「続」剣(つるぎ)伝「12」 | 風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」

─風─

「苦戦だなミランダ」
「シャメーナ様、お力を」隣で膝をついたミランダが両手を組んで頭を下げた。ミネラもそれに倣った。地表に小さくまとまった二つの影が並ぶ。ミネラはミランダの影を見つめて、たいした力にもなれぬ己を恥じた。

「見えないとのことだな」
「はい、まったく見えません」ミランダは顔を上げた。ミネラもシャメーナを見上げた。なんと柔和で神々しい顔をしているのだろう。
「そこの切り株でよい。腰掛けなさい」

「では訊こう、見えるとはどういうことだ」
「そこにあるものが、この目に映ることでしょうか」ミランダは人差し指を目の前に立てた。

「では、見えぬとはどういうことだ」
「そこにないことですか」
「いや、風は見えぬであろう。けれど存在し、木々を揺らす」
「はい、確かに」
「ものが動くときには、大なり小なり風を起こすものである、その風を感じて闘うがよい。風を感じぬ時は風を受けよ。魔物の悲しい性として、彼らはさらに醜悪になりつつある。風はお前たちに味方するに違いない」
「風、ですね。はい、ありがとうございます」



「ただひとつ、気がかりなことがあるが、それは手立てを教える類のものではなく、お前たちで解決してゆくしかない。どう判断を下そうと、悔やまぬことだ」
「それを、その気がかりなことを、教えていただくわけにはまいらぬのでしょうか」
「この世には、聞かぬ方がよいこともある」

シャメーナの助言はこれだけだった。
ミランダはなぜ、それだけですかと訊かないのだろう。これしきの助言で闘えるのだろうか。しかし、イシュリムが手立てを求めるほど偉大な人に向かって、自分だって訊けるだろうか。
ミネラはシャメーナの言葉の意味を反芻した。

「闘いはやがて終わる。どんな結果が待っていようとも、怖じけず進むことだ。魔物にも一片の良心はある。魔物の剣は魔物を斬ることにおいて、もっとも威力を発揮する」
シャメーナは諭すように、穏やかに頷いた。


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