「リバイバル」の八切莊には狭いながらも台所がついていたが、僕が実際に住んでいたのは、6畳一間にトイレと台所が共同のアパートだった。
実家にいた頃はインスタントラーメンぐらいしか作ったことがなかった僕は、料理というものを全く知らなかった。
今つらつらと思い出してみても、私鉄沿線にある僕の住む街にはスーパーがなかった。だから、パンはパン屋で、野菜は八百屋で、お肉は肉屋で買った。
おぉ~豚こまが断然安い。
よし、これを砂糖醤油で味付けして食べよう。

そう、僕はこれぐらいしか味付けを知らなかった。そのルーツって、実家で食べてたお餅じゃん……。
そして、共同台所でその豚こまを油で揚げた。ジュージューシュワシュワ音がする。
もう、いいかな?
頃合いを見ておもむろに片手鍋に移し、砂糖と醤油を適当に入れて火に掛けた。
できあがったものにレタスを添えて、マヨラーの僕はずよずよとマヨをかけた。もちろんキューピー。
炊きあがったご飯でそれを食べた。
美味しかった。もう無上に美味しかった。
お皿に残った砂糖醤油とマヨに、残ったご飯を投入してわしわしと口に掻き込んだ。
こんな美味しいものが世の中にあるのかと思われるぐらい、美味しかった。

そして次の日、残った豚こまでまた同じものと作ろうと台所へ行った僕は、異変に気がついた。
こ、これはなんだ! 何が起こったんだ!
なんと、フライパンの油が真っ白に固まっているではないか。
そう、豚こまの油が固まっていたのだ。
背脂ではないけど、要はラードである。でも、そんなことを僕は知らない。
あ~! 油がダメになっちゃった!
でも、お肉をダメにするわけにはいかない。
それに、また食べたい。
泣く泣く油を捨てた僕は、またもや豚こまを揚げた。
油がもったいないと泣きつつも、それをその後、何度繰り返したろう。
僕は、炒めるということさえ知らない男だった。
何て男らしいんだ!
─続く─
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