皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。
胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。
福岡の外来では「胃潰瘍と分かっていてもお酒だけはやめられない」という相談をよく受けます。 少量なら大丈夫だろうと考えたくなる気持ちも理解できます。
しかし胃潰瘍とアルコールの相性は想像以上に悪く、命に関わる合併症につながることさえあります。
この記事では福岡の胃腸内科外科の専門医として、なぜ胃潰瘍で飲酒が絶対NGなのかを分かりやすく解説します。
1 胃潰瘍があるなら禁酒一択
最初に結論をはっきりお伝えします。
「胃潰瘍と診断されている間はアルコールは完全にやめる」これが基本方針です。
痛みが軽くなったからといって少しなら良いだろうと飲んでしまうと、治りが遅れ再発を繰り返しやすくなります。
アルコールは胃の粘膜を直接傷つけ、すでにできている潰瘍からの出血リスクを一気に高めます。さらに潰瘍を治す薬やピロリ菌除菌治療の効果も弱めてしまいます。
つまり飲酒を続ける限り、せっかくの治療が十分に働かない状態になるといえるのです。
2 アルコールが胃に与える三つの攻撃
⑴ 粘膜を直接荒らす
アルコールは消毒液と同じ性質を持ち、濃度が高くなるほど粘膜にとって強い刺激になります。 健康な胃であれば粘液や血流が守ってくれますが、潰瘍がある胃では防御力が著しく落ちています。 そこにアルコールが触れると、擦り傷に消毒液をかけた時のような強い痛みや出血が起こりやすくなります。
特に度数の高い焼酎やウイスキーをロックで飲む習慣は、潰瘍にとって大きなダメージです。 一度の飲み会くらいなら問題ないと考えがちですが、その一回で入院が必要な出血を起こす例もあります。 胃潰瘍がある段階では、少量でも火に油を注ぐ行為と考えるのが安全でしょう。
⑵胃酸を増やし守りを弱らせる
胃潰瘍は「攻撃因子である胃酸」と「守る力である粘膜防御」のバランスが崩れて起こります。 アルコールはこの両方に悪影響を与える点が問題です。
飲酒によって胃酸の分泌が増え、ただでさえ傷んだ潰瘍部分に強い酸が何度も浴びせられます。
同時にアルコールは胃粘膜の血流を悪くし、修復に必要な栄養や酸素が届きにくくなります。 胃を守る粘液の分泌も低下し、防御のバリアがさらに薄くなります。
結果として「攻撃だけ強く守りはスカスカ」という状態が続くため、潰瘍がなかなか塞がらないといえます。
⑴ 薬やピロリ菌治療の効果を落とす
胃潰瘍の多くは、胃酸を抑える薬やピロリ菌除菌治療でしっかり治すことができます。
ところが飲酒を続けると、薬の吸収が乱れたり、肝臓での分解が変化したりして効果が不安定になります。 特にピロリ菌除菌中の飲酒は、副作用を強めるだけでなく除菌成功率自体を下げる要因です。
また、痛み止めや睡眠薬など他の薬を併用している場合も、アルコールと組み合わさることで思わぬ副作用を招きます。 ふらつきや転倒、出血傾向の悪化など、胃以外のリスクも高まります。 治療期間中は「薬とお酒は一緒にしない」という原則を守ることが賢明でしょう。
3 具体例:こんな飲み方が危険サイン
⑴ 「少しだけ」「週末だけ」が続くパターン
外来で多いのが「ビール一杯だけなら飲んでいる」というケースです。
毎晩の晩酌をやめて量を減らしたつもりでも、潰瘍がある時期にはその一杯が悪影響になります。 週末だけ飲むスタイルでも、粘膜が回復する前に繰り返しダメージを与えている点は変わりません。
仕事の付き合いで断りづらいという相談もよく聞きます。
その場合は最初の一杯からノンアルコールビールやウーロン茶を選ぶ工夫が大切です。
「今は胃潰瘍の治療中なので」と正直に伝えると、意外と周囲は理解してくれることが多いといえます。
⑵ 胃薬を飲めば大丈夫と考えるパターン
市販の胃薬を飲んでおけば、お酒を飲んでも問題ないと考える方もいます。
しかし胃薬はアルコールの刺激を完全に打ち消すものではありません。
一時的に症状が軽くなっても、潰瘍そのものは水面下で悪化していることがあります。
痛みが治まったからと自己判断で通院をやめ、飲酒も再開する例では再発が非常に多くなります。 特に出血歴がある方や高齢の方では、次の再発時に大量出血や穿孔を起こす危険があります。「薬を飲めば飲酒もリセットされる」という考えは手放したほうが良いでしょう。
4 今日からできる禁酒と胃を守る習慣
まず「治療が終わるまでは完全に禁酒する」と期間を区切って決めてみてください。
終わりが見える目標にすると、我慢ではなく治療の一部として受け入れやすくなります。
同時に、飲み会の誘いにどう答えるか、代わりに何を飲むかを事前に決めておくと継続しやすいでしょう。
次に、食事と生活リズムを整える意識も持ってみてください。
脂っこい料理や辛いもの、夜遅い時間の食事を控えるだけでも、胃の負担は確実に減ります。睡眠時間を確保し、空腹で強いコーヒーを飲まないなど、小さな工夫の積み重ねが再発予防につながるといえます。
最後に、
胃の痛みや黒い便、吐き気、貧血症状がある場合は、早めに消化器専門医を受診することが重要です。 福岡には胃潰瘍と生活習慣の両方を丁寧にみる医療機関が多いため、一人で抱え込まず早めに相談されることを強くお勧めします。