クジラの彼 | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

『元気ですか? 浮上したら漁火がきれいだったので送ります』彼からの2ヶ月ぶりのメールはそれだけだった。

聡子が出会った冬原は潜水艦乗り。いつ出かけてしまうか、いつ帰ってくるのかわからない。そんなクジラの彼とのレンアイには、いつも7つの海が横たわる……。

表題作はじめ、『空の中』『海の底』の番外編も収録した、男前でかわいい彼女たちの6つの恋。有川浩がおくる制服ラブコメシリーズ第1弾。

「BOOK」データベースより



関東地方の台風も過ぎ、曇りと日差しを繰り返すいつもの公園で『クジラの彼』を読み終えた。糖度の高い有川浩の文体にも慣れたのだろうか、眉を顰(ひそ)めることもなく読み終えた。

5歳の娘を膝に抱いた榛名高己の回想から始まる物語『ファイターパイロットの君』はなかなかよかった。
『空の中』の登場人物榛名高己と、F-15パイロットの女子自衛官武田光稀のアナザーストーリーだ。
結婚してたんだね。

娘の誕生日に間に合わせようと娘の背丈ほどのテディベアの人形の入った背嚢を背負い、駐車場のランドクルーザーに走る光稀。しかしハンドルを操り帰り着いた家に娘の笑顔はなかった。寝てしまったのだ。
涙が出るストーリーだった。

そんな中でも『国防レンアイ』が一番好きかな。男女で好みが分かれそうな短編集だった。

『海の底』の夏木と望の『有能な彼女』もよかった。会話の展開が僕の意表を突き続けるから、有川浩はやっぱり女なんだなと思った。

持っていて損はない一冊だと思う。
読んでではなく、持っていて、である。短いから読み返してもいいだろう。

突っ込みどころはほとんどなかったから、『塩の街』や『空の中』に比べ有川浩は明らかに上手くなっている。ひとりの作家の成長をまざまざと見せつけられた思いだ。


話は変わって、ここしばらく僕がブログを書かなかったのには理由がある。
終戦の8月が近づいているからだ。

陰りゆく愛に』で現在と過去を行き来する男を題材に特攻を描いたけれど、戦争をもうひとつ取り上げたい。そう思ったのだ。

真珠湾攻撃を候補に挙げて資料を集めたけれど、難しい。
なぜなら、小説の登場人物が何を語ろうと自由なのだけれど、実在の人物山本五十六となればそうもいかないからだ。

「眠れる巨人を起こし奮い立たせたも同然ではないか」
映画『トラトラトラ』で真珠湾攻撃後に山本五十六が発した言葉だ。標的とする空母がいなかったからだ。空母を叩き、早期の講話を計る、それが五十六の狙いだった。

眠れる巨人扱いされたアメリカでは拍手喝采だけれど実際の山本五十六はそんな言葉は口にしていない。

宣戦布告後の攻撃のはずが、手違いもあって掟破りの奇襲となってしまったことをひどく残念がったのだけは確かだ。

実在した人物を使って嘘は書けない。嘘を書いてはいけない。
かといって、僕は連合艦隊司令長官山本五十六の人となりを知っているわけでもない。日頃どんなしゃべり方をする人だったのかも知らない。

僕が知っているのは断片的だ。

”常在戦場”を藩風・藩訓する越後長岡の出身。
敬愛してやまない長岡の大先輩である河合継之助と山本帯刀を心の支柱にしていた。
博打が強かった。お妾さんもいた。
日独伊三国同盟にも、日米開戦にも反対だった。

残念だけれど、うん、たぶん間に合わないな。


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