以前ブログに取り上げた定跡について、少々改良すべき点があったのと理解が深まったので、書き直すことにした。
角換わり腰掛け銀の▲4八金2九飛型で後手が△4四歩と突いてくる先後同型の形は、
先手優勢と認識されているのであまり指されることはないのだが、非常に興味深い定跡となっている。
第1図以下の定跡
▲4五歩△同歩▲同銀△5五銀▲2四歩△同歩
▲2五歩
第2図が後手にとって大きな分岐点で、△4四歩と△2五同歩がいずれも有力である。
近年のプロの対局ではもっぱら△2五同歩が多いが、この定跡については下記ブログを参照してほしい。
今回改めて書きたいと思うのは、第2図から△4四歩の変化だ。
評価値上は先手有利となるものの先手が指しこなすのが極端に難しく、面白い変化をいくつも含んでいる。
第2図以下の定跡
△4四歩▲2四歩
ここで定跡は△2二歩だが、①△2八歩▲同飛△3九角と②△2八歩▲同飛△4五歩の変化があるのでそれぞれ見ておこう。
第3図以下の変化①
△2八歩▲同飛△3九角▲3八飛△4八角成▲同飛
△4五歩
後手はあっさりと2枚替えに成功しており、先手はここで▲2八飛や▲7五歩では弱い。
▲6三角と豪快に打つのが良い手だ。
変化1図以下の指し手
▲6三角△同金▲7二角△8二飛▲6三角成
▲6三角に飛車を逃げると▲4五角成が手厚いので△同金と取るよりなく、▲7二角△8二飛▲6三角成までは進む。
以下△6二金なら▲4五馬が厳しい。よって後手は攻め合ってくる。
変化2図以下の指し手
△4六銀打▲7三馬△3九角▲3八金△4八角成▲同金
△2八飛▲3八桂△3七銀成▲同金△9二飛▲7九玉
△2九飛成▲8八玉
変化2図以下の指し手も重要だ。
△3九角に▲4九歩は△同角成▲同歩△5七銀成で一気に危なくなるので、▲3八金としっかり受ける。
以下△4八角成▲同金△2八飛にも▲3八桂と一貫して受けに回るのがよいだろう。
変化3図まで進めば先手玉はだいぶ安全になり、先手は駒損も回復している。
以下△8六歩▲同歩△1九竜▲7四馬△2四銀には▲8七銀としっかり受ける。
手番が来たら▲9二馬△同香▲7二飛△3三玉▲4三歩といった要領で攻めていけば先手が優勢だろう。
第3図以下の指し手②
△2八歩▲同飛△4五歩▲2三歩成△3九銀▲3二と
次に△2八歩▲同飛△4五歩の変化も見ていこう。
以下▲2三歩成に△3九銀が後手の切り返しで、変化4図までは一直線に進むところだ。
後手はここで△4六金と押さえる一手だが、以下の変化もかなり難しいので見ておこう。
変化4図以下の指し手
△4六金▲2五桂△3九角▲3八金△4八角成▲同飛
△2九飛▲3三桂成△同玉▲2三歩
△4六金には▲2五桂と跳ね出す一手。
以下後手は銀を逃げるのは利かされで、▲6三銀が入って先手良しとなる。
従って後手は△3九角と攻め合うのが最善で、以下▲3八金△4八角成▲同飛までは一本道に進む。
以下、△2八飛なら▲3三桂成△同玉▲4九歩と進んだとき後手に攻めがなく先手優勢である。
よって、後手は香取りを含みに△2九飛と攻めるが、▲3三桂成△同玉に▲2三歩が好手となる。
以下A△2三同玉なら大きな利かしで、▲4九歩と受けておいて次の▲4二角を狙う。B△2三同飛成なら▲6三銀でよい。
いずれにしても先手が良い局面になっているだろう。
ここまでで、第3図で後手が定跡を外す変化を見てきたが、いずれも上手くいかないことが分かったので定跡に戻る。
第3図以下の定跡
△2二歩▲5六銀△同銀▲同歩△4七銀▲5七玉
第3図で後手は△2二歩と受けるのが定跡である。後手は2筋を凹まされるのは痛いものの、△4七銀に期待している。
対して先手は▲5七玉と受けるしかなく、第4図を迎える。
さて、第4図から△4八銀不成は悪くないが、▲同玉のあと角と金の持ち駒だけでは後手に有効な攻めがない。
一例として、
A△3五歩▲同歩△1五歩▲3六角△5四歩▲4七銀△1六歩▲7五歩
B△3五歩▲同歩△4六金▲4七歩△5六金▲5七歩
C△4六金▲4七歩△5六金▲5九飛△5七角▲同飛△同金▲同玉
のような変化があるが、いずれも後手の攻めが細すぎて繋がらない格好だ。
従って、第4図では△3六銀成が定跡となっている。
第4図以下の定跡
△3六銀成
一般向けの定跡書は第5図で終わる。
第5図はタイトル戦でも現れており、以下▲5八玉△3五歩と進んでいる。
△3五歩は▲6三銀△同金▲7二角に△4七銀▲同金△同成銀▲同玉△3六角▲5七玉△8二飛の返し技を用意した手で、
こうなると先手は▲6三銀を打てないので一気に決着がつくことはない。
面白いのは第5図でいきなり▲6三銀と打つ手で、まだプロの実戦例はないものの最も有力とされている。
今回のブログの趣旨は、この先の変化を詳細に検討しその成否を確かめることである。
第5図以下の定跡
▲6三銀
第6図以下△3七成銀は、▲6二銀成△4五桂▲6七玉△4八成銀▲4三歩△同金▲6八金(変化6図)で先手優勢となる。
よって、第6図では△6三同金が定跡である。
第6図以下の定跡
△6三同金▲7二角△3七成銀
▲7二角の両取りに構わず△3七成銀が良い手で、第7図以下、
①▲6三角成△4八銀成▲同玉△4五桂、
②▲8一角成△4五桂▲6七玉△4八成銀▲8二飛△5二銀▲6八金△4三玉
の変化はいずれも後手優勢だ。
従って、第7図で先手は▲3七同金が定跡だ。
第7図以下の定跡
▲3七同金△4五桂▲4七玉△3七桂成▲同玉
第7図までの手順中、△4五桂に▲6七玉は△3七桂不成が飛車に当たるのが痛く、
以下▲8一角成△2九桂成▲6三角成△2四銀の変化は後手良しだ。
よって先手は自陣の守りの金銀から離れても桂を取り切るしかないが、第8図は玉の位置がひどい。
プロ間でこの定跡が指されないのには上のような理由があるからなのだが、
結論を出せる可能性があるので、今回のブログではこの局面からの変化を詳細に検討してみる。
さて、第8図で後手が攻め合うとすれば△4五歩ぐらいだが、▲4七歩と受けられるとこれ以上の攻め合いは難しい。
よって第8図で後手はひとまず飛車取りを受けるべきである。逃げ場所として、
4一、5一、7一だと▲6三角成~▲6二銀が当たるし、8四では受けに働かないので、①8二か②3一の二択になる。
この2つはどちらも有力で変化がたくさんあるので、一つ一つ調べていこう。
第8図からの定跡①
△8二飛▲6三角成△2四銀
まずは△8二飛から検討する。
以下▲6三角成が4一金以下の詰めろで普通は先手が楽勝なのだが、△2四銀が盤上この一手の妙防だ。
第9図以下、
A▲2四同飛は△4六銀▲同玉△3五角▲5五玉△2四角で飛車を抜かれて大変。
B▲7三馬は△3三桂の味がよく後手良しだ。
C▲4一銀は△3三玉▲7三馬△4二金▲8二馬△4一金と進んでこれも大変。後手の攻め駒が増えると先手玉も危ない。
したがって受けることになるが、
D▲4八玉は△4六銀と押さえられるのが厳しく、以下▲6八金は△4七金▲5九玉△5七銀成▲6九玉△8六歩▲同歩△4六角▲5九金△6八成銀▲同金△5七金▲5九銀△8八歩で後手良し。
よって玉以外の駒を動かすことになるが、
E▲6八金は△4五角▲7三馬△3六金▲4八玉△5六角で後手優勢。
F▲4七歩も△4五角▲7三馬△3六金▲4八玉△5六角で後手優勢。
後手は△4五角~△5六角の筋をケアする必要がある。
G▲6七金は以前のブログで有力としていたが、△1三桂▲4八玉△2五桂で、以下
a▲4七金には△4五歩▲5七金左△4六銀▲3八歩△4七銀成▲同金△3五銀、
b▲3八歩には△4六金▲5七金打△3六角▲同馬△同金▲6三角△2七銀(参考1図)で後手有利であることが分かった。
先手は万策尽きたようだが、後手のあらゆる攻めをクリアする手がたった一つだけあった。
第9図以下の定跡
▲5八銀
この手の意味は、次の▲4八玉を見せて後手の攻めを催促することと、
△4五角▲7三馬△3六金▲4八玉△5六角に▲7九飛△4七銀▲5七玉(変化7図)の受けを用意したことである。
後手は△4五角とは指し切れないので、(ア)△3五銀、(イ)△6二金、(ウ)△1三桂が有力手となる。
第10図以下の定跡(ア)
△3五銀▲4八玉
△3五銀に▲7三馬は△4六銀打以下危ないので▲4八玉と早逃げする一手だ。このとき▲5八銀の存在が心強い。
第11図以下、
・△4五角▲7三馬△5六角には▲4七金とはじいて、以下△7八角成▲8二馬△4五歩▲6四馬の進行は先手優勢だ。
・△3六角はA▲7三馬なら△4六銀と出る狙いだが、B▲4三歩△3三玉▲3六馬△同銀▲5一角△4三玉▲5四桂△5二玉▲7三角成で寄せ切れる。
・△4六銀打はA▲3八歩なら△4五角▲7三馬△5六角が厳しいがB▲3八金と受けるのが好手で、以下a△4五角▲7三馬△5六角▲4七歩△3六銀▲4九桂(変化8図)、b△3三桂▲6四馬△4五桂▲4九桂で先手が受け切れている。
従って第11図では△4六銀が最有力だ。
第11図以下の定跡
△4六銀▲4七金△4五歩▲4三歩△同玉▲6四馬
△4六銀の突進には▲4七金と当てて受ける。
以下△同銀成▲同銀となれば先手の陣形が整ってしまうので、後手は△4五歩と繋ぐ一手だ。
以下▲4五同馬は△3三桂の活用がピッタリで後手良し、▲7三馬も△4七銀成▲同銀△4六銀で後手良しだが、
▲4三歩△同玉を利かして▲6四馬が好手だ。
第12図で△4二飛なら▲7三馬として、次に▲4四歩△3三玉▲4六金△同歩▲同馬と指していけばよい。
後手の有力手は△3五角だが、あと数手で先手優勢がはっきりする。
第12図以下の定跡
△3五角▲4四歩△3三玉▲5七桂
△3五角に▲4九桂でも悪くないが、▲4四歩が勝る。
以下、△4二玉や△5二玉なら拠点が大きいので、▲6八金と一旦受けておいてよい。
△3三玉が最善の頑張りだが、これには▲5七桂がピッタリで先手優勢だ。
第10図以下の定跡(イ)
△6二金▲6四馬△6三歩▲7四馬
続いて第10図から(イ)△6二金の変化をみてみる。以下▲6四馬△6三歩▲7四馬までは必然の進行だ。
第14図から△3五銀▲4八玉△4六銀は悪手で、▲3八歩と受けられると後手は金を手放しているのでこれ以上の攻めがない。
第14図では、△6二金~△6三歩で馬を追ったことで(あ)△3三桂が生じており有力だ。
また、受けに回るなら(い)△2三歩が有力だ。
第14図以下の定跡(あ)
△3三桂▲4八玉△4五桂▲3八歩△3五銀▲5五桂
△3三桂に▲2四飛は△4五桂▲4七玉△4六銀▲同玉△3五角▲4七玉△2四角で飛車を抜かれるの▲4八玉がよい。
以下△4五桂に▲4九桂だと先手の攻めがなくなるので大変な将棋になる。桂を温存して▲3八歩が最強の受けだ。
以下後手は△3五銀と攻めるぐらいだが、先手はこのタイミングで▲5五桂と反撃して第15図を迎える。
第15図以下
・△4六銀は▲4三歩△5二玉▲4二金△6一玉▲3二金△5七銀▲5九玉△4八角▲6九玉△5八銀不成▲7九玉△5七角成▲8八玉△7二玉▲2二飛成の攻め合いで先手優勢だ。
・△5二玉は▲4三金△同金▲2二飛成△4二金打▲1一竜が厳しく、以下△4六銀▲5九玉△5五銀▲同歩△5七銀▲7一銀が一例で先手優勢だ。
従って第15図では、次の▲4三金~▲2二飛成を防ぐ必要があるので、(甲)△3三玉、または(乙)△2三歩が有力である。
第15図以下の定跡(甲)
△3三玉▲5九玉△8六歩▲同歩
△3三玉に対して先手はすぐの攻めがないので▲5九玉とひく一手で、後手はこのタイミングで突き捨てを入れる。
第15図以下、△8八歩は▲同金△5七銀▲4七金△4六銀上▲同金△同銀成▲6八玉△3六角▲4七歩△同成銀▲同銀△同角成▲7八玉が一例で先手優勢だ。
よって後手は単に△5七銀と打つが、あと数手で形勢がはっきりする。
第15図以下の定跡
△5七銀▲6八金△4六銀上▲2三歩
最終手▲2三歩が攻めを見切った好手である。
第16図で後手は詰めろを掛けるのが難しいので△2三同歩と取るぐらいしかないが、
先手はそこで▲5七金として、以下
A△5七同桂成▲4三金△同金▲同桂成△同玉▲2三飛成△5二玉▲5七銀(△同銀成は▲6四桂以下の詰み)
B△5七同銀成▲4三金△同金▲同桂成△同玉▲2三飛成△5二玉▲5七銀(△同桂成は▲4二金以下の詰み)
の順で先手勝ちだ。
第15図以下の定跡(乙)
△2三歩▲5九玉△2四歩▲6三桂成△同金▲同馬
△8六歩▲同歩△8五桂▲同歩△4六桂▲4九銀
後手は△2三歩型で攻めても反動が厳しいので△2四歩まで伸ばして先手に手を渡す。
これには先手も▲6三桂成以下攻め合うしかなく、第17図まで自然な進行である。
第17図以下、
A△5七桂成▲6八金打△4七成桂▲6九玉△3八桂成▲同銀△同成桂▲2七飛
B△5七桂成▲6八金打△5六成桂▲7四馬△9二角▲7三馬△8五飛▲8六歩△8一飛▲8四桂
C△3六角▲6八金打△5七銀▲7三馬△4七角成▲4八歩
の進行ならば先手がやれる。
そこで後手は△8八歩だが、これには次のような手順があって先手優勢だ。
第17図以下の定跡
△8八歩▲同銀△5七桂成▲6八金打△5六成桂▲5七金打
△8八歩に▲同金は△5七桂成▲6八金△7九角で崩壊するので▲同銀と取るしかない。
以下△5七桂成▲6八金打にA△4七成桂は、▲6九玉△3八桂成▲同銀△同成桂▲2七飛で問題なく先手が優勢だ。
問題はB△5六成桂で、以下a▲7四馬なら△9二角▲7三馬に△8五飛と走れるので後手優勢となる。
しかしb▲5七金打という受ければ先手が指せるようだ。
第18図以下は、
A△6七歩▲5六金△6八歩成▲同玉△4七銀▲5七金△3八桂成▲4七金△2九成桂▲5四歩
B△4七銀▲同金△同成桂▲6九玉△3八桂成▲同銀△同成桂▲5九飛△5二金▲7三馬△8五飛▲6四桂
の順が一例で先手優勢だ。
第14図以下の定跡(い)
△2三歩▲4八玉△8六歩▲同歩△8三銀▲7五歩
△3三玉▲4五歩
続いて第14図から△2三歩と受けに回る変化を見る。
先手は▲7五桂と攻めたいが、玉が3七だと反動が厳しすぎるのでひとまず▲4八玉だ。
先手は次に▲7五桂を打てれば勝ちだが、手番は後手なので△8六歩▲同歩△8三銀と馬を捕りにくる。
以下▲7五歩に、A△8五歩なら▲4三歩△同玉▲2二歩と攻めていって先手優勢だ。
そこでB△3三玉の早逃げだが、これには▲4五歩と合わせるのが良い手である。
第19図は△4五同歩なら▲4四歩が厳しいし、他の手でも▲4四歩の取り込みが厳しく先手優勢だ。
第10図以下の定跡(ウ)
△1三桂▲4八玉△2五桂▲3八歩
最後に第10図から△1三桂の変化を見る。
△1三桂にA▲7三馬は△2五桂▲4八玉に△3八角があって後手良しなので、B▲4八玉と早逃げする。
以下△2五桂にA▲4七金もあるが先手だけ持ち駒を使わされてやや守勢になるので、B▲3八歩で凌ぎたいところ。
ただしこれには△4五角以下かなり際どい変化があるので、覚えておく必要がある。
第20図以下の定跡
△4五角▲7三馬△5六角▲4七金△7八角成▲8二馬
第21図以下、A△5六銀なら▲6二飛△3三玉▲6四飛成△5四金▲5六金△同馬▲4七銀△同馬▲同銀△6四金▲同馬で先手優勢だ。
よってB△5六金が有力で、▲6二飛△3三玉▲6四飛成には△6七銀とつなぐ手を用意している。
第21図以下の定跡
△5六金▲同金△同馬▲4七金△3七銀▲同歩
△同桂成▲同玉△4六金▲同金△2九飛成▲3八桂
△5六金に対して先手は▲同金△同馬▲4七金とはじくことになるが、△3七銀以下本譜の強襲がある。
先手は駒得が大きいのでしのげるかどうか。
第22図以下、△1九馬は▲2八銀△1七飛▲2七桂で受かるので、△2八飛の方が厳しい。
第22図以下の定跡
△2八飛▲4七銀打△2七金▲4八金△3八金▲5七玉
△3七金▲4九金
先手は駒得を生かして物量で受ける。
第22図以下の定跡
△4五桂▲6七玉△4七金▲同銀△7八銀▲5六玉
△3七成桂▲5五玉△4七成桂▲6四玉△4六成桂▲6五桂
△4五桂▲6七玉△4七金▲同銀までは必然の進行。
ここでA△3七桂成も有力だが、▲5八銀△4八成桂▲6四馬△4九成桂▲5七飛△3三玉▲3六桂で先手優勢となる。
よってB△7八銀~△3七桂成だが、これには守備駒を見捨てて上部に脱出していく。
第24図まで進めばようやく先手優勢がはっきりした。
第8図から△8二飛の変化については以上で結論が出た。
後手としてはどの変化でも▲7三馬が飛車取りになるのが痛かったので、△8二飛に代えて△3一飛のほうがよさそうだ。
第8図からの定跡②
△3一飛▲6三角成△2四銀
続いて第8図から△3一飛を検討していく。
以下▲6三角成△2四銀までは△8二飛型と同じだが、以降の変化は変わってくる。
第25図以下、
A▲2四同飛は△4六銀▲同玉△3五角▲5五玉△5四金▲同馬△同歩▲6四玉△2四角▲5三銀△3三玉▲5二銀打△2三玉▲4三歩△3七角▲6三玉△6五桂で後手良し。
B▲7三馬は△3三桂で後手勝勢。
よって受けることになるが、
C▲4八玉、▲6八金、▲4七歩にはやはり△4五角が厳しい。
C▲5八銀にも4五角で、以下▲7三馬が飛車取りにならないので△5六角で後手が大優勢だ。
従って先手は5六の地点を受けるしかないが、
▲4七金や▲5七金だとかえって目標にされてしまうので▲6七金でギリギリ耐えにいくのが最有力である。
第25図以下の定跡
▲6七金
第26図以下、
A△3五銀は▲4八玉で、以下
a△4六銀は▲5二金△3三玉▲2四銀△4三玉▲5三馬までの詰み。
b△3六角は▲5二金△3三玉▲2四銀△同銀▲3六馬で角を抜いて先手勝勢。
B△5八角は▲5七金△3六銀▲同馬△同角成▲同玉△3三桂▲4六歩△2五桂▲4七玉△3六角▲4八玉△3七金▲5九玉△4七金▲6八玉△5七金▲同玉△5八金▲6七玉△4七角成▲2八飛△3三玉▲6三角まで一本道の変化で先手優勢だ。
C△2三歩や△3三玉には▲4八玉で、以下△4六金にも▲3八銀と受けておけば攻めが続かない。
後手玉としては自玉の受けもないので、先手玉が不安定なうちに攻め切るしかない局面になっている。
そこで、(ア)△3五銀打、(イ)1三桂が有力である。
第26図以下の定跡(ア)
△3五銀打▲4八玉△3六角▲6四馬
△3五銀打▲4八玉にA△4六銀と攻めるのでは▲3八銀ぐらいで続かないので、
B△3六角と馬に当てながら攻めていくしかないところだ。
先手もA▲3六同馬△同銀とはできないのでB▲6四馬で凌ぎにいく。
第27図以下、後手は△4七金と攻めてくるが、あと数手で形勢がはっきりする。
第27図以下の定跡
△4七金▲3九玉△4六銀▲4八歩
第28図は後手の攻めが切れている。
以下△4八同金▲同玉△4七角成▲3九玉で、以下
A△3七銀成は部分的に必至だが、ちょうど馬が利いているので▲同馬△同馬▲4八銀で完全に切れる。
B△2九馬▲同玉△6九飛▲3九歩△3五銀上も▲7八角△4九飛成▲3八銀△4八竜▲6八金で後手に手がない。
第26図以下の定跡(イ)
△1三桂▲4八玉△2五桂
検討すべき変化のうち最後に残されたのが△1三桂~△2五桂だ。この変化が最も複雑である。
第29図以下、A▲5八玉のような早逃げはうまく行かない。
具体的には、以下△3七桂成▲6八玉△8六歩で、以下
a▲8六同歩△8七銀▲7八銀△3五角▲4六歩△5八金▲7九玉△4六角▲6八金打△8五桂▲8七銀(かえて▲8五同歩は△8六歩で後手勝ち)△7七桂成▲同桂△6八金▲同金△6七金▲7八金打で千日手。
b▲8六同銀は△3八成桂▲2七飛△3七成桂▲同飛(かえて▲2九飛は△3八成桂で千日手)△4六角▲5七飛△4七金▲5八銀△7九銀▲7八玉△5七金▲同銀△5八飛▲6八金打△同銀成▲同銀△5七金以下後手勝ち。
また、B▲3八歩には△4六金が好手で、以下
a▲5七金打には△3六角▲同馬△同金▲6三角△2七銀で後手良し。
b▲6四馬には△4七銀▲5九玉△5六金△同金▲同銀成で難解だ。
よって第29図では▲4七金と受ける一手だ。
第29図以下の定跡
▲4七金
第30図以下、△4五歩には▲5七金左として、以下△4六銀なら▲4四銀で先手が指せる。
後手の有力手としては(あ)△4五角、(い)△3七銀があるので個別に検討していく。
第30図以下の定跡(あ)
△4五角▲6四馬△3六銀▲3八歩△4七銀成▲同玉
△3五銀▲5七玉
△4五角▲6四馬にA△3五銀は▲5七金左△3六銀打▲同金△同銀(かえて△同角は▲3七歩で先手優勢)▲5八玉で先手が指せるので、B△3六銀とする。
対して先手はA▲5七金左だと△4七銀成▲同金△3六金が厳しいのでB▲3八歩と受け、以下△4七銀成▲同玉△3五銀と進む。
ここで先手はA▲5八玉かB▲5七玉だが、A▲5八玉は△6三金▲2八馬△2七金▲同馬△同角成▲同玉△3六角の王手飛車の筋があるのでB▲5七玉が勝る。
第31図以下、(甲)△4六金と(乙)△1七桂不成が考えられるので、以下の変化を検討する。
第31図以下の定跡(甲)
△4六金▲6八玉△5六金▲同金△同角▲6七銀
△3八角成▲2五飛
△4六金と打てば第32図まで一直線に進んで先手が指せる。以下、
A△4七馬には▲4三銀△同金▲2二飛成△3二金▲3三金△同金寄▲5四桂△5二玉▲3一竜まで必至。
B△2四金には▲4五桂△同歩▲3五飛△同金▲4四銀△4三金▲5四金△4四金▲同金△4三金▲5四桂△3二玉▲2四銀まで必至。
C△3三玉には▲3七金△4八馬▲5七桂が厳しく、以下△2四金なら▲2八飛が馬当たりで先手大優勢だ。
第31図以下の定跡(乙)
△1七桂不成▲同香△1八角成▲5九飛
△1七桂不成はひねった攻め方だが手ごわい。
以下▲同香△1八角成にA▲4三歩のタタキは筋だが、△同玉▲5九飛以下ねじり合いが続くので歩損のほうが大きい。
単にB▲5九飛として後手に手を渡すほうが勝る。
第34図以下、
A△3六馬▲6八金△4六馬▲同馬△同銀▲6七玉
B△1七馬▲7三馬△2六馬▲3七銀△2七玉▲6八玉
の進行は先手優勢だ。
よって、後手は(壱)△6三金、または(弐)△8六歩▲同歩△6三金として先手の馬に働きかけるのが有力だ。
第34図以下の定跡(壱)
△6三金▲9七馬△8六歩▲5五桂
△6三金▲9七馬に△8六歩が手筋で、▲同馬や▲同歩とは取りにくいが、▲5五桂が好手だ。
以下、
A△6二金▲4三歩△同金▲6八玉△3三金▲8六馬
B△8七歩成▲同馬△8一飛▲8七歩△6四金▲6二銀
C△8一飛▲8六歩△6二金▲6八玉△3三玉▲7五歩△6四金▲8七馬
の進行が一例で先手優勢だ。
第34図以下の定跡(弐)
△8六歩▲同歩△6三金▲3七馬△3六金▲4八馬
△8六歩には▲同歩と応じるしかなく、第36図まで自然な進行だ。
以下、
A△1七馬▲4三歩△同金▲5五桂△4六銀▲6八玉△5五銀▲同歩△3五馬▲7八玉
B△3三玉▲6八玉△1七馬▲5八馬△2七馬▲7八玉△3八馬▲6八馬
の進行で先手優勢だ。
第30図以下の定跡(い)
△3七銀▲同金△同桂成▲同玉△3五銀
最後に第30図から△3七銀の変化を検討する。
以下▲同金△同桂成▲同玉△3五銀の局面は後手が桂損したようだが、先手に金を使わせたことが後手の主張だ。
第36図以下、A▲4八玉には△3六角が厳しい。このとき、先手は持ち駒に金が無いので▲5二金~▲2四銀~▲3六馬で角を抜きにいく筋がなく、▲4三歩にも△同金▲2二飛成△3二金で受かっており後手勝勢だ。
ほかに適当な受けもないので先手が窮したようだが、ここではB▲4三歩と先に打つ手があって解決する。
第36図以下の定跡
▲4三歩
以下、A△同金には▲2二飛成△3二金に▲5四桂がきくので後手玉が詰む。
また、B△4三同玉には▲4八玉として、
以下a△3六角なら▲5五桂△3三玉▲2四銀△同銀▲3六馬、b△4六金には▲2五桂で後手は受けがない。
よって後手はC△3三玉の一手だが、先手とすればこの利かしが入ったのが大きい。
第37図以下の定跡
△3三玉▲4八玉△4六金▲5三馬△4七金▲5九玉
△5八金▲同玉△4七角▲6八玉△2九角成▲7八玉
△3三玉▲4八玉に後手は△4六金ぐらいしか攻めがないが、構わず▲5三馬が好手だ。
以下後手は△4七金~△5八金~△4七角で飛車を抜くしかないが、先手は手にのって左辺に逃げ込む。
第38図は△2八飛の一手なので、以下の変化を検討しよう。
第38図以下の定跡
△2八飛▲6八金打△5六金▲同金△同馬▲6七銀
△7九金▲同玉△6七馬▲6九金打
第39図までは一直線だ。後手は3枚の攻めが繋がるかどうか。
以下、
A△6八馬は▲同銀△5八銀▲同金△同飛成▲4二銀△2三玉▲6九銀で受かる。
B△8六歩は▲3一馬△同金(かえて△8七歩成は▲3二馬△同玉▲8二飛△2三玉▲8七飛成)▲6七金△8七歩成▲6八金打で受かる。
よって後手が攻めを続けるには△5八銀しかないところだ。
第39図以下の定跡
△5八銀▲同金上△同馬▲7八銀
△5八銀▲同金上△同馬のとき、A▲6九金打△同馬▲同金△6七金▲6八銀打△7七銀▲同桂△5八銀▲同金△同飛成▲4二銀△2三玉▲5九金打でも受かっているが、B▲7八銀が勝る。
以下、A△8六歩は▲5八金△8七歩成▲同銀△5八飛成▲4二角△2三玉▲6九金で受かる。
B△5七歩は▲3九金△2七飛成▲4二銀で良い。
よって後手はC△6八馬と取るしかないところだ。
第40図以下の定跡
△6八馬▲同銀△5八金▲5九銀打
後手は△6八馬▲同銀に△5八金と張り付くが、今度は▲5九銀打と受けるのが好手である。
かえて7七6九に打ってもよいが、5九に打つのが最も変化を与えない。
以下、A△5九同金▲同銀の形は攻めがないので、△6八金と取る。
第41図以下の定跡
△6八金▲同金△5八金▲7七銀右
後手の持ち駒を入れ替えさせたことで▲7七銀右が成立して千日手の筋は解消される。
第42図以下の指し手
△6八銀▲8八玉△7七銀不成▲同銀△6九金▲6八桂
△6八銀▲8八玉△7七銀不成にA▲同桂は△7八金で受けが難しいのでB▲同銀の一手だ。
以下△6九金にA▲9七玉は△9五歩▲同歩△9四歩が詰めろで大変なので、B▲6八桂で手を稼ぐのが好手だ。
第43図以下の定跡
△6八同金▲3一馬△同金▲5一角
△6八同金に▲3一馬~▲5一角で一気に寄せていく。
角を渡したことで先手玉が詰めろだが、第44図以下
A△4三玉は▲3三飛△5四玉▲4七金、
B△2三玉は▲3三飛△2四玉▲3一飛成△2五玉▲3七銀
が詰めろ逃れの詰めろで先手勝ち。
よって、C△4二桂の捨て合いだが、桂を使わせれば先手玉への詰めろが消えるので▲同歩成でよい。
以下▲7八金△9七玉△7九角▲8八桂△7七金には▲3二と以下の詰みがある。
第8図から△3一飛の変化についても以上で結論が出た。
最後に第2図および第6図を再掲する。
第2図以下△4四歩▲2四歩△2二歩▲5六銀△同銀▲同歩△4七銀▲5七玉△3六銀成に▲6三銀(再掲第6図)が成立し、
先手優勢となることが確かめられた。
おしまい。