朝、布団から起き上がるときに腰が重い。階段を降りるたびに膝がきしむ。夏のあいだは気にならなかったのに、涼しくなってきたとたんに体がつらくなってきた。秋が深まるこの時期、こうしたお悩みをお持ちの方は決して少なくありません。
「年のせいだから仕方がない」とおっしゃる方も多いのですが、無理のない運動を自宅で続けることで、腰や膝の負担が軽くなっていく方もいらっしゃいます。
この記事では、秋に腰や膝がつらくなりやすい理由、自宅でできるリハビリ運動5つ、そして「どんなときに医療機関へ相談したほうがよいのか」という目安をお伝えします。個別の診断や治療に代わるものではありませんが、毎日のセルフケアのヒントとしてお役立てください。
秋になると腰や膝がつらくなるのはなぜ?
秋の腰や膝の不調は「ひとつの原因」ではなく、いくつかの要因が重なって起こることが多いと考えられています。
朝晩の冷え込みで筋肉がこわばりやすくなる
気温が下がると、体は熱を逃がさないようにして、筋肉が緊張しやすくなります。腰や膝を支える筋肉がこわばると、動き始めに痛みやだるさを感じやすくなります。「朝起きたときや、座っていて立ち上がるときがつらい」という方は、このタイプが目立ちます。
夏の疲れや活動量の変化が関係することも
猛暑で外出を控え、歩く機会が減った方も多いでしょう。活動量が減ると、太ももやお尻、体幹の筋力が落ちやすくなります。こうした筋肉は腰や膝への負担をやわらげるクッションのような役割をしているため、弱ってくると関節や腰に負担がかかりやすくなります。
秋ならではの活動が増える
過ごしやすい季節になると、散歩や旅行、畑仕事、庭の手入れ、大掃除など、体を動かす機会が増えます。久しぶりに動いた分、痛みが出るケースも珍しくありません。
なお、天候や気圧の変化と痛みの関係については、まだ十分に分かっていない部分もあります。「天気のせい」と決めつけず、体の使い方や生活習慣もあわせて見直していくことが大切です。
自宅でできるリハビリ運動5選
ここからは、道具がなくても自宅で始められる運動を5つご紹介します。始める前に、次の3点を確認してください。
- 痛みが強くなる動きは行わず、「気持ちよく伸びる」「ほどよく効く」程度にとどめる
- 息を止めず、ゆっくり呼吸しながら行う
- 入浴後など、体が温まっているときに行うと取り組みやすい
目安は、1日1〜2回、できる範囲からで十分です。まずは2〜3週間、毎日ひとつだけでも続けてみましょう。
※注意:途中で痛みが強くなったり、しびれが出たりした場合は、その場で中止してください。また膝が赤く腫れて熱を持っているときや、脚に強いしびれ・痛みが走るときは運動を中止し、まずは整形外科を受診してください。
1. 太ももの筋肉を目覚めさせる「膝のばし押し」(膝)
膝を支える大切な筋肉である太ももの前側(大腿四頭筋)を、膝に負担をかけずに鍛える運動です。
1. 床や布団に座って、片脚を前に伸ばします。
2. 膝の下に丸めたタオルを置きます。
3. 膝の裏でタオルをゆっくり押しつぶすように、太ももに力を入れます。
4. 5秒ほどそのままキープして、力をゆるめます。
5. 左右5〜10回ずつ繰り返します。
2. 椅子に座ってできる「ゆっくり膝のばし」(膝)
1. 背すじを伸ばして、椅子に浅めに腰かけます。
2. 片方の膝をゆっくり伸ばし、足先を天井に向けます。
3. 膝が伸びきったところで3秒ほど止めて、ゆっくり戻します。
4. 左右10回ずつを目安に行います。
勢いをつけず、ゆっくり動かすのがコツです。痛む場合は、伸ばす範囲を小さくしてください。
3. 腰まわりをやさしくゆるめる「膝かかえストレッチ」(腰)
1. 仰向けに寝て、両膝を立てます。
2. 片方の膝を両手でかかえ、胸のほうへゆっくり引き寄せます。
3. 腰からお尻にかけて伸びを感じる位置で、10〜20秒キープします。
4. 反対側も同じように行い、左右2〜3回ずつ繰り返します。
腰を反らせるとつらい方でも、比較的取り組みやすい動きです。
4. お尻と体幹を支える「ゆっくりブリッジ」(腰・膝)
お尻や背中の筋肉は、腰を安定させる大切な土台です。
1. 仰向けに寝て、両膝を立て、足は腰幅に開きます。
2. 息をはきながら、お尻をゆっくり持ち上げます。
3. 肩から膝までが一直線になる手前で止め、3秒ほどキープします。
4. ゆっくり下ろし、5〜10回を目安に行います。
腰を反らせすぎないよう、お尻を軽く持ち上げる程度で十分です。
5. 日常動作そのものを鍛える「椅子の立ち座り」(腰・膝)
1. 安定した椅子に浅く腰かけ、足を肩幅に開きます。
2. 両手を胸の前で組むか、机に軽く手を添えます。
3. 息をはきながら、ゆっくり立ち上がります。
4. 3秒ほどかけて、ゆっくり座ります。
5. 5回から始めて、慣れてきたら10回を目安にします。
膝がつま先より大きく前に出ないように意識してください。ふらつきが心配な方は、必ず手すりや机につかまって行ってください。
## 様子を見てよい場合と、医療機関へ相談したい場合
運動をしていても、「このまま様子を見てよいのか、受診したほうがよいのか」と迷われる方は多いと思います。
様子を見てよい場合の目安
- 動き始めに痛むが、動いているうちに軽くなる
- 痛みが日によって変わり、全体としては悪化していない
- 休んだり温めたりすると楽になる
こうした場合は、無理のない範囲で運動やセルフケアを続けながら、経過をみることができます。
医療機関への相談をおすすめしたい症状
次のような症状があるときは、早めに医療機関へご相談ください。
- じっとしていても、夜寝ているときにも痛む
- 脚にしびれや力の入りにくさが出てきた
- 排尿や排便の感覚がいつもと違う
- 発熱を伴う、または膝が大きく腫れて熱をもっている
- 転倒や打撲のあとから痛みが続いている
- 膝が急に曲げ伸ばしできなくなった
- 2〜3週間ほどセルフケアを続けても、まったく改善しない
- 原因が思い当たらないのに体重が減ってきた
これらがあっても、すぐに重い病気とは限りません。ただ、運動で対応するよりも、まず原因を確かめることが大切です。
医師の立場からお伝えしたいこと
腰や膝の痛みは、「歳をとったから」とあきらめてしまう方が少なくありません。けれど、痛みの原因は筋肉の使い方や活動量、生活習慣など、見直せるものも多くあります。
大切なのは、痛みを我慢して頑張りすぎないこと、そして「これくらいで受診してもいいのかな」と遠慮しすぎないことです。腰の痛みや膝の痛みを抱えたまま動かないでいると、かえって筋力が落ちてしまうこともあります。痛みと上手につきあいながら、少しずつ体を動かしていく。そのバランスが大切です。
最後に
- 秋の腰・膝の不調は、冷えによる筋肉のこわばり、夏の活動量の変化、秋の活動増加などが重なって起こりやすい
- 自宅では「膝のばし押し」「椅子での膝のばし」「膝かかえ」「ブリッジ」「椅子の立ち座り」が取り組みやすい
- 痛みが強まる運動は中止し、気持ちよい範囲にとどめる
- 夜間や安静時の痛み、しびれ、発熱、腫れ、排尿・排便の変化があるときは早めに相談する
つらさを抱えたまま、季節が過ぎるのを待つ必要はありません。できることから、今日から少しずつ始めてみてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。