移ろいゆく季節の中に、僕たちはいくつもの忘れ物をしてゆく。
命萌ゆる春に、眩い夏に、枯れ葉色の秋に、無彩色に沈む凍える冬に。
何かの拍子にすぐに思い出される色彩や匂いもあれば、記憶の襞(ひだ)に永遠に閉じ込められる景色や面影もある。栞(しおり)を忘れて閉じたページは、容易に探し出せないから。
それらは時として、頬や肩をつつくときがある。思い出せと言わんばかりに。
***
To My Dearest
親愛なるあなた お誕生日おめでとう。
二人に吹く5月の風はさわやかですか?
それとも、三人かな(笑)
あなたは今、何をしていますか? あなたの目の前に、ううん、もちろん隣でもいいんだけど、そこで私は笑っていますか?
子供はどっちですか? 男の子? それとも女の子? 女の子なら私に似ておてんばでしょうか。男の子なら、あなたに似てはにかみ屋さんでしょうか。
もしも、もしもだけれど、あなたのそばに私が存在しなかったら、この手紙は読み捨ててください。今も一緒に楽しく暮らしていたら、ひとつだけお願いがあります。
僕はそこまで読んで、もう一度差出人の名前を確認した。それは僕の実家に届いた、未来に住む僕に宛てた手紙だった。
そのそばで、いたずらっぽく笑っている自分の姿を、彼女はイメージしていたに違いない。
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