皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。
胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。
かつて「不治の病」として恐れられていたウイルス性肝炎。治療が困難で、患者さんとそのご家族は長年にわたる不安と闘ってきました。しかし、医学の進歩は目覚ましく、その常識は大きく覆されています。特にC型肝炎は、飲み薬だけでほぼ100%の治癒が目指せる時代になりました。B型肝炎も、ウイルスの活動を長期的に抑制し、病気の進行を防ぐことが可能になっています。
この記事を読めば、最新の治療法が理解でき、いたずらに不安を抱く必要がないことが分かると思います。あなたやあなたの大切な人が、正しい知識で健康な未来を歩むための一助となれば幸いです。
1.C型は完治、B型は制御可能です
まず結論からお伝えします。ウイルス性肝炎の治療は劇的に進歩し、C型肝炎は飲み薬で完治でき、B型肝炎はウイルスの活動を完全に制御できる時代になりました。これは、肝炎治療における革命的な変化です。
C型肝炎は、DAA(直接作用型抗ウイルス薬)という飲み薬の登場により、8週間から12週間の服用で、95%以上の確率でウイルスを体内から排除できます。2025年現在、日本で使用されている主な治療薬には、マヴィレット、ハーボニー、エプクルーサなどがあり、ウイルスの型や肝臓の状態に応じて最適な薬が選択されます。副作用も少なく、ほとんどの人が通常の生活を送りながら治療を終えられるのが大きな特徴です
一方、B型肝炎は、ウイルスの性質上、体内からの完全な排除は現時点では難しいものの、核酸アナログ製剤という飲み薬でウイルスの増殖を強力に抑え、肝硬変や肝がんへの進行を未然に防ぐことができます。エンテカビル、テノホビル、ラミブジンなどの薬剤が使用されており、毎日1錠の服用を続けることで、健康な人と変わらない生活を送ることができるのです。
2.特効薬の登場で治療法が激変
なぜ、ここまで治療成績が向上したのでしょうか。その理由は、ウイルスの増殖メカニズムを直接阻害する「特効薬」が登場したからです。
C型肝炎治療の主役であるDAAは、C型肝炎ウイルスが肝臓の細胞内で増殖するのに必要な酵素の働きをピンポイントで妨害します。これにより、ウイルスは増殖できなくなり、やがて体内から消えていきます。かつての主流だったインターフェロン治療のような、つらい副作用に長期間耐える必要はもうありません。2025年7月には、急性のC型肝炎に対しても8週間の投与で高い治癒率を誇る治療薬が米国FDAで承認されるなど、進化は続いています。これにより、医療従事者は診断の時点で即座に治療を開始でき、慢性化を防ぐことが可能になりました。
一方、B型肝炎治療の中心である核酸アナログ製剤は、B型肝炎ウイルスの遺伝子(DNA)が複製されるのを防ぐ薬です。毎日1錠服用を続けることで、体内のウイルス量を検出できないレベルまで低く保ち、肝臓の炎症を鎮めることができます。これにより、肝機能が正常に保たれ、健康な人と変わらない生活を送ることができるようになるのです。B型肝炎治療市場は2024年に23億3000万ドルの規模があり、2032年には62億5000万ドルに成長すると予測されており、今後もさらなる治療薬の開発が期待されています。
3.最新の治療フローと費用
それでは、実際にB型肝炎、C型肝炎と診断された場合、どのような流れで治療が進むのか説明します。
*C型肝炎の治療フロー
まず血液検査でウイルスの遺伝子型(ジェノタイプ)を特定します。日本人に多いのは1型と2型です。次に、ウイルスの型や肝臓の状態、過去の治療歴に応じて、最適なDAAを選択します。2025年現在、慢性肝炎に対してはマヴィレットを8週間、ハーボニーやエプクルーサを12週間服用する方法が主流です。1日1~3錠の薬を決められた期間服用し、服用終了後、一定期間を経てウイルスが消えたかを確認します。ウイルスが検出されなければ、治療完了となります。
この治療は高額ですが、国の肝炎治療医療費助成制度を利用すれば、月々の自己負担額は所得に応じて1万円または2万円に抑えられます。経済的な理由で治療をためらう必要はありません。お住まいの都道府県の保健所や医療機関で申請できますので、ぜひ活用してください。
4.まずは検査で感染を知ろう
肝炎治療は、かつての「耐える治療」から「治す治療」「抑える治療」へと大きく変わりました。C型肝炎は飲み薬で完治を目指せ、B型肝炎も薬でコントロールすることで、健康な生活を維持できます。世界保健機関(WHO)も、2030年までにウイルス性肝炎の根絶を目指しており、ワクチンや治療法など効果的なツールが既に存在しています。
しかし、この恩恵を受けるためには、まず自分がウイルスに感染しているかどうかを知ることが第一歩です。世界中で慢性ウイルス性肝炎は年間130万人の死亡原因となっていますが、感染している人のほとんどは自分が感染していることを知りません。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出てからでは手遅れになることもあります。一生に一度は、肝炎ウイルス検査を受けることを強くお勧めします。検査は、お近くの保健所や医療機関で簡単に受けられます。
もし感染が分かっても、決して絶望しないでください。もはや肝炎は、正しく向き合えば克服できる病気なのです。早期診断と適切な治療が、命を救い、肝がんを未然に防ぐことにつながります。
このブログが、皆様の健康への第一歩となれば、これほど嬉しいことはありません。