あり余るほどの情熱と、夢と、希望。
そして、ポケットに忍ばせたコイン。
ついさっきまで明るかったのに、空は黄色く赤くその色を変え、辺りには夜の帳(とばり)が降りた。
夜陰に紛れ込む不思議な話し声に耳をそばだてれば、
かすかに聞こえる誰かの足音。
足下を照らす明かりは乏しすぎて、辺りを窺(うかが)うこともままならない。
だから、どれほど歩いたのかを知るすべもない。
星も見えない夜空を仰ぎ、だいぶ歩いた気がするんだけど、と呟けば、
そうだね、と声がする。
でも、進んでいないような気もする、と呟けば、
そうかもしれないと、また声がする。
自分の姿を写す鏡もなくて、今、自分がどんな顔をして歩いているのか、
どれほどの歳月をこの顔に刻み込んでいるのか、確かめようもなくて……。
なぜ歩いているのか、どこに向かっているのか、それすら思い出せない。
歩くしかないんだよ、と、笑いを含んだ声がする。
歩いていると、ある日突然足下の大地が消えてなくなる。それは一瞬さ。
だから心配なんていらない。そんな暇さえ与えてくれないから。
足下の大地が、消えてなくなる?
僕の呟きに、誰もが何かの囚(とら)われ人、俺もお前もそうさ、と、答えにならない声が返ってくる。
ポケットのコインの名前を知っているかい?
知らない。
そいつは、代償という名のコインさ。
ところでコインは、どれぐらい残っているんだい?
声の問いに、僕はポケットに手を突っ込み探ってみる。
以前はじゃらじゃらと音を立てていたコインが、ポケットの底でかすかな金属音を立てるだけになっている。
もうあまりない。
お前はずいぶん歩いてきた、俺に分かるのはそれだけだ。
何で?
そのコインは、時間だからだ、命の代償だからだよ。
そんなことより、僕は、どこから来て、どこへ向かっているのか、知りたいのはそれだけ。
茶番だよ。声の主はついに笑った。
僕の質問が?
いや、人生がさ。
そうかな?
僕は声の主に声を出さずに反論してみる。
本当に、そうかな?
自問してみる。
命を削ってまで求める答えなんて、ないんだよ。
声は静かに、まるで背を向けたかのように黙り込んだ。
光が放射なら、闇は吸収。すべてを吸い込みひっそりと佇む闇は、何も語らず何も放たない。
求める答えは闇に吸い込まれ、問いを発した者を探してもがく。
そこに向けて、たとえ頼りなくとも光を放てば、答えはきっと見えてくるはず。
答えは、僕を捜して頻(しき)りに呼びかけているはずだから。
Night Birds by Shakatak
夜を飛び回り flying through the night
風に乗り floating on the wind
街の灯の中へ to the city rights
ナイトバーズが その翼で愛をもたらす night birds with the lovely wings
ゆっくりと夕闇が訪れ slowly they descend
暗くなりゆく空を突きぬけて through the darkened sky
再び夜へと戻っていく to the night again
夜の鳥が 昼にさよならのキスをする night birds kiss the day good bye
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シャカタク/ナイトバーズ