胆嚢と胆嚢炎について | 福岡の内科外科院長のブログ

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胆嚢と胆嚢炎の基礎知識

胆嚢は、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためておき、食事、とくに脂っこいものを食べたときに腸へ送り出す「胆汁のタンク」のような臓器です。
胆嚢炎は、この胆嚢の壁に炎症が起きた状態を指し、急に起こる「急性胆嚢炎」と、炎症が慢性的に続く「慢性胆嚢炎」に大きく分けられます。

胆嚢炎の多くは胆石(胆汁の成分が固まって石のようになったもの)が胆嚢や胆嚢の出口に詰まることで起こります。
胆石が胆汁の流れをせき止めると、胆嚢の中の圧力が上がり、細菌も増えやすくなり、胆嚢の壁に炎症が広がっていきます。

 

急性胆嚢炎の主な症状

急性胆嚢炎の症状は、しばしば「突然の右上腹部の強い痛み」で始まります。
典型的には、脂っこい食事のあと数時間以内にみぞおちや右の肋骨の下あたりが重く痛み、その後、持続的で強い痛みに変わっていきます。

代表的な症状は次のようなものです。

  • 右上腹部の痛み(みぞおち〜右肋骨の下)
  • 痛みが背中〜右肩、肩甲骨あたりに響く(放散痛)
  • 発熱(38度以上になることも)
  • 吐き気・嘔吐
  • 胃のむかつき、食欲不振
  • 体を動かすと痛みが増す

診察の場面では、お腹の右上を押さえた状態で深呼吸してもらうと、吸い込む途中で強い痛みのために呼吸が止まってしまう「Murphy徴候」と呼ばれる所見が見られることがあります。

 

慢性胆嚢炎の症状と特徴

慢性胆嚢炎は、主に胆石が長期間胆嚢に存在し、何度も軽い炎症を繰り返すことで胆嚢の壁が厚くなった状態です。
急性胆嚢炎のような激しい痛みは目立たず、症状が乏しい、あるいは「なんとなく調子が悪い」程度に感じられることも少なくありません。

よくある訴えには次のようなものがあります。

  • 油ものを食べたあとにみぞおちや右上腹部の重だるさ
  • 時々起こる右上腹部の鈍い痛み
  • 吐き気やお腹の張り感
  • 検診の超音波検査で初めて胆石や胆嚢の壁の肥厚を指摘される

慢性胆嚢炎自体は、無症状であれば定期的な超音波検査による経過観察で済むこともありますが、症状を繰り返す場合や胆嚢がんとの区別が難しい場合には手術が検討されます。

 

胆嚢炎と胆石症の関係

胆嚢炎の患者さんの多くは胆石も持っており、胆石症と胆嚢炎は切り離せない関係にあります。
胆石が胆嚢の出口(胆嚢管)や胆管に詰まると、胆汁の流れが急に止まり、胆嚢内圧が上昇して急性胆嚢炎を起こします。

胆石症自体は無症状で終わる方も多いですが、以下のような症状があれば、胆嚢炎・胆管炎へ移行している可能性もあるため注意が必要です。

  • 右上腹部や背中の強い痛みが数時間続く
  • 発熱や悪寒を伴う
  • 黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)

特に「発熱+右上腹部痛+黄疸」が揃うと胆管炎が疑われ、早急な治療が必要になります。これは急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインでも重視されているポイントです。

 

どんな人が胆嚢炎になりやすいか

胆石・胆嚢炎のリスクには、生活習慣や体質が関係します。
よく挙げられる要因には次のようなものがあります。

  • 脂っこい食事が多い
  • 肥満
  • 急激な減量や無理なダイエット
  • 女性(特に妊娠・出産を経験した年代)
  • 高齢
  • 糖尿病など代謝性疾患

ただし、これらの要因がなくても胆石ができることはあり、健康診断の腹部超音波検査で偶然見つかるケースも少なくありません。

 

胆嚢炎が疑われるときの検査

診察では、まず問診と身体診察で痛みの場所・性状・発症状況を確認し、次に血液検査や画像検査で診断を進めます。
主な検査は次の通りです。

  • 血液検査
    • 白血球数やCRP(炎症反応)の上昇
    • 肝機能・胆道系酵素(AST、ALT、ALP、γ-GTP)の変化
    • 黄疸の有無(ビリルビン値の上昇)
  • 腹部超音波検査(エコー)
    • 胆石の有無、胆嚢の腫れ、壁の厚さ、胆汁の状態を評価
  • CT検査やMRI(必要に応じて)
    • 炎症の広がりや合併症(穿孔、膿瘍など)の評価
  • ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:必要な場合)
    • 胆管内の石の有無を確認し、その場で除去することも可能

エコー検査は身体への負担が少なく、外来でも実施しやすいため、胆嚢炎が疑われるときの第一選択となることが多い検査です。

 

胆嚢炎の治療方針(全体像)

胆嚢炎の治療は、「急性期の炎症を抑える治療」と「原因となる胆嚢・胆石への根本治療」に分けて考えます。
急性胆嚢炎では、まず入院のうえで抗菌薬と点滴、絶食などの保存的治療を行い、状態やリスクに応じて胆嚢摘出術(胆嚢を取る手術)を検討します。

慢性胆嚢炎や胆石症では、症状の有無、発作の頻度、年齢、他の病気の有無などを考慮しながら、手術を行うか経過観察とするかを判断します。

 

急性胆嚢炎の急性期治療

急性胆嚢炎と診断された場合、多くは入院治療が必要になります。
主な治療内容は以下の通りです。

  • 絶食と点滴による全身管理
  • 抗菌薬(抗生物質)による感染コントロール
  • 鎮痛薬での痛みの緩和
  • 必要に応じて胆嚢ドレナージ(胆嚢にたまった胆汁や膿を外に出す処置)

全身状態が安定していれば、早期(症状出現から72時間以内など)に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うことが推奨されるケースが多いとされています。
一方、持病が多い高齢の方や手術リスクが高い場合には、まずドレナージと抗菌薬で炎症を抑え、その後状態を見ながら手術の要否を検討します。

 

胆嚢摘出術とはどんな手術か

胆嚢摘出術は、胆嚢を丸ごと取り除く手術です。
近年は腹腔鏡手術が主流で、数か所の小さな切開からカメラと器具を挿入し、モニターを見ながら胆嚢を摘出します。

腹腔鏡下胆嚢摘出術の特徴としては次のような点が挙げられます。

  • 傷が小さく、美容的な面で有利
  • 痛みが少なく、回復が比較的早い
  • 入院期間が短縮されやすい

一方、炎症が強く癒着が高度な場合や、過去の開腹手術歴などの条件によっては、安全性を優先して開腹手術に切り替えることもあります。

胆嚢を摘出しても、胆汁は肝臓で作られ続け、胆管を通って直接腸に流れていくため、多くの方は日常生活に支障なく過ごせます。

 

手術を行わない・行えない場合の治療

すべての胆嚢炎患者さんが手術を受けるわけではありません。
高齢や重い持病などで手術のリスクが高い場合や、無症状・軽症で経過する慢性胆嚢炎では、次のような対応が取られます。

  • 食事内容の見直し(脂肪分を控えめに)
  • 発作時には絶食と点滴、抗菌薬、鎮痛薬による保存的治療
  • 定期的な超音波検査での経過観察
  • 必要に応じて胆嚢や胆管のドレナージ処置

胆石を薬で溶かすウルソデオキシコール酸などの薬剤もありますが、適応が限られており、慢性胆嚢炎への効果は限定的とされています。

 

胆嚢炎を放置した場合の危険性

胆嚢炎を放置すると、胆嚢の壁が壊死したり穴が開いたりして腹膜炎を起こすなど、重大な合併症につながることがあります。
また、炎症が胆管や肝臓に広がると、胆管炎や肝膿瘍、敗血症など命に関わる状態に進行するおそれもあります。

次のような症状がある場合には、早めの受診が重要です。

  • 右上腹部の激しい痛みが数時間以上続く
  • 熱っぽさや悪寒、38度以上の発熱
  • 吐き気・嘔吐が続く
  • 皮膚や白目が黄色くなってきた(黄疸)
  • 痛みとともに意識がぼんやりする、脈が速い

これらは救急での対応が必要になるサインであり、「様子を見よう」と我慢せず医療機関を受診すべき状況です。

 

日常生活でできる予防・再発予防

胆嚢炎を完全に防ぐ方法はありませんが、胆石のリスクを下げることは、結果として胆嚢炎の予防にもつながります。
日常生活で心がけたいポイントは次の通りです。

  • バランスのよい食事を心がける
  • 高脂肪・高カロリーな食事を控えめにする
  • 食物繊維や野菜を意識して摂る
  • 急激なダイエットを避け、適正体重の維持を目指す
  • 適度な運動を習慣にする
  • 糖尿病や脂質異常症があれば、主治医と相談しながらコントロールを図る

既に胆石があると診断されている方は、腹部の痛みや消化器症状の変化に注意し、定期的なフォローアップを受けることが大切です。

 

「胆嚢炎かな?」と思ったときの受診の目安

「胆嚢炎とは 症状」というキーワードで検索される方は、おそらく以下のような状況で不安を感じていることが多いと考えられます。

  • 右上腹部の痛みがときどき出る
  • 背中〜右肩にかけて痛みが広がる
  • 油ものを食べた後に気持ち悪くなる
  • 過去に胆石と言われたことがある

こうした場合、軽症であっても一度は消化器内科・消化器外科など、腹部超音波検査を行える医療機関で診察を受けることをおすすめします。

一方で、以下のような「救急のサイン」がある場合は、救急外来も含めて早急な受診が必要です。

  • 強い右上腹部痛が続き、冷や汗が出る
  • 高熱や悪寒を伴う
  • 吐き気や嘔吐で水分も取れない
  • 黄疸が出ている

 

また、個別の治療方針は患者さんの状態によって大きく異なるため、「必ずこうなる」「この治療がベスト」と断定する表現を避け、あくまで標準的な考え方を紹介するにとどめています。

胆嚢炎は、初期には「ちょっとお腹が痛い」「油ものを食べたら気持ち悪くなった」程度の違和感から始まることもありますが、放置すると命に関わる合併症に進む可能性もある疾患です。
一方で、適切なタイミングで診断・治療を受ければ、現在の医療では多くの方が日常生活へ復帰できる状態にあります。

「胆嚢炎とは 症状」と検索してこの記事にたどり着いた方は、もしかすると今まさにお腹の不調を抱えておられるかもしれません。
症状の程度が軽くても、繰り返す右上腹部痛や油もの後の違和感があれば、早めに医療機関で相談いただくことをおすすめします。