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福岡の内科外科院長のブログ

福岡の内科外科院長のブログです。医療の事はもちろん、日々のクリニックでの出来事など投稿します。

皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。

胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。

 

胃の痛みやムカムカが続くと、「とりあえずガスター10を飲めば大丈夫」と考えてしまいがちです。しかし、胃潰瘍が隠れている場合、市販薬だけで対応し続けるのは危険なことがあります。ここでは胃腸内科外科の専門医の立場から、胃潰瘍が疑われるサインとガスター10の正しい付き合い方を、できるだけ分かりやすくお伝えします。

 

 

1 胃潰瘍が疑われる危険なサイン

 

 

胃潰瘍とは、胃の粘膜が深く傷つき、えぐれたような状態になっている病気です。胃酸やストレス、ピロリ菌、痛み止め(NSAIDs)などが原因となり、粘膜の防御機能が壊れてしまうことで起こります。

 

次のような症状がある場合、「単なる胃もたれ」ではなく胃潰瘍を疑う必要があります。

- みぞおち周辺の強い痛みが何日も続く 

- 空腹時や夜間にズキズキ痛む、食事で一時的に楽になる 

- 黒いタール状の便(黒色便)や、コーヒーかすのような吐血がある 

- 市販薬を数日飲んでも症状が改善しない、むしろ悪化する 

 

これらは胃の粘膜が深く傷ついて出血している可能性があり、放置すると穿孔(胃に穴があく)など命に関わる事態につながることもあります。こうしたサインがひとつでも当てはまる場合、自分で判断せず速やかに専門医を受診することが重要です。

 

 

 

 2 ガスター10はどんな薬か

 

 

ガスター10は、有効成分「ファモチジン」を含むH2ブロッカーというタイプの胃腸薬です。胃酸を作る細胞に働きかけて、出過ぎた胃酸の分泌を抑え、胃の痛みや胸やけなどの不快な症状を和らげます。

 

市販のガスター10に認められている効能効果は、「胃痛、もたれ、胸やけ、むかつき」といった一時的な胃の症状です。一方で、医療機関で処方される同じ成分のガスター(ファモチジン)は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬として、用量と期間をきちんと管理しながら使われます。つまり、市販薬のガスター10は「潰瘍を治す薬」ではなく、「症状を一時的に抑えるための薬」と位置づけられている点が重要です。

 

 

 

3 ガスター10の正しい使い方

 

 

ガスター10は、症状が出たときに頓服として使うタイプの薬です。成人(15歳以上80歳未満)の場合、1回1錠を水またはお湯で服用し、1日2回までが上限とされています。2回飲む場合は、必ず8時間以上間隔をあける必要があります。

 

飲むタイミングは、食前・食後・食間のいずれでもかまらないとされていますが、「症状が出たときに飲む」薬であり、決まった時間に飲み続ける薬ではありません。2週間を超えて連用しないことが重要です。そのため数日服用し症状が改善しない場合や、症状をくり返す場合は、自己判断で継続せず医療機関を受診することが推奨されています。

また、15歳未満の子どもは服用禁止であり、高齢者や腎機能が低下している人、他の薬を多く内服している人では、思わぬ副作用や相互作用が出る可能性もあります。

 

市販薬とはいえ、「3日間服用しても症状の改善がみられない場合は医療機関を受診」「2週間を超えて続けて服用しない」「用量を守る」が基本ルールです。

2週間を超える服用が必要な状況は、重篤な消化器疾患を見過ごす恐れがあるため、必ず医師の診療を受けてください。

 

 

 

4 胃潰瘍が疑われるときに絶対してはいけないこと

 

 

胃潰瘍が疑われる状態で気をつけたいのが、「ガスター10で痛みを抑えながら様子を見る」という対応です。確かに一時的に胃酸を抑えることで痛みが和らぐことはありますが、出血や穿孔といった重い合併症のサインを見逃すおそれがあります。

 

特に注意したいのは次のようなケースです。

- ガスター10を数日飲んでも、痛みやムカムカがぶり返す 

- 食欲低下や体重減少、貧血症状(だるさ、動悸)がある 

- NSAIDs(ロキソニンなどの解熱鎮痛薬)を慢性的に飲んでいる 

- ピロリ菌感染の既往がある、または家族に潰瘍歴が多い 

 

こうした場合は、鎮痛剤で痛みをごまかすのではなく、内視鏡検査(胃カメラ)で粘膜の状態を直接確認することが勧められます。自己判断で市販薬を飲み続けるほど、診断が遅れ、治療が長引く傾向があるので注意が必要です。

 

 

 

5 医療機関での治療とガスターとの違い

 

 

医療機関で胃潰瘍と診断された場合、ファモチジンなどのH2ブロッカーや、より強力なプロトンポンプ阻害薬(PPI)を一定期間きちんと服用し、潰瘍の治癒を目指します。ピロリ菌が関与している場合は、除菌療法を行うことで再発リスクを大きく下げられます。

 

処方薬のファモチジンは、通常1回20mgを1日2回、または1回40mgを1日1回など、病態に応じて用量や投与期間が細かく決められています。これは「胃潰瘍を治しきる」ことを目的として設計されているのに対し、ガスター10は症状緩和目的で、用量も潰瘍治療としては十分とはいえない設定になっています。そのため、「胃潰瘍の疑いがある段階でガスター10だけに頼る」という選択は適切とはいえません。

 

医療機関では、症状や生活背景、内服薬の有無を確認したうえで、必要に応じて血液検査や胃カメラを行い、潰瘍の有無や重症度を評価します。その結果に基づいて、ガスターを含む適切な薬の種類・量・期間が決まり、再発予防も含めた総合的な治療方針が示されます。

 

胃の痛みは「よくある不調」のように思えても、その裏側に重大な病気が隠れていることがあります。ガスター10は上手に使えば心強い味方ですが、「潰瘍を疑う場面では、あくまで一時しのぎに留め、診断と治療は専門医に任せる」——この線引きを意識しておくことが、安全で賢い付き合い方といえます。