「ノストラダムスの大予言って信じる?」
幹線道路の信号を渡ると、車の通りの少ないまっすぐな道が延びていた。
僕たちは男女6人ぐらいで学校から帰る途中だった。
何人か集まって歩くと、後ろを向いたり横を向いたり、くるくる回って話をする奴がいたりする。
「信じたくない」女子のひとりが顔をしかめる。
「あれ、絶対本当だよ」
「やだ、やめて」
「俺、読んでない」
「貸してやろうか? 1999年7番目の月、空から恐怖の大王がやってくるんだぜ」
「○○は読んだ?」
「読んだ」
「どお、どお」
そいつはやっぱり、くるくる回りながら話をしている。
「空から何かが落っこちてくるんだろうかね。ちょっと怖いは怖いよね」僕は頷いた。
「1999年って、もうおっちゃんだよ。そんな先まで、俺、生きてないかも」誰かが口にする。
「そんな奴に限って生きてるんだってば」
東京出身のそいつは、相変わらずくるくると回りながら話をしている。

「あ!」そいつが立ち止まり、後方を見つめたまま大きく目を見開いた。
「え?」全員が振り返る。
「なにあれ!」
「なんだあれ!」
「いやだ、なにあれ!」
僕たちは呆然と立ち尽くした。
何かがこっちへ猛然と迫ってきている。誰もが見たこともない光景だった。
地面の色を変えながら迫ってくる、そのけぶる壁を見て僕はようやく口を開いた。
「雨じゃないの?!」
「ウソだ!」
「ウソでしょ!」
「雨だってば!」僕は迫る壁をじっと見つめたまま口を開いた。
「雨だ!」逃げるように走り出す奴がいた。
「ウソだ!」
音が迫ってくる。僕は立ち尽くし、その雨を迎え撃った。
雨はたちまち僕たちを襲った。
間もなく止んだ雨は通り過ぎることはなかった。普通に止んだ。
できれば、劇的に後ろ姿も見せて欲しかった。
「ひでえ」
「雨がこんなふうに降るなんて」
「信じらんね」
通り雨の洗礼を受けた僕たちはずぶ濡れになった。僕は長い髪を犬みたいに左右に振った。
「お前、天パーが余計ひどくなったな」
僕の声に、くるくる回る男は情けない顔をした。

雨って上から降ってくるものだった。
壁となって迫ってくる雨なんてものを見たのは僕たちだけじゃないのか。
すごい……僕はかなり感動した。
男たちはどうでもいいけど、女子が哀れだった。
だって、みんな電車に乗って帰るのだから。
「やだもう」開き直って半分笑う女子。
「山田うどん食べてく?」誰かが言った。
「腹へったよね」僕は同意した。
「もう、どうでもいい」ずぶ濡れの女子のひとりが投げやりに言った。
何に対して、どうでもいいんだろう? なかなかに意味不明な言葉だった。
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