─prologue─
一陣の風が、街路に立つ銀杏の並木を吹き過ぎた。
もぎ取られた枯れ葉は夜の街に舞い上がり、さながら蝶の乱舞を思わせた。
枝と葉、揺るぎなく思われた親密な関係は終わりを告げた。
為す術もなく舞う枯れ葉はやがて地面に落ちて、人に踏まれ車に潰され茶色い欠片となって消えてゆくのだろう。
しんしんと降りてくる12月の冷気に、夜空は凛と冴え渡り、風に押されるように家路を急ぐ人たちは、コートの襟を合わせ、マフラーに顎を埋め、風に乱れる髪に手をやった。
そんな午後の8時を過ぎたころ、その空に突如現れたのは、きらめき渡る光の波濤だった。
眩いばかりのプラチナのそれは、コバルト色の尾を引きながら落ちてきた。
深く藍をたたえる師走の空を、静かに、けれど恐ろしいほどの速さで落ちてきた。
20☓☓年、空から魔王が降ってきた。

【12月21日 ○○新聞社会面】
謎の発光物体と消えた自衛隊機
20日午後8時頃、東の空に左上から右下に向かって光る物体が落ちたという110番通報が相次いだ。
飯田山に落ちたのは、発火した航空機なのではないかという目撃者の具体的な証言から、○○県警はヘリを差し向けると同時に県知事は自衛隊に対し「航空機墜落に関する災害派遣」を要請した。
しかし同夜飛び立った県警のヘリも捜索のため出動した2機の航空自衛隊機も忽然とその姿を消した。
○○空港事務所からはその時刻に飯田山付近を飛行していた航空機はないと返答があった。
燃える飛行機の墜落ならプラチナ色にはならないことからUFO説も飛び出している。
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