「母さんに訊けって」
「何を?」
「なんで美裕が写っているのかってこと」
「あんたたちはね」言葉を切った母が、ふぅっと息を吐いた隣で、祖母がすっと目を閉じた。
「双子なのよ」
繋がった。美裕が僕の母を、お母さんと呼んだ意味。
だけど、僕には姉や妹などいなかった。美裕が母や祖母に見えない理由は、ただひとつ。美裕がこの世の人ではないからだ。

けれど、今確かに、隣に座っている。
やっぱり少し、困った顔をして。
「ヒロちゃん、美裕ちゃんに最初に会ったのはいつなの」祖母がちょっと首を曲げた。
「小学校の三年生の時だよ」
「その時さ、何かなかった」
「何かって?」
「ヒロちゃんの身に、何か変わったことはなかったの」僕はテーブルに視線を落とした。
「ううん、ヒロちゃんだけじゃなくても、周りとか誰かとか、何か困ったことはなかったの」
僕は目を閉じて、ソファの背もたれに背中を預けた。
「んーん……」
「あったのね」
「うーん……まあ、確かにそうだね」
「何があったの?」
言いたくはなかった。けれど、励ますように美裕がトントンと肩口を叩いた。
「もう、過ぎたことでしょ」
「うん」僕は美裕の言葉に頷いた。
母と祖母を交互に見た。そして口を開いた。なんでもないことを話すように。
「いじめにあってた。うん……とてもひどかったな」
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