興味があれば、チャンネル登録してくれると超嬉しいです!
目指せ、1,000人!!
物音が少なくなった。
今は夜のようだ。
そういえば、今寝ているベッドの左側には窓がある。
これまで居た、手術を行うような部屋ではない。いつ移動したのだろう。
窓の向こうには、高いビルが幾つも並んでいる。私が住んでいる地域とはまったく違う。
ここはどこなのだろう。
このビルを見ているせいなのか、今は夢ではなく、現実なのだと確信してきた。
夢だったらよかったのに。これまでの人生、こんなことは一度もなかった。
巨大な絶望感だ。
私は平々凡々な一般人生を退屈に送るのだと思っていた。
退屈といっても、仕事は楽しかった。
毎日を無駄にしたくなくて、暇さえあれば予定を作っていた。
それなのに、こんな状況に陥るとは、まったく想像もしていなかった。
今の自分では何も出来ない。
さらに、この後どうなるのか、サッパリ分からない。
多大な恐怖と切迫感が、延々と続く。
これからの私は、いったいどうなるのだ。
気になるのは仕事のことだ。
同僚や他社にどんどん置いて行かれる。
私は少し、出世が遅かった。会社に何も言わずに休んでいて、大丈夫なのか。
大丈夫なわけがない。
部屋の外から、ピロンピロンといった電子音や、時計らしきチャイム音が聞こえる。
今の季節はいつなのだろう。
こうなってから何日も経っている気がする。
今思い出す“さっき”は、半日先のことなのか、それとも一週間前のことなのか、さっぱり分からない。
そもそも、なんでこんなことになっているのかも分からない。
世界から切り離されているようだ。
身体は何故か、全然まともに動かない。
俯せどころか、横さえ向けない。
鼻や腕には、何のためなのかいくつものチューブが刺さっている。
私の足の指には、何かの装置が取り付けられていて、そこからコードが出ているようだ。
挟むだけの簡単な装置なので、少し身体を動かすとすぐに外れてしまう。
取れてしまうと、もう一度自分で取付けることはできない。
外れそうなときは、ちょっとしたストレスだし、外れてしまうとなんだか自分が落ちこぼれのような気持ちになる。
今私が着ている服は、自分の服ではないようだ。
こんな浴衣なんて、自宅にはない。
この浴衣の特性なのか、寝た状態で数時間経つと首が閉まってくる。
それに、背中が浴衣や布団にくっついているように感じる。
それなのに、しばしばはだけてしまう。
こんな現象、これまでの人生で記憶にない。
地球ではない星に来たようだ。
ある日、看護師は「あらー、寝相悪いわね」と言って笑った。
私だって、こんな風になりたいわけじゃないんだよ。
私は割りと自分の性格が好きだ。
ユニークな個性があると思っているし、それを貫きたいと思っている。
小学生低学年の頃は引きこもってばかりだったが、ある年、私の転機が訪れた。
二学期の終業式の日、全校集会で校長先生が、寒さにも関わらず半袖半ズボンで通学している生徒を立たせて、表彰していた。
これなら、私でもできるかもしれない。
私も一度でいいから、その場に立ちたい。
必死で何とか半袖半ズボンを貫き通した。
みんなの前に立ったとき、ちょっと興奮した。
そんな思考が、私の個性なのだろう。
高学年になると、他人が興味を持たないことに熱心になった。
例えば鉄棒の蝙蝠振り降り(ブラ降り)や、漫才の真似事など。
それは単に、面白い奴だと思われたかったから。
奇想天外で、可笑しな人間だと思ってもらいたかった。
小学六年生の時、国旗掲揚台の柵を跳び箱のように飛ぼうとして、結局飛べずに転落し、腕を骨折してしまったことがある。
初めての骨折。
でも、私はそれを面白くしようと思って、ワープロにその自伝を書き、教室の後方に貼り出した。
それを見つけた担当の先生は苦い顔をしていた。
私は、やり切ったと思って大満足だった。
社会人になって、そろそろ一〇年になる。
一昨年、初めてプロジェクトリーダーになった。
そのプロジェクトが、あと一年で終わる。
きっと成功に終わるだろう。
私生活でも、結婚して、子供が生まれた。
新車のミニバンを買って、いろんな場所に出掛けた。
最近、その車で大きな公園に息子二人を連れて遊びに行った。
楽しそうに遊んでいる息子たちを眺めていると、私はこう思った。
「息子たちが生まれて、本当に良かった。
仕事も、本当に楽しい。
自分でプロジェクトを率いるって、こんなにやりがいがあるんだな。
まだ色々と課題が残ってるけど、みんなと一緒ならなんとかなりそうだ。
こんなことを私がやれるとは、思ってもなかった。
本当に幸せだ。
でも、これが限界なのかもしれない。
まぁ、これ以上を目指しているわけじゃない。
後は平々凡々とゆっくり生きたいな。
もう満足してるから、事故にでも遭って、あっさり死ぬのもいいなぁ。
あとほんの少しだけ生きたら、もう何の未練もないな」
そう思っていた。
それなのに、こんな身体になっておきながら、まだ生きている。
プロジェクトは終わっていない。
まだ問題だらけだ。
その問題に対応しているのが、私だ。
ここで働けなくなったら、みんな困るのではないだろうか。
いや、むしろ困ってほしい。
困らなかったら、私の存在価値がまるでないことになる。
あんなに頑張ったのだ。
いろんな社員と、何度も打ち合わせをしていた。
いろんな会社に、何度もプロジェクトの説明や検討を行っていた。
私は、それに充実感を得ていたのだ。
それなのに、突然リングの外に追いやられた。
というより、リングを見ることも出来ない。
もう嫌だ。何も考えたくない。
死にたい。
元々、私は死んでもいいと思っていた。
そう思っていたから、こうして罰が当たったのか。
今は、何故入院しているのかも、いつから入院していたのかも分からない。
私はもう、あと三年も生きられないのだろう。
そう思ったきっかけは、私の頭蓋骨だ。
ちょっと前から、私の頭に何故か布が被せられていることを、漠然と認識していた。
先日ふと頭が痒くて触ってみると、そこが妙に柔らかい。
つまり、頭蓋骨の一部が無くなっていることに気付いた。
驚いた。
これが今の私か。
私の身体は、一体どうなっているんだ。
その理由や経緯は、誰も説明してくれない。
夜中、エアコンが効いていないのか、左足が寒い。
問題は、それに比べて右足が何故かほとんど寒くないことだ。
手足がまともに動かないので、かなりの時間を費やし布団を掛け直している。
そのときに毎回思い出す。
右足や右手が自分の身体のように感じない。
千切れて無くなっているわけではない。
実際動かしているのだから、そこにあることは分かっている。
だが、自分の意思で動いているように感じない。
例えば、正座をしていた後に痺れているような感じ。
その痺れは、正座のときより弱いのだが、いつまで経っても治らない。
おそらく、この私の身体は、何者かがコピーとして造られた偽物なのではないだろうか。
こんな頭脳や身体の人間が、“私”なわけがない。
証拠がある。私は大便も小便もしていない。
それが人間であるはずがない。
今の私は、人造人間なのだ。
それにしては、なかなか人造人間を造る技術が凄いな。
私は大学で知能情報工学を学んだ。
所属した研究室では、自然言語処理という、人間の話す日常的な言葉を解析・処理する研究に励んだ。
今の私は、その人工知能なのではないだろうか。
だが、こんなポンコツが成功なわけがない。
失敗作だろう。
偽物で失敗作の江越良太。
だとすると、本物の江越良太は、この私が覚えている世界で暮らしているのか。
妻も両親も何も説明しなかったが、今は私に会いに来なくなった。
それは、本物の江越良太との生活に戻ったということなのだろう。
つまり、偽物の私はここで命を終える。
いや、命なんてないのか。
でも、ふと自分の左腕を見ると、小学生の時に怪我をしてできた傷跡が、そのまま存在している。
これは、本物の私の腕ではないだろうか。
いやいや、そんな馬鹿な。
ちゃんと見れば、偽物だとわかるはずだ。
ああ、ロボットじゃなくて、人工細胞で造られた身体なのかもしれない。
きっとそうだ。
きっと、莫大な資金で私を造ったのだろう。
誰かと勘違いして私を選んだのではないだろうか。
仮にここを脱出したところで、何も解決しないだろう。
この身体では到底歩けないし、私は偽物じゃないか。
私がこれ以上生き続けたって、その価値は全くない。
自分が誰にも必要ないことを、まざまざ見せつけられているようだ。
考えれば考えるほど、憂鬱になる。
考えるのが悪いのか。
もう考えないようにしよう。
現在からの振り返り
良太です。
今回の話、第二話・第三話とおんなじだと思う人も多いと思いますが、当本人はかなり違ってました。
それは、現実だと気付いたってことです。
これはかなりショックでした。
おっきな病気やけがになることなんでないと思ってました。
それなのに、突然こんな状態になって、しかも自分でほとんど動けないんですからね。
でもまぁ、現実であっても脳がやられてますからね。
妄想でしかないため、自分が自分ではなくて、人造人間や人工細胞だと錯覚したという状態です。
小学生になる前ならそんな妄想もありましたけど、成人がマジでそう思うんですからね。
マジでありえないですよね。
でも、これは本気で感じてました。
この動画を見てくれている皆さんも、本気で自分がそうなったらどう思うのか、考えてみたらいいと思います。
私は祖父母がアルツハイマーや認知症になりましたが、私は自分とは関係ないと思っていた気がします。
それに気付けたことって、超ラッキーだなと思ってます。
それから、譫妄状態がある間は、自分の思考に一貫性がありません。
自分が人造人間だと思ったって、その一時間後には人間に戻っていたりします。
自分が病院に入院しているってことも、時間によっては死神博士に拉致されていると思ったり、普通の病院にいるって思ったり、すぐ変わります。
自分で間違えていたことにも気付きません。
脳のキャパシティが小さいんですね。
指にくっついていたのは『パルスオキシメータ』という動脈とかを測定する装置だそうです。
右半身に違和感があったのは、感覚麻痺ですね。触ったり触られたりしていることが分かりづらい状態です。
初めはかなり気持ち悪く思ってました。
今でもその記憶が鮮明に残ってます。
まぁ突然こんな状態になってたら、当然人造人間だと思ってもおかしくないですよね。







