今回は対穴熊の必至問題を作りました。

 

 

 

【問題】

 

問題図は、後手が今△7一金打と受けたところです。

ここで▲7二馬は詰めろにならず、△7八と上(参考図)で負けてしまいます。

 

 

 

 

問題図から後手玉を詰めろの連続で寄せ切ることが本当にできるでしょうか?

 

この問題は

初手~9手目まで分かれば三段以上、

11~23手目まで分かれば五段以上、

24~40手目まで分かればプロレベル、

最後まで分かれば名人級です。

 

ノーヒントで解けるのは穴熊に習熟したプロだけだと思います。

読者のみなさまは問題を解く前に、まずは以下の予備知識を学びましょう。

 

 

 

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【予備知識】

 

この問題を解くために、次の予備知識を使いましょう。

 

上図の局面では、先手の持ち駒(飛、角、金、銀)の枚数が5枚以上あれば必至、3枚だと必至はかかりません。

4枚の場合は、駒の種類によって、次のように必至の有無が決まります。(△7四とがいない場合もほぼ同じです)

 

①金銀4枚・・・✖(▲5三金に△6九飛と受けられて続かない)

②飛金金金(23点)・・・〇(▲5三金以下)

③飛金金銀(21.5点)・・・〇(▲5三飛以下)

④飛金銀銀(20点)・・・〇(▲5三飛以下)

⑤飛銀銀銀(18.5点)・・・✖(▲5三飛に△4一角で逃れ)

⑥角金金金(21点)・・・〇(▲5四角以下)

⑦角金金銀(19.5点)・・・〇(▲5四角または▲5三金以下)

⑧角金銀銀(18点)・・・✖(▲5四角に△6三角で際どく逃れ)

⑨角銀銀銀(16.5点)・・・✖

⑩飛飛金金(26点)・・・〇(▲5二飛または▲5三飛以下)

⑪飛飛金銀(24.5点)・・・〇(▲5二飛または▲5三飛以下)

⑫飛飛銀銀(23点)・・・〇(▲5二飛または▲5三飛以下)

⑬飛角金金(24点)・・・〇(▲5四角以下)

⑭飛角金銀(22.5点)・・・〇(▲5四角以下)

⑮飛角銀銀(21点)・・・〇(▲5四角以下)

⑯角角金金(22点)・・・〇(▲5四角以下)

⑰角角金銀(20.5点)・・・〇(▲5四角以下)

⑱角角銀銀(19点)・・・〇(▲5四角以下、ただし長手数)

⑲飛飛角金(27点)・・・〇(▲5四角以下)

⑳飛飛角銀(25.5点)・・・〇(▲5四角以下)

㉑飛角角金(25点)・・・〇(▲5四角以下)

㉒飛角角銀(23.5点)・・・〇(▲5四角以下)

㉓飛飛角角(28点)・・・〇(▲5四角以下)

 

(付記した点数は、飛8点、角6点、金5点、銀3.5点としたときの点数です。

このように点数をつけると、ちょうど19点がボーダーラインになります。)

 

 

 

 

また、上図の局面では、先手の持ち駒(飛、角、金、銀)の枚数が5枚以上あれば簡単な必至、

3枚の場合は、飛飛金・飛飛銀の場合を除いて必至はかかりません。

4枚の場合は、駒の種類によって次のように必至の有無が決まります。(△7四とがいない場合もほぼ同じです)

 

①金金金金(20点)・・・〇(▲6三金以下)

②金金金銀(18.5点)・・・〇(▲6三金以下)

③金金銀銀(17点)・・・〇(▲6三銀以下)

④金銀銀銀(15.5点)・・・✖(▲6三銀△6二金▲5二銀△7二銀で千日手)

⑤銀銀銀銀(14点)・・・✖

⑥飛と金銀3枚・・・〇(▲6三金または▲6三銀以下)

⑥角金金金(21点)・・・〇(▲6三金以下)

⑦角金金銀(19.5点)・・・〇(▲6三銀以下)

⑧角金銀銀(18点)・・・〇(▲6三銀以下)

⑨角銀銀銀(16.5点)・・・✖(千日手)

⑩大駒2枚以上・・・〇

 

(今度は17点がボーダーラインになります。)

 

 

この予備知識をもとにして、問題を解いてみましょう。

攻め方は、上図の局面になったときに持ち駒が揃っていれば成功、そうでなければ失敗となります。

 

 

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【解答】

▲7一飛成△同 銀 ▲同飛成 △同 金

▲同 馬 △8二銀 ▲同 馬 △同 玉

▲6二金 △7二金 ▲9一銀 △同 玉

▲7二金 △8二金 ▲同 金 △同 玉

▲6二金 △7二金 ▲9一銀 △同 玉

▲7二金 △8二銀 ▲6二金打△7一銀打

▲7一金右△同 銀 ▲同 金 △8二銀

▲7二金打△7一銀 ▲同 金 △8二銀

▲7二銀 △7一銀 ▲同銀成 △8二角

▲7二銀 △7一角 ▲同銀不成△7二金

▲8二銀 △同 金 ▲同銀成 △同 玉

▲6二金 △7二金 ▲同 金 △同 玉

▲5三金 △6二金 ▲6三金打△同 金

▲6一銀 △同 玉 ▲5二角 △7一玉

▲6三金 △7二金 ▲同 金 △同 玉

▲6三金 △8二玉 ▲6一角成△1二飛

▲7二金打△9一玉 ▲7一馬 △7二飛

▲同 金(解答図) 迄69手必至

 

 

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【解説】

 

問題図からの指し手

▲7一飛成△同銀▲同飛成(第1図)

 

問題図から、まずは▲7一飛成△同銀▲同飛成と飛車から先に切っていくのが好手順です。

 

かえて▲7一馬△同銀▲同飛成だと、△8二金打(参考図)で詰めろが続きません。

(以下▲7二馬は△同金▲7一金△8二金打で千日手)

 

 

さて、第1図でA△8二金打は▲7二馬△同金▲同竜で駒が増えて寄るので、B△7一金と取るしかありません。

 

 

第1図以下の指し手

△7一同金▲同馬(第2図)

 

さて、第2図での後手の受け方ですが、

まずA△8二金には▲6二金(参考図)で、

後手は7二や6二に金駒を打ちつけて受けるしかありませんが、

▲同金と取って攻め駒が5枚になるので寄りです。

 

B△1二飛は▲7二金△同飛▲同竜△8二金▲同竜△同玉▲6二飛(参考2図)以下簡単な寄りです。

 

したがって、後手の受け方はC△8二銀ぐらいしかありません。

 

 

 

第2図以下の指し手

△8二銀(第3図)

第3図以下、

A▲7二銀は△7一銀▲同銀成の形が悪く、以下△1二飛▲7二金△8二金▲同金△同玉(参考図)で失敗しています。

(参考図以下▲7二金△同飛▲同成銀△同玉と清算しても、飛金銀の持ち駒では寄らない)

 

 

戻って第3図では、当然ながらB▲8二同馬と切るのが手筋です。

 

 

第3図以下の指し手

▲8二同馬△同玉▲6二金

さて、先手は大駒を全部切ってしまいましたが、小駒だけで寄せ切れるでしょうか?

 

 

 

第4図以下、A△7一金に対しては▲同金△同玉▲6三銀(参考図)と進めて寄せ切ることができます。

(予備知識問題2のパターン③に該当します。これが必至となることが本問では非常に重要です。)

以下は色々な変化がありますが、

a△6二金は▲5二銀打△6三金▲6一金△7二玉▲7一金打△8二玉▲6三銀成

b△6一金は▲5二銀打△6二金打▲6一銀成△同金▲5二金△8二飛▲6一金△同玉▲5二金△同飛▲5三金△7二飛打▲5二銀成△同飛▲6三金

c△8二飛は▲5二金△同飛▲同銀成△6三飛▲5一飛△6一香▲同成銀△同飛▲6三銀

でどの変化も必至がかかります。

 

 

 

したがって、第4図ではB△7二金が最善の受けです。

 

 

第4図以下の指し手

△7二金(第5図)

 

 

さて、第5図でA▲7二同金は、△同玉▲5三金に△6六飛(参考図)と受けられて続きません。

(予備知識問題のパターン①に該当)

 

困ったようですが、

第5図ではC▲9一銀と端に送りつつ金銀を入れ替える手段があります。

 

 

 

第5図以下の指し手

▲9一銀△同玉▲7二金△8二金▲同金△同玉▲6二金△7二金▲9一銀△同玉▲7二金

 

 

先手は▲9一銀~▲7二金の送りの手筋を繰り返し使って金銀を入れ替えました。

 

第6図は後手の持ち駒に金がないので△8二金が打てません。

またA△8二飛とするのは▲同金△同玉▲6二金△7二金▲同金△同玉▲5三金(参考図)以下寄ります。

(予備知識問題のパターン②に該当)

(以下△6六飛には▲5二飛△6二歩▲6一金以下の必至)

 

 

 

したがって、第6図ではB△8二銀と受けるしかありません。

 

 

第6図以下の指し手

△8二銀▲6二金打△7一銀打▲同金右△同銀▲同金

第7図までの手順中、△7一銀打にかえて△7一香は▲8二金△同玉▲7二金打△同香▲7一銀△9一玉▲8二金までの詰みがあります。

したがって△7一銀打は仕方のないところですが、▲同金上△同銀▲同金で先手は銀を得し5枚の攻めになりました。

 

 

第7図以下、A△8二金なら▲7二金打△同金▲同金△8二金▲同金△同玉▲6二金(参考図)と進みますが、

これは第4図から先手の持ち駒が純粋に金一枚増えており、このサイクルを繰り返すと後手の金銀がいずれはなくなるので先手勝ちです。

またB△2七角の受けなら▲7二金打△8二金▲同金△同玉▲7二銀△同角成▲同金△同玉▲5三金(参考図=第14図)以下必至です。

 

 

よって第7図ではC△8二銀が後手の最強の応手です。

 

 

第7図以下の指し手

△8二銀

先手は金銀5枚の攻めになったものの、寄せ切るまではまだ簡単ではありません。

 

 

第8図でA▲8一金は筋が良い手ですが、

△同玉▲6二金△7一金▲6三銀△6一銀(参考図)のとき▲6四桂が打てないので寄せ切れません。

 

 

 

また第8図でB▲7二銀だと△7一銀▲同銀成△8二銀▲7二銀△7一銀▲同銀成△8二銀となり、これを繰り返すと千日手です。

ただし、後手の持ち駒に銀がなければ△8二銀とは打てないので、後手の持ち駒に銀がなくなるように指し進めます。

 

 

第8図以下の指し手

▲7二金打△7一銀▲同金△8二銀▲7二銀△7一銀▲同銀成

 

さて、第9図では後手は持ち駒に銀がないので、ここで△8二銀とは打てません。

 

 

A△8二金だと▲7二金△同金▲同成銀△8二金▲同成銀△同玉▲6二金(参考図)で、

第4図から先手の持ち駒が純粋に銀一枚増えており、このサイクルで先手が勝ちます。

 

 

B△1二飛だと▲7二金△8二金▲同金で、

a△同玉なら▲7二銀△同飛▲同成銀△同玉▲5三飛(参考図)以下、

(予備知識問題のパターン④に該当)

b△同飛なら▲7二金△1二飛▲8二金で、

甲△同玉なら▲7二銀△同飛▲同成銀△同玉▲5三飛以下、

(予備知識問題のパターン⑤に該当)

 

乙△同飛なら▲7二飛△6二金▲8二飛成△同玉▲7二銀△同金▲同金△同玉▲5三飛以下、

(予備知識問題のパターン④に該当)

それぞれ必至となります。

 

 

 

C△2七角だと▲7二金△8二金で、

以下、✖▲8二金△同玉▲7二銀△同角成▲同成銀△同玉は、以下▲5四角に△6三角で僅かに必至がかかりません。

(予備知識問題のパターン⑧に該当)

 

困ったようですが、〇▲6一銀(参考図)と、持ち駒の入れ替えを試みるのが上手い攻め方です。

 

以下、

a△6二金なら▲8二金△同玉▲7二銀打△同金▲同銀成△同角成▲同金△同玉▲5三金(参考図=第14図)以下必至となります。

(予備知識問題のパターン⑦に該当)

b△1八角打なら▲8二金△同玉▲7二銀打△同角成▲同銀成△同角成▲同金△同玉▲5四角(参考図)以下必至となります。

(予備知識問題のパターン⑰に該当)

 

c△1二飛なら▲8二金で、以下

1.△同玉は▲7二銀打△同角成▲同銀成△同飛▲同成銀△同玉▲5四角(参考図)以下、

(予備知識問題のパターン⑭に該当)

2.△同飛は▲7二金△1二飛▲8二金で、

甲.△同玉は▲7二銀打△同角▲同銀成△同飛▲同成銀△同玉▲5四角以下、

(予備知識問題のパターン⑳に該当)

乙.△同飛は▲7二飛△同角成▲同銀成△1二飛▲8二成銀で、

壱.△同玉は▲7二銀△同飛▲同成銀△同玉▲5四角以下、

(予備知識問題のパターン⑳に該当)

弐.△同飛は▲7二飛△6二金▲8二飛成△同玉▲7二銀△同金▲同成銀△同玉▲5四角以下、

(予備知識問題のパターン⑭に該当)

 

 

それぞれ必至となります。

 

 

 

 

さて、第9図で後手に残された最後の受けの手段はD△8二角です。

銀の代わりに角の代用がきけば千日手に持ち込めそうですが、どうでしょうか?

 

 

第9図以下の指し手

△8二角

第10図以下▲7二銀△7一角までは必然ですが、

そこで普通にA▲同銀成だと△8二銀▲7二銀△7一銀▲同銀成△8二銀で千日手になってしまいます。

攻めに窮したようですが、持ち駒に角が入り戦力が増したので、ここではB▲同銀不成から収束に向かう手が成立します。

 

 

第10図以下の指し手

▲7二銀△7一角▲同銀不成

 

 

 

第11図以下の指し手

△7二金▲8二銀打△同金▲同銀成△同玉▲6二金

第12図は、第4図と比べると持ち駒の銀が角に換わっただけですが、この違いが収束をもたらします。

 

 

第12図以下、A△7一金は▲同金△同玉▲6三銀(参考図)以下必至がかかります。

(予備知識問題2のパターン⑦に該当)

 

 

 

よって、第12図で後手はB△7二金が最善です。

 

 

第12図以下の指し手

△7二金

第12図では先手の持ち駒の条件が揃っているので、収束に向かうべくB▲7二同金と取ります。

 

 

第13図以下の指し手

▲7二同金△同玉▲5三金

(予備知識問題のパターン⑦に該当)

これでついに、予備知識問題のパターン⑦の形になりました。

第14図の▲5三金にかえて▲5四角でも必至ですが、▲5三金のほうが明快です。

 

 

第14図以下、

A△6六飛なら▲5四角△6三歩▲6二金打△8二玉▲7一銀△9一玉▲7二金で必至、

B△5二金の犠打にも▲5四角△5三歩▲5二金以下寄りです。

よって後手は△6二金と受けるのが最善ですが、それでも収束に向かいます。

 

 

第14図以下の指し手

△6二金▲6三金打△同金▲6一銀△同玉▲5二角△7一玉▲6三金

▲6三金~▲6一銀~▲5二角が収束へ向かう決め手です。

 

第15図以下、

A△8二飛は▲6一金の一手詰。

よってB△7二金と受けるしかありませんが、ここから11手で完全な必至です。

 

 

第15図以下の指し手

△7二金▲同金△同玉▲6三金△8二玉▲6一角成△1二飛▲7二金打△9一玉▲7一馬△7二飛▲同金まで必至

最後はきれいな必至となりました。

 

 

 

問題図から数えて69手もかかる必至問題でした。

読者のみなさまはどこまで解けたでしょうか?

 

 

金銀を入れ替えることで局面を打開していくのは、対穴熊の面白いところです。

ただし非常に高度な技術なので、プロでさえそのような順を逃して千日手になることは良くあります。

 

 

 

おしまい。