ミーちゃんのリクエスト | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

あのデブが言うのよ。ほら、あのシロコロホルモンが間違えて人間になったみたな脂だらけのデブがさ。

「君は笑顔がないんだよ」だってさ。
聞いてるミーちゃん。笑顔がないんだってさ。
あんたの歪な笑いのほうがよっぽど怖いっての。
ヒアリよヒアリ。毒よ毒。我が身を知らないって怖いねえ。

ウェルダンにしちゃおうかしら、脂が抜けるまで。
あー、でも煙だらけになっちゃうね。消防車来ちゃうね。ウゥーウゥーって。

ミーちゃん、もっと味わって食べなさい。
それ高いのよ。600円近くするんだから。

んーとね……炙り鮭とば……北海道産秋鮭使用だって。
道南冷蔵だって。函館だって。

鮭トバって硬いのが多いでしょ。それ柔らかいでしょミーちゃん。あたしが思うに、鮭トバのチャンピオンね。

女も三十路になると歯を大事にしなくちゃね。まあ、鮭トバで歯を折っちゃった人なんて聞いたことないけどね。でもさ、いそうだよね。

だからぁ、もっとゆっくり食べなさいって。
もう、ほら、これで最後だよ。あとはあたしのおつまみだからね。あ、このバタピー湿気ちゃってる。
ミーちゃん食べる? 食べないかぁ。

あー洗濯面倒くさい!
今夜はやらなくていいって? そだねミーちゃん。

あのさ、あのバサマが言うのよ。
「手が遅いのよぉ」って。
あんたのほうがよっぽど遅いっての。あれで生きていけるんだから平和よねえ。
手が早いのは盗人だけで充分よねえ。

あ、誰かあたしの心を盗んで! みたいな。
なんでそこだけちゃんと聞いてるのミーちゃん。

それにさ、今日なんてさ、ほら、聞きなさいって。
「化粧濃くない?」だって。
あんたのほうがよっぽだっての。漆喰壁みたいな顔してさ。笑ったらさ、ビシッて音するよ絶対。だから笑わないのね。
それにさ、額の横っちょがテカってんの。更年期かしらね。

ミーちゃん、あたしはそこそこ頑張ってるよね?
それにさ、ミーちゃん聞いてる? あたしはそこそこきれいよね? まあ、そこそこだけどね。



ミャアミャアだとうぅ!

あんたね、飼い主をいたわるってできないの?
そんなこと言ってるとね、怖いおばさんが来るよ。こわーいおばさん。

来た、来た、ほら来た、ほら来たぁ!

ちーがーうーだろー
違うだろー!

ミーちゃん、逃げろぉ!
ヤマトに売り飛ばされちゃうぅ!
トットコ、トットコ

さて、みーちゃん、今夜は何が聴きたい?
あ、気が合うねぇ。

さ、聴こうかミーちゃん。
あたし、眠くなってきちゃったよ。
飲み過ぎ?
大きなお世話様。

いつもありがとね、ミーちゃん。

うん? 泣いてないよぉ。
泣いてないってばミーちゃん。

溜息ながして 何かを捨てよう
黄昏の街 ひとりで生きてゆく
知っていることが 辛いことだと
涙の中を泳いで あゝブルース

片意地張って生きてゆく
小さな肩が重いから
今夜は誰か 一緒にいて
長いパイプをくゆらせて あゝブルース

みんなみんな夢だから
生きて泣いて辛いから
今夜は誰か一緒にいて
黒い子猫がうるさくて あゝブルース


あゝブルース/内藤やす子
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童



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