聞く耳を持つ人と持たない人 | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

僕は以前、『傷は乾燥させるな』という記事を書いた。
リンクを貼ろうと探してみたど、記事が多すぎて見つからない(;'∀')

要は『バンドエイド』なんて使ってはいけない。『キズパワーパッド』などの『ハイドロコロイド』系の絆創膏を使うべし、という記事だった。



貼った瞬間に痛みが止まる。傷跡が残らない。こんなすごいものは、今現在ハイドロコロイド系のパッドしか存在しない。

しかし、世間には相変わらず『バンドエイド』の類は売っているし、もっと信じられないことに『マキロン』も売っている。

傷口を消毒なんて、絶対してはいけない。

子供の頃は、擦り傷や切り傷をよく作ったものだ。そんなとき、たいていは傷口の汚れを落とし、痛い痛い消毒薬を塗り、絆創膏を貼るといった処置をしたものだ。

しかし、その消毒薬は通常の皮膚の細胞自体を破壊してしまうし、皮膚を病原菌から守ってくれている常在菌まで殺してしまう。

僕たちの子供の頃は『うさぎ跳び』をやらされた。
腹筋運動は足を伸ばしてやった。
運動中は『水を飲んではいけない』と厳しく指導された。

『卵』は食べ過ぎてはいけないと言われた。
僕は茹で卵好きの板東英二を、大丈夫だろうかとハラハラして見ていたものだ。

これらすべての常識であったものが、あるとき覆った。

ただ、懸念していることがある。サランラップ療法だったろうか、水道水で傷口を洗い、ラップを傷の上にぴったりと貼るという治療法が話題になった。それだけで傷がきれいに治ると。

ラップは水や水蒸気をまったく通さないし吸水力もない。傷口を適切な環境に保つのは難しいだろう。細菌感染の恐れだってあるかもしれない。
あくまでこれは、応急処置にとどめておくべきだと僕は思う。

今日も僕は、長財布にハイドロコロイドパッドを複数忍ばせている。
キズパワーパッドのマツキヨバージョンだ。



そのほとんどが、自分のために使われることはない。
しょっちゅう生傷が絶えないほど、僕はおっちょこちょいではない。

僕はハイドロコロイドパッドの伝道師。

その伝道師は痛い目も見ている。思い出したくない表情さえある。
ケガをしていると見るや、見知らぬ人にも声をかけるからだ。

それがブログタイトルになっている。

先月だったか、スーパーの駐輪所から自転車を出すと、ちっちゃい女の子がお母さんに抱かれてすごい勢いで泣いている。

そのお母さんは、濡れティッシュみたいなもので子供の手をしきりに拭っている。
いつもなら自転車にまたがって走り去っている場所だけれど、僕は気になって仕方がなかったから自転車を押した。

もしや子供が手にけがを!? 痛くて泣いているんじゃないのか!?
心臓の鼓動がどんどん高まる。

僕は様子を見ながら自転車を押した。
けれどどうにもよく見えない。どうするべきか……僕にできることをすべきなんじゃないのか。恥ずかしがり屋でシャイな僕の心は揺れる。

子供は泣き止まない。
振り返った僕はこらえきれなくなって、押していた自転車を反転させてその親子に向かった。

「怪我しちゃったの?」
僕は女の子に問いかけた。

「なんでもありません!」
そっぽを向いたお母さんが言い放った。

「もう、あんたがおっきい声で泣くから」
その隣のお父さんも無言だった。

あ……そうですか。
僕は自転車を再び反転させた。

彼らは一度も、僕を見ることはなかった。
例えば子供が実際に怪我をしていたとして、あんたにいったい何ができるの? って問われている気がした。

とても心はしぼむけれど、それでも僕はめげない。
少しでも救えるなにかがあるなら僕は声をかける。

ものすごく馬鹿みたいでも。
それがきっと、僕が僕であることの証明だと僕は信じたい。


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