になったことを示すセリフでもあるんじゃないかと思う。
そしてその後、妹とのやり取りでこうある。
 
あれ以来 周作さんとろくに話していない
家が焼けたら出て行けばいいのに
わたしは 死んだ人が転がっていても平気で通り過ぎた
一つしか違わんすみちゃん
わかっている
歪んでいるのはわたしだ
まるで左手で書いた世界のように
あぁ 良かった
鬼いちゃんが死んで 良かったと思ってしまっている
 
原作を参照しているので、映画では若干違うと思われる、けど映画にもあったワンシーン。
きっと当事者になってしまったから、すずの世界は歪んでしまったんじゃないかと思う。というよりすずが当事者になることによって、自分が歪んでいることを自覚し始めたんだと思う。しかし、それでも兄の死に関しての実感は無い。帰ってきたのは遺骨の替わりに石ころだから。兄が簡単に死ぬとは思えないから。だからどこか上記のように他人事な感情を抱いてしまっているのではないだろうか。
 
そして上記のような歪んでいるすずを個人的には普通だと思うし、作者もそう考えているのではないかと深読みしてしまう。

まずなぜ自分が普通だと思うか。それは先に述べた戦闘シーンを見て「自分ならこう描くな」とワクワクしてしまう気持ち、これがすごく理解できるから。例えば幼少期に台風にどこかワクワクしてしまう気持ち。例えば『シン・ゴジラ』を観て、ゴジラに破壊神としての恐怖を感じながら「かっこいい...」と感じてしまう気持ち。これはどれも他人事だから起こる感情だ。自分の中でフィクションだからだ。

そしてなぜ作者も歪んでいるすずが普通であると考えていると思うか。
それはまず先に引用した作者のあとがきである。忘れた人は戻ってもう一度読んで欲しいが、作者自身は戦争の当事者ではないことを強く認識している。
そして原作の作風を見てもそう思う。
一番はギャグ
例えば、憲兵にすずが怒られてすぐに家族での大爆笑・原発が落ちた後すぐの草履作りのギャグ・アメリカへの残飯雑炊を二人で食べた後の「うまーーーー(´▽`)」のギャグ。
どれも泣けるところ・悲しいところに落ち着きそうで、そこには着地せずギャグに持っていく。
この作風と作者あとがきから考えるに、
 
「当事者ではない私にはその(悲しい展開への)一歩が踏み出せない。」
 
ということなのではないかと思う。
書かないのではなく、書けないの
そんな物事に対する真摯な姿勢があとがきからは感じられた。
 
作者もやはり当事者ではないのだ。
 
ならばメッセージはネガティブなものか?
それは違っていて、
つまり人は"他人事"があるから生きられるのだ。
 
それが原作ラスト、すずの右手が語る
 
どこにでも宿る愛
変わりゆくこの世界の
あちこちに宿る 切れ切れのわたしの愛
ほらご覧 いま其れも貴方の一部になる
例えばこんな風に
今わたしにできるのはこのくらいだ
もうこんな時爪を立てて
誰の背中も掻いてやれないが
時々はかうして思ひ出してお呉れ
草々
 

今生きる人々は過去の人のおかげで生きている。それこそ戦争で戦った人達もそうだ。
しかしその人たちを毎日、毎分、毎秒思い出していては前を向いて生きていけない。だから人は"他人事"があるから生きられるのだ。

すずの妹のその後が描かれないこと、最後にワニを背負った鬼いちゃんがすずの後ろを通り過ぎること、明らかに被爆していると考えられる孤児のその後が幸せであること、、、

これらはすずが見ている世界。つまりすずの他人事が作ったリアルな世界と言う解釈もできる。
人は前を向いて生きるために“他人事”という能力を手に入れたのかもしれないね。

この核心があって、みんなが言う「今を生きるってこと」っていう感想につながるのでは?
と腑に落ちたのでした。
 
 

もちろん過去への感謝を忘れてはいけない。
それが映画ラストの

 
笑顔の器として生きる

 
であって、原作の

 
うちしか持っとらん
それに記憶がある
うちはその記憶の器としてこの世界に在り続ける
しかないんですね

 
である
そして原作のすずがリンに言う
 
 
ごめんなさい
リンさんの事 秘密じゃなくしてもうた......
これはこれでゼイタクな気がするよ......
 

なんだろう。
 



 







 
以上!
ここの考察はあくまで私見であって、もちろん断定するものではありません。
「そんなのありえない!」と気分を害された方は、「まぁどのような解釈にも開かれているのが映画の良さだから...。」と広い心でお許しください(´_ゝ`)
 


 
・おまけ・
原作おすすめですよ。
 
・すずと周作の初夜の傘の下り。
・周作がすずに言った「過ぎたこと 選ばんかった道 みな覚めた夢と変わりやせんな」
・幼少時の水原がすずに鉛筆をあげた理由
・すずが付けていた口紅
・広島から歩いてきた焼死体
 
などなど「あーーーーー!そゆこと!」ってなること多数。
リンさんとの関連も映画より強く、趣が少しばかり違うので、、、
 
おすすめです!!!

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