今回は前回のブログに引き続き、対穴熊の必至問題を紹介していきます。
シンプルですが非常に難しい問題となっています。
【問題】
問題図の局面は、持ち駒が金、銀、角なら一手詰です。
飛車の場合は即詰みがないことは明らかですが、必至はかかるでしょうか?
この問題は、
2手目まで読めれば初段以上、
8手目まで読めれば四段以上、
15手目まで分かれば六段以上、
最後まで分かれば名人級ですので、まずはチャレンジしてみてください。
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【解説】
問題図から初手、▲8二飛は△1一飛(参考1図)で失敗、
▲7一飛は△8二飛▲同と△同玉(参考2図)で失敗です。
(以下▲7二飛打△9一玉で詰めろが続きません)
したがって、初手は▲6二飛(第1図)しかありません。
問題図からの正解手順
▲6二飛(第1図)
さて、2手目はどう受けるのが最善でしょう?
A△7一金や△7一飛は、▲同とで必至、
B△7一銀は▲同と△8二銀▲7二銀△7一銀▲同銀不成(参考3図)で必至です。
したがって、2手目の玉方の最善の受けは△7一角です。
対して攻め方は▲同との一手です。
第1図以下の正解手順
△7一角▲同と(第2図)
さて、第2図で△8二金や△8二飛は▲同飛成と取って詰みます。
また△8一香や△8一桂は▲7二飛成で必至です。
したがって、後手は△8二銀または△8二角と受けるしかありません。
この2つは似た変化となるので、△8二銀で解説しましょう。
第2図以下の正解手順
△8二銀(第3図)
第3図で、
A▲8二飛成△同玉▲7二銀は筋ですが、△9四歩で捕まりません。
B▲7二とは△7一銀打▲6三角△7二銀▲同角成△7一銀打で寄りません。
したがって、第3図では▲8一とが正解です。このあたりから複雑な予感がしてきますね。
第3図以下の正解手順
▲8一と△同玉(第4図)
さて、第4図で先手はどう指せばよいでしょう?
A▲6三角は△9一玉▲6四桂△7一香(参考4図)で失敗です。
(以下▲7二桂成△同香▲同飛成△1一飛で詰めろが続きません)
B▲6一飛成は△7一銀打(参考5図)が受けの好手で、
以下、
a▲7二角△9一玉▲6三桂は△1七角で逃れ、
b▲6四桂△9一玉▲7二桂成も△8一香▲6三角△7二銀▲同角成△7一金(参考6図)で逃れています。
(以下▲同馬△同銀▲同竜△8二銀▲同竜△同玉と進めても、この次に詰めろがかかりません)
したがって、第4図では▲6四桂が唯一の正解となります。
第4図以下の正解手順
▲6四桂(第5図)
第5図で△7一銀打は▲6三角△9一玉▲7二桂成△同銀▲同飛成△1一飛▲7一銀(参考7図)で必至です。)
よって第5図は△7一香と受けるしかありませんが、先手はこれをみてから▲6一飛成とします。
第5図以下の正解手順
△7一香▲6一飛成(第6図)
この手は▲7二桂成△9一玉▲8二成桂△同玉▲9一角以下の詰めろ。
初形からここまで読めたら四段以上はあると思います。
しかし、この問題はまだまだ終わりません。
第6図で△2二飛は▲6三角△9一玉▲7二桂成△同飛▲同角成△8一香▲8二馬△同玉▲5二飛(参考8図)で、
以下
A△7二香打は▲同飛成△同香▲7一銀△9一玉▲8二香△同香▲6二銀成(参考9図)以下必至。
B△7二桂は▲同飛成△同香▲7一銀△9一玉▲6四桂(参考10図)以下必至。
したがって、第6図では△9一玉と逃げるしかありません。
第6図以下の正解手順
△9一玉▲7二桂成(第7図)
第7図でA△2二飛は▲6三角△7二飛▲同角成以下、参考8図の変化に合流して必至です。
B△6二飛の犠打には▲同成桂で、
以下
a△8一金は▲7二角△同香▲8一竜△同玉▲6一飛△7一香▲9一金△同玉▲7一成桂まで必至、
b△8一銀は▲7二角△同香▲5一飛△7一桂▲同成桂△同銀▲同竜まで必至、
b△8一香は▲6三角(参考11図)で、
以下
1△7二香打は▲同角成△同香▲5一飛△7一桂▲同成桂△同銀▲8二香(参考12図)△1七角▲7一竜△同角成▲同竜が一例で必至、
2△7二桂は▲同角成△同香▲6三桂(参考13図)△1六角▲8一竜△同玉▲7一飛△同銀▲同桂成△9一玉▲7二成桂寄まで必至です。
またC△8一桂は▲8二成桂△同玉▲7二銀△1七角▲6二角(参考14図)以下が一例で必至です。
したがって、第7図では△8一香と受けるのが後手の最善手順です。
第7図以下の正解手順
△8一香▲8二成桂△同玉(第8図)
さて、第8図から▲6三角は筋ですが、△9四歩で捕まりません。
したがって、第8図では▲5三角と打つしかないところです。
第8図以下の正解手順
▲5三角(第9図)
ここまで読めたらアマ六段あると思いますが、いかがでしょうか?
さて、第9図で△8四歩は▲7一角成△8三玉▲7二馬△7四玉▲7六銀が一例で必至です。
よって、第9図では△7二金または△7二飛と受けるしかありません。
この2つはどちらも有力なので、2つとも正解手順といってよいでしょう。
第9図以下の正解手順①
△7二金▲6三銀(第10図)
第10図で
A△6二金打は無駄に近い受けで、▲同銀成△同金▲同角成△7二金▲6三金△6二金▲同竜△7二金▲7三金が一例で寄ります。
B△1二飛は▲7二銀成△同飛▲6三金で、後述の正解手順②の変化にほぼ合流します。
したがって、△1二飛は別とすれば後手の最善の粘りは△9四歩からの上部脱出になります。
第10図以下の正解手順
△9四歩▲7二銀成△9三玉▲7一角成(第11図)
第11図で△8二香(桂、銀、角)は▲8一馬、△8二金(飛)は▲8一成銀で、
これがいずれも▲8二馬△8四玉▲8九香以下の詰めろになります。
詰めろを受けるためには△8四玉とするぐらいですが▲8九香~▲8二馬で駒を取られながら挟撃されて寄ります。
したがって、第11図では単に△8四玉と逃げるのが最善です。
第11図以下の正解手順
△8四玉(第12図)
さて、第12図から後手玉は寄るでしょうか?
第12図でA▲6五竜は△7五飛▲8九香△8五桂(参考15図)が受けの好手順で、
以下は▲同香△同飛▲9六桂△9五玉▲5三馬△7四桂が一例でしのがれます。
B▲6六竜は△7五金▲8九香△8五香▲同香△同金▲8九香△7五金打(参考16図)で、
以下、
a▲8五香△同金▲8六金△7五金打は千日手、
b▲5三馬△7四金打▲7三成銀△7九飛▲7四成銀△同金▲8五香△9三玉もなかなか寄りません。
そこで、第12図での正解は▲8九香になります。
上部脱出した玉に対しては、まず香を打って受け方を見るのが筋です。
第12図以下の正解手順
▲8九香(第13図)
第13図以下は様々な変化がありますが、いずれも必至がかかります。
ここから
A△8六桂、B△8五香、C△8五銀(または8五金)が考えられるので、一つずつ解説していきます。
まず、A△8六桂には▲同香が分かりやすいです。
以下
a△9五玉は▲6五竜△9六玉▲9八金△4九角▲5三馬(参考17図)で、
以下、
1△8七香▲6七桂、
2△8七金は▲8八桂△同金▲同金△8七金▲同金△同玉▲8八金△同玉▲6八竜△7八香▲4四馬△9七玉▲7八竜で必至です。
b△8五桂は▲8七桂△1五飛▲7三成銀(参考18図)で、以下△同玉に▲7五歩で必至です。
次に、△8五香には▲同香で、
以下
a△同玉は▲6五竜△7五合▲8九香△8六合▲5三馬以下、
b△9五玉も▲9九香△9六桂▲8七金(参考19図)△5六飛▲5三馬△6四歩▲同竜△7八角▲9六金△同飛▲6六竜△9七桂▲同香△同飛成▲同馬△9六金▲9八金で寄ります。
C△8五銀(または△8五金)は▲同香で、以下
a△同玉は▲6五竜以下、
b△9五玉も▲5三馬△6四歩▲9七金△5六飛▲6四竜以下、簡単に寄ります。
以上より、第9図で△7二金の変化はすべて必至に至ることが確認できたかと思います。
次に、第9図から△7二飛の変化を見てみましょう。
第9図以下の正解手順②
△7二飛▲6三銀(第14図)
第14図では他に受ける手もないので、△9四歩と突くしかありません。
第14図以下の正解手順
△9四歩▲7二銀成△9三玉▲7一角成△8四玉(第15図)
第15図までの手順中、△8四玉にかえて△8二香打(桂、銀、角)は▲8一馬、△8二金は▲8一成銀で、これがいずれも▲8二馬△8四玉▲8九香以下の詰めろになるので寄りです。
そこで第15図のように△8四玉ですが、やはり▲8九香と打って受け方を見るのが筋です。
第15図以下の正解手順
▲8九香(第16図)
第13図と比べて先手の持ち駒が金から飛車に換わっていますが、必至はかかるでしょうか?
ここからA△8五桂、B△8六桂、C△8五香、D△8五銀(または△8五金)、E△8五角が考えられるので一つずつ解説します。
まずA△8五桂は▲6四竜で、
以下
a△7四香は▲7三成銀以下、
b△7四金は▲6五飛(参考20図)以下必至です。
次に、B△8六桂は▲同香で、
以下
a△9五玉は▲9八飛△9六香▲6五竜△8六玉▲5三馬△8七玉▲6七竜まで必至、
b△8五桂は▲8七桂(参考21図)が詰めろで、以下△7五金▲6四竜△7四金打▲6三飛△5一角▲7三成銀まで必至、
C△8五香は▲同香で、
以下a△同玉は▲5三馬△6四歩▲同竜△8六銀▲8九香(参考図)以下の必至、
b△9五玉は▲9九香△9六桂▲5三馬(参考図)で、
以下△6四歩▲同馬1△8七角(または△8七銀)▲9七歩△8四桂▲9六歩△同桂▲7九桂以下必至です。
また1△8七角にかえて2△7八角なら▲7六飛以下、2△5九角なら▲9七飛以下必至です。
D△8五銀や△8五金は▲同香で、以下
a△同玉は▲6五竜以下簡単な必至、
b△9五玉は▲9九香△9六桂▲5三馬△6四歩▲同馬△8六香▲同馬△同玉▲6六竜以下簡単な必至です。
E△8五角は▲同香△9五玉▲7七角△8六桂▲同角△同玉▲6六竜以下必至です。
以上より、第9図で△7二飛の変化についてもすべて必至に至ることが確認できたかと思います。
これで9割方の変化はクリアしましたが、最後に復習も兼ねて4手目△8二角の変化を見ておきましょう。
第2図以下の別解手順
△8二角(第17図)
第17図以下の正解手順
▲8一と△同玉(第18図)
4手目△8二角の場合は、この局面で▲6四桂だけでなく▲6一飛成でも正解になります。
第18図以下の正解手順
▲6四桂または▲6一飛成(第19図)
第19図以下、△7一銀は▲7二角△9一玉▲6三桂(参考24図)で、
このとき△1七角の受けがないため△6二銀打と受けるしかなく、
以下▲7一桂成△同角▲8一角成△同玉▲7二銀△8二玉▲7一銀不成△同銀▲9一角△8一玉▲7三角成(参考25図)以下必至となります。
よって第19図では△7一香と受けるしかないですが、▲6四桂で手順前後が成立することになります。
第19図以下の正解手順
△7一香▲6四桂△9一玉▲7二桂成△8一香▲8二成桂△同玉▲5三角(第20図)
第20図で△7二飛は▲6三角で、以下
A△6二金打は▲同角成△同金▲同飛成△7二香打▲6一飛△9四歩▲8四金(参考26図)で必至。
B△9四歩は▲7二角成△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(参考27図)と進みますが、
第16図と比べて7二の駒が成銀ではなく馬になっているので、より簡単に必至がかかります。
したがって、第20図では△7二金が最善です。
第20図以下の正解手順
△7二金▲6三角(第21図)
第21図では△6二金打と△1二飛がありどちらも有力なので正解としてよいでしょう。
第21図以下の正解手順①
△6二金打(第22図)
第22図で▲同角成は△同金▲同竜△7二香打でなかなか寄りません。
したがって、第22図では▲7二角成が正解となります。
第22図以下の正解手順
▲7二角成△同金▲6三金(第23図)
第23図以下
A△6二金打は無駄に近い受けで、▲6二同金△同金▲同角成△7二金▲6三金△6二金▲同竜△7二金▲7三金以下寄ります。
B△1二飛は▲7二金△同飛▲6三金で後述の正解手順②に合流します。
C△8四歩は▲7一竜△同金▲同角成△8三玉▲7二馬△7四玉▲7六金(参考28図)で必至です。
したがって、他に受けもないのでD△9四歩とします。
第23図以下の正解手順
△9四歩▲7二金△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第24図)
この局面は第13図と比べて7二の成銀が金に換わっただけでほぼ同じなので、
第13図以下と同様の手順で必至がかかります。
以上より第21図で△6二金打の変化は必至がかかることが分かりました。
最後に第21図で△1二飛の変化も見ておきましょう。
第21図以下の正解手順②
△1二飛▲7二角成△同飛▲6三金(第25図)
第25図以下
A△8四歩は▲7一角成△同飛▲同飛成△8三玉▲7五飛△8五金▲9五香△同金▲同飛(参考29図)で必至です。
したがって、他に受けもないのでD△9四歩とします。
第25図以下の正解手順
▲7二金△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第26図)
この局面は第16図と比べて7二の成銀が金に換わっただけでほぼ同じなので、
第16図以下と同様の手順で必至がかかります。
以上より第21図で△1二飛の変化についても必至がかかることが分かりました。
さて、これにて全ての変化を網羅することができました。
正解手順をまとめますと、
A▲6二飛△7一角▲同と△8二銀▲8一と△同玉▲6四桂△7一香▲6一飛成△9一玉▲7二桂成△8一香▲8二成桂△同玉▲5三角
以下、
a△7二金▲6三銀△9四歩▲7二銀成△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第13図)以下、
b△7二金▲6三銀△1二飛▲7二銀成△同飛▲6三金△9四歩▲7二金△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第26図)
c△1二飛▲6三銀△9四歩▲7二銀成△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第16図)
B▲6二飛△7一角▲同と△8二角▲8一と△同玉▲6四桂△7一香▲6一飛成(▲6一飛成△7一香▲6四桂でもよい)△9一玉▲7二桂成△8一香▲8二成桂△同玉▲5三角△7二金▲6三角
以下、
a△6二金打▲7二角成△同金▲6三金△9四歩▲7二金△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第24図)
b△6二金打▲7二角成△同金▲6三金△1二飛▲7二金△同飛▲6三金△9四歩▲7二金△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第26図)
c△1二飛▲7二角成△同飛▲6三金△9四歩▲7二金△9三玉▲7一角成△8四玉▲8九香(第26図)
第13図、第24図以下の正解手順の一例は、
・△8五香▲同香△9五玉▲9九香△9六桂▲8七金△3六飛▲5三馬△6四歩▲同竜△7八角▲9六金△同飛▲6六竜△9七桂▲同香△同飛成▲同馬△9六金▲9八飛
・△8六桂▲同香△9五玉▲6五竜△9六玉▲9八金△4九角▲5三馬△8七金▲8八桂△同金▲同金△8七金▲同金△同玉▲8八金△同玉▲6八竜△7八香▲4四馬△9七玉▲7八竜
第16図、第26図以下の正解手順の一例は、
・△8五香▲同香△9五玉▲9九香△9六桂▲5三馬△6四歩▲同馬△8七角▲9七歩△8四桂▲9六歩△同桂▲7九桂
・△8六桂▲同香△8五桂▲8七桂△7五金▲6四竜△7四金打▲6三飛△5一角▲7三成銀
という感じになります。
▲8九香以下は長くても20手程度で必至となりますから、
問題図から数えればおよそ40~50手程度の必至ということになります。
読者のみなさまはどこまで解けましたでしょうか?
おしまい。